ビルのオーナーにとってエレベーターはちょっと厄介な存在だ。台数を増やすとテナント面積が狭くなり、コストがかさむ。台数やカゴサイズを削りすぎると「なかなか乗れない!」とユーザーからクレームがくる。そんなジレンマを解決したのが、テレビCMでもおなじみの「エレ・ナビ」だ。
セキュリティゲートなどの入退室管理システムと連動させることでユーザーをスムーズに誘導し、エレベーター渋滞をみごと解決に導いたこのシステムは、エレベーターに新たな付加価値を与え、ビルオーナーに好評を博している。
INDEX
- 営業マンに聞く「少ないエレベーター台数で待ち時間を減らすには?」
- ビルにエレベーターが設置されるタイミングはいつ?
- エレベーター営業担当者のジレンマ
- 「入退室システムとエレベーターを組み合わせる」という新発想
- エレベーター界のニューヒロイン?
営業マンに聞く
「少ないエレベーター台数で待ち時間を減らすには?」
エレベーターの待ち時間はユーザーにもビルオーナーにも悩ましい問題。
全国20~60代の男女1,365名に「エレベーターの待ち時間にイライラするか」とたずねたところ、「はい」と答えた人の割合は32.1%。
年収別にみてみると、「イライラする」と答えた人は年収500~700万円の人では36.8%、700~1000万円では44.9%、1000万円以上では56.8%と、年収が多いほどイラつく人の割合が高くなることがわかった。
ユーザーにとって、さらにはビルオーナーにとっても、エレベーターの待ち時間は悩ましい問題のようだ。今回はその問題に立ち向かうエレベーターの営業マンに、今エレベーター設置の現場で何が起こっているのか、最新技術動向も合わせて取材してみた。
高層ビルに欠かせない“縦の交通機関”とも呼ばれるエレベーター。「それなのに、ビルのオーナー様からは『できるだけ台数を減らして、コンパクトにしたい』とちょっとした厄介者扱い(笑)。自分も含めたユーザーからは、来るのが遅いとイライラされることはあっても、褒められることはまずありません。なかなか悩ましい商材なんです」と、営業担当者は言う。
そんなエレベーターが、あるシステムとのコラボによって厄介者からちょっとした人気者になっている。その理由について、三菱電機ビル事業部でエレベーターや入退室管理システムなどを担当する営業・玉谷憲史さんにお話を聞いた。
ビルにエレベーターが設置される
タイミングはいつ?
高層ビルのオーナーになったつもりで考えてみてほしい。建築中のビルにエレベーターが取り付けられるのは、工期のいつ頃だろうか?
玉谷:答えは、ビルの骨組みができたらすぐ。最近は30階建て、40階建ての高層ビルでも約1年半という短期間で完成させるのが当たり前になっています。そのスピードに対応するため、各階毎の内装や設備工事を行う大人数の工事関係者を運ぶのにエレベーターを使うのです。
エレベーター営業担当者のジレンマ
骨組みができた後でエレベーターを増設したり、サイズを変更したりすることはできない。そのため建設計画を立てる際にも、エレベーターの仕様はかなり早い段階で確定しなければならない。
玉谷:しかし、エレベーターは必要でこそあれ、直接的には利益を生み出さない設備。ですからオーナー様としてはエレベーターの台数や面積、それにコストもギリギリまで抑えて、そのぶんテナント面積を増やし、収益を上げたいわけです。その一方で、エレベーター待ちが長かったり、満員で乗れなかったりすると入居者や来客者といったユーザーからの不評につながるため、テナント契約に影響しかねません。オーナー様はそんな悩ましい選択を迫られるのです。
葛藤を抱えるのは営業担当者も同じこと。ユーザーのニーズを満たしつつ、オーナーの希望をかなえるエレベーターの“最適解”を探っていくことになる。
「入退室システムとエレベーターを
組み合わせる」という新発想
致し方のないこの問題を解決に導いたのが、セキュリティーゲートと連動してエレベーターの行先を予報するシステム「エレ・ナビ」だった。
セキュリティー連動・エレベーター行先予報システム「エレ・ナビ」
「エレ・ナビ」は、IDカードに登録された情報に基づき、利用者を行き先階ごとにまとめることで待ち時間と乗車時間を削減するという画期的なシステム。これを導入することで、エレベーターの台数を増やしたり、カゴサイズを大きくしたりすることなく、輸送効率を向上させることができる。
玉谷:セキュリティーゲートやIDカードは入退室管理システムの一部です。それをエレベーターというまったく別の領域の設備と連携させることで人の流れを整理し、エレベーター渋滞を解消するというのは、私たち営業担当者にとっても目から鱗の発想でした。
最先端のシステムであるという点もオーナーのマインドに響くようだ。
玉谷:私たちが家を選ぶときに、ドアフォンや空調機が最新式だったらうれしいのと同じですよね。それに、オーナー様やデペロッパー様にとっては、テナント入居を検討している方に対して「エレ・ナビ」があるためにエレベーター渋滞が起きにくい、と説明できる点もメリットです。
エレベーター界のニューヒロイン?
エレベーターを厄介者から人気者へと転じた立役者のひとつが、「エレ・ナビ」のテレビCMかもしれない。
玉谷:エレベーターの導入をご検討くださっているお客様から「CMを見たよ」などと「エレ・ナビ」を話題にしていただけるのが新鮮でした。すでにエレベーターを使っていただいているお客様から「エレ・ナビを導入すると、どれくらい効率がよくなるの?」とお問い合わせが入ることもあります。
これまでエレベーターの商談のなかでは、コストと工期の話題が大きなウエイトを占めていて、それ以外の点で他社と差別化するのが難しく、歯がゆい思いをしていたんです。それが今では「エレ・ナビを導入するとこんなメリットがあります」とバシッとアピールできる。それがすごくうれしいですね。
引用:ニュースサイト『しらべぇ』