製造業ではICT化やAI導入などによる省力化が進んでいるが、大規模な投資には限界がある。そこで注目されるのが既存の設備を活用した省力化だ。
ソフトウェア「ミランダVR」は、多くの工場にすでに導入されている監視カメラとシーケンサを連携させ、映像とデータを同期して記録・再生できるようにする。これにより省力化だけでなくトラブル発生時の原因究明、品質管理や生産効率アップなど、多くの成果をあげることができる。「ミランダVR」は一般的なパソコンでの操作が可能で、多くの機器や監視カメラに対応しており、環境を選ばず、使い勝手がいい点も高評価を得ている。
INDEX
- 製造現場の“リアル”がひと目で見える!「ミランダVR」の実力とは?
- 人手不足を解消する製造現場の“次の一手”
- 2つのデータを“同期”して見える化
- 状況がひと目でわかる!「ミランダVR」の実力
- さまざまな環境に対応できるのも魅力
トータルソリューション事業所 営業部
林孝士さん
製造現場の“リアル”がひと目で見える!
「ミランダVR」の実力とは?
人手不足を解消する製造現場の“次の一手”
景気がゆるやかに回復するにつれて、雇用情勢は改善傾向にある。内閣府の発表によると、
製造業では4割以上の企業で人手が不足している(グラフ1)。
とはいえこのグラフを見ると、製造業の人手不足はもっとも深刻というほどではないようだ。その理由のひとつに考えられるのが「省力化投資」。いうまでもなく、製造業は機械化を主とする省力化投資と相性のよい分野だ。すでに省力化投資を行った(一部、今後行う考えの企業を含む)企業の割合は、ほかの業種と比べてとくに高い(グラフ2)。
しかし、ロボットやAIの導入をはじめとする省力化には限界もあり、大規模になればそれだけコストがふくらむ。そこで期待されるのが、「既存の設備を活用した省力化」だ。いくつかの生産現場では、すでにこうした取り組みを実行中。人手不足解消ばかりか、品質管理や生産効率アップなど、期待以上の成果を上げつつあるという。
今回は、このような省力化を実現するソフトウェア「Miranda-VR(以下、ミランダVR )」について、開発元である三菱電機コントロールソフトウェア株式会社(MCR)に取材した。
2つのデータを“同期”して見える化
工場には実際にモノづくりをする機械のほかに、それぞれの機械をプログラムどおりに制御し、動かすための「シーケンサ(※1)」という機械がある。モノづくりの機械がサッカーのプレイヤーだとしたら、シーケンサは監督の指示通りにプレイヤーを動かすチームの司令塔といったところだ。
林:機械はいつも正確に動くと思われがちですが、実はそうでもありません。工場では多くの機械が同時に稼働し、製造プロセスも非常に複雑ですから、小さなトラブルは日常茶飯事です。
と、MCRの林孝士さんは話す。
トラブルが発生するとアラームが出る。それを受けて担当者はまず応急処置を行う。その後、過去にさかのぼってトラブル発生の瞬間のデータを探し、原因を解明するという作業に多大な時間と手間がかかっていた。
この作業を一気に効率化したのが、ソフトウェア「Miranda-VR 」だ。
林:工場では、モノが動くとスイッチやセンサーが反応して信号を発します。この信号をキャッチして情報処理し、次の製造プロセスに進めるのがシーケンサの役割です。『ミランダ』とはシーケンサのデータ収集ソフトウェアで、『ミランダVR 』は、それと同時に工場内に設置された監視カメラ(=ネットワークカメラ)からも映像データを引っ張ってくる。そして、2種類のデータ連携して表示することにより、トラブル発生時の状況を、映像とシーケンサデータで同時に確認できるため、スムーズに原因究明ができるのです。
※1 シーケンサは三菱電機の呼称。一般には「PLC/プログラマブル・ロジック・コントローラー」などと呼ばれる。
状況がひと目でわかる!
「ミランダVR」の実力
シーケンサと監視カメラを連携させる。その意義が体感できるようにと、林さんは会議室に「ミランダVR 」を用意してくれた。
映像の解像度はかなり高く、モニターには会議室の様子がはっきり映し出されている。グラフもシンプルで見やすい。私たちが入室した時間をダブルクリックしたところ、すぐにそのときの様子が映し出された。
林:工場には以前から監視カメラが入っていますし、データ収集をするための装置もありました。単独で働いていた両者のデータを重ね合わせて見せるのが『ミランダVR』の特長です。
ちなみに「ミランダ」という名は、天王星の第5衛星ミランダの名をとって開発メンバーがつけたもの。天王星の衛星の名はすべて戯曲の登場人物からとられていて、ミランダはシェイクスピアの戯曲『テンペスト』の主人公の娘。星と文学作品にちなむとは、かなりロマンティックな名前だ。
林:星の名前は多くの製品に使われていて、いい名前を探すのに苦労したようです。ミランダという響きがきれいですよね。一応、『Manufacturing Information Recording AND Analysis/製造情報記録分析』の頭文字でもありまして、硬い意味も持っているのですが(笑)
さまざまな環境に対応できるのも魅力
「ミランダ」シリーズが発売されたのは2006年。その第4弾となる『ミランダVR 』がデビューしたのは2012年だが、2017年度には出荷パッケージ数は累計1000本を突破し、過去最高売上を記録した。すでに製鉄、自動車、電子機器、製紙、衣料、食品など、幅広い業種の製造現場で「ミランダVR 」が稼働している。
林:人気の理由のひとつは汎用性の高さにあると考えています。『ミランダ』シリーズをはじめとする弊社の製品はマイクロソフト社の標準的なOSに対応しているため、産業用のコンピューターではなく、一般的なパソコンで運用できます。また、ほとんどの機種の監視カメラやPLCと接続できます。
製造業には海外に生産拠点をもつ企業も多いが、昨今の人手不足のために技術者や熟練工を海外に派遣すると、国内工場が立ち行かなくなるという問題に悩まされていた。しかし「ミランダVR」を活用すれば、海外工場のデータを日本で解析できるため、海外に派遣する人数や期間を削減できる。
林:映像だけ、データだけ見ていてもわからないことはたくさんあります。映像とデータ相互に重なり合うことでシナジーが生まれ、新たなソリューションとして提案できるのです。