各事業所で、生きもの調査から
始まる自然との共生を推進

外来種の駆除などを実施。在来種の導入や情報発信も

東部研究所地区

東部研究所地区では、2014年度に生きもの調査を実施し、その後は年に1回、主に外来植物の状況を把握するための追跡調査を行っています。
これらの調査結果をもとに、地元・鎌倉市の豊かな自然と調和する緑地づくりを進めてきました。2017年には、正門近くの敷地に水辺を含む緑地を造成。地域在来の植物を植栽するほか、在来メダカの飼育をはじめました。この緑地は、従業員の憩いの場や教育のツールとしても活用しています。また、外来種の駆除・防除にも継続的に取り組んでいます。
これらに加え、従業員が植物と触れ合う機会をつくるとともに、ストレス軽減などにもつなげる目的で、オフィス内に置く観葉植物の配布も進めています。

事業所所在地

〒247-8501 神奈川県鎌倉市大船5-1-1

主な研究内容

情報、マルチメディア、光電波・通信技術分野の研究開発

主な取組テーマ
  • 外来植物の状況調査と駆除・防除の実施 [A-1-(2)]
  • 在来植物の苗の育成と導入 [B-4-(1)] [B-4-(3)] [B-4-(4)]
  • グループの他の事業所や地域住民を対象とする情報発信 [C-7-(1)]
  • 従業員の憩いの場となる緑地の造成 [B-4-(1)] [C-6-(1)]
  • オフィスへの植物の導入 [C-6-(1)]

[ ] 内は取組テーマの分類を示します。詳細については以下を参照ください。

東部研究所地区の活動の方向性

取組の特徴
  • 構内植生に影響を及ぼす侵略的な外来植物を特定し、駆除・防除を実施
  • 地域在来種を導入するなど、生物多様性に配慮した緑地を造成。従業員の憩いの場や子供向けの環境教育の舞台として活用
  • 従業員に観葉植物を配布するなど、職場において緑をストレス軽減に活用

東部研究所地区の活動テーマ

生物多様性に配慮した緑地づくりと外来種対策を継続的に実施

東部研究所地区の担当者
業務部 設備・環境管理グループ

東部研究所地区では、2014年度に実施した生きもの調査の結果をもとに、調査会社の方や、地域の有識者にもご意見を伺って活動の内容を定めました。現在は主に、正門近くの敷地に、生物多様性に配慮し造成した緑地の管理・活用と、外来種の駆除・防除に取り組んでいます。

この緑地には地域在来の樹木などを植栽し、現在は地域の方から苗をいただいたリンドウなども育成しています。水辺も設けており、在来の鳥類や昆虫類などが休憩や採餌、産卵に利用できる場所となっています。また水場では在来のメダカを育てています。

これらに加えて、2022年度に敷地内で確認された希少種・ハマカキランの保全にも取り組んでいます。

環境省レッドリスト2020にて「絶滅危惧II類(VU)」に分類

事業所の正門付近に緑地を造成

主な活動内容

生物多様性に配慮した緑地を造成

2017年4月に、正門近くの敷地に生物多様性に配慮した緑地を造成。トンボなどの利用を想定して水場を設け、周囲に地域在来種を中心とした樹木を植栽しました。四季折々に花が楽しめる樹種を植え、緑地が見える場所にベンチを置くなど、従業員の憩いの場としての機能も持たせています。2023年6月には、地域の方から提供していただいたリンドウの株を植栽しました。当日はあわせて地域の環境保護に取り組む方による講演を実施し、活動へのアドバイスなどもいただきました。

植栽先には生物多様性緑地内の日当たりのいい圃場を選びましたが、近年は酷暑が続いていることなどを踏まえて、日光を遮る縁台や、散水タイマーを設置する予定です。また、生物多様性緑地内の植栽の陰になる場所と、離れた別の緑地の2か所に、それぞれ数株ずつを移動させ、環境を変えて育てることで病気などのリスクに備えています。

トンボなどのため水場を設置

市民の方から譲り受けたリンドウを植栽

市民の方から譲り受けたリンドウを植栽

この緑地について改めて従業員に周知し、興味を持ってもらえるよう働きかけています。

「鎌倉メダカ」の保全に協力

鎌倉市内を流れる滑川にはかつて、地域固有の遺伝的特徴を持ったメダカの一群が生息していました。これらのメダカは野生では絶滅してしまいましたが、市民の方が採取していた一部の個体が生き残り、その子孫が「鎌倉メダカ」として市庁舎などでも飼育されています。

鎌倉メダカ鎌倉メダカ

東部研究所地区は、鎌倉市民の方からこのメダカを譲り受け、緑地内の水場で育てています。2019年に13匹からスタートしましたが、その後は毎年、繁殖が確認できており、現在では100匹以上が生息しています。閉鎖環境である企業ビオトープの強みを活かし、今後も地域在来種の保全に貢献していきます。

希少種「ハマカキラン」の保全地を設定

ハマカキランは環境省のレッドリストで絶滅危惧II類(VU)に分類されている希少なランの仲間です。東部研究所地区では、2022年度に、地区内のクロマツの近くで本種が繁茂していることを確認しました。

ハマカキランはクロマツの根に生息する菌と共生しているといわれ、移植することが難しい種です。このため場所は動かさず、囲いや旗などの目印をつけて、誤って除草などを行わないよう管理していく方針です。周辺に植栽されているクロマツは樹齢が高いことから、樹木の様子にも注意して経過を観察していきます。

希少種「ハマカキラン」

侵略的な外来植物を特定し、駆除・防除を実施

外来植物に関する調査結果をもとに、植生の多様性を阻害する侵略的な外来植物を特定し、駆除・防除に取り組んでいます。活動に当たっては、毎年、繁茂の状況を調査・リスト化し、効果を検証しています。

植物は、一度は数を減らせたとしても、野鳥や風によって再び種が運ばれてくることも多く、根絶することは困難です。今後も長期的に活動を続け、コストや手間を抑えた防除方法などを模索しながら、過剰に繁茂することがないよう管理していきます。

侵略的な外来植物を特定

侵略的な外来植物を特定

駆除・防除を行う侵略的外来種の例

コマツヨイグサコマツヨイグサ

オオアレチノギクオオアレチノギク

ヒメムカシヨモギヒメムカシヨモギ

セイタカアワダチソウセイタカアワダチソウ

シンテッポウユリシンテッポウユリ

メリケンカルカヤメリケンカルカヤ

駆除・防除のサイクル

駆除・防除のサイクル

緑地を地域交流にも活用

東部研究所地区には、南北に伸びる長い桜並木が存在します。地区に来訪するお客様はもちろん、地区内で行われるイベント「三菱電機春まつり」などの機会には近隣住民の方々にも花見を楽しんでいただくなど、ステークホルダーとの交流に役立てています。近年は新型コロナウイルス感染拡大に配慮してイベントの開催を見合わせていましたが、2024年以降、状況を見て再開する予定です。その際、当社の取組みに関する展示や、生きもの観察などの実施も検討していきます。

また、およそ160本の桜の中には樹齢が50年を超えているものもあることから、事業所南端に専用の圃場を用意し、新たな苗木を育成するとともに、徐々に植え替えを進めています。

こうした活動を続ける中で、地域で生物多様性保全に取り組まれる方から、今後は鎌倉産のサクラの品種である「ミクルマガエシ」なども導入してはどうかとのご意見もいただきました。今後は地域ゆかりの品種の植栽なども検討していきます。

地区構内の桜並木地区構内の桜並木

桜の苗木を育てる圃場桜の苗木を育てる圃場

近隣地域の小学生を招いて見学を実施

2021年11月5日、近隣の小学校の児童約80名を招き、生物多様性緑地を見学してもらいました。当社の生物多様性保全に関する取組みを知ってもらうとともに、生きものや環境に興味を持つきっかけとしてもらうねらいです。

近隣地域の小学生を招いて見学を実施

近隣地域の小学生を招いて見学を実施

従業員とその家族を対象としたイベントを実施

身近な生きものに興味を持ってもらおうと、従業員とその家族を対象とする「生きものみっけ」を毎年実施しています。

登録された生きものの名前と写真はアプリ画面から閲覧できる登録された生きものの名前と写真はアプリ画面から閲覧できる

「生きものみっけ」は、参加者に家の周りや外出先で生きものを探してもらい、さらに見つけた生きものの特徴などをスマートフォンアプリで調べてもらうことで、生きものに親しんでもらう取組みです。見つけた生きものの写真を撮り、アプリに登録すると、AIが名前と特徴を教えてくれます。

2023年は7月から8月、9月から11月の2回にわたって実施予定で、特に多くの生きものを見つけた参加者を表彰する催しも予定しています。

オフィス・グリーン・プロジェクトを推進

従業員が緑に触れ、興味と愛着を持つきっかけづくりを兼ねて、植物の持つストレス軽減効果などの活用に取り組んでいます。

身近に植物を置くことは、心身によい効果をもたらすと言われています。ふとした瞬間に目に入るだけでも、意識を切り替えてリラックスでき、集中力の向上などにつながると期待できます。

ひとりひとりに観葉植物を配布ひとりひとりに観葉植物を配布

ひとりひとりに観葉植物を配布

2017年度からは、従業員一人ひとりに観葉植物を配布し、デスクで育ててもらう「オフィス・グリーン・プロジェクト」を推進。2023年3月までの累計で、808株を配布しました。ただし、多くの従業員にいきわたったことと、フリーアドレス導入などの環境変化から、2024年以降は活動規模の縮小が見込まれます。こうした状況も踏まえ、次なる活動の方向性を検討していきます。

建物新設時にバイオフィリックデザインを導入

建物新設時にバイオフィリックデザインを導入

建物新設時にバイオフィリックデザインを導入

地区内にあるZEB関連の技術実証棟「SUSTIE(サスティエ)」は、建設時に省エネに関する様々な技術を盛り込んだオフィスビルです。従業員が実際に職場として利用しながら技術の実証を進めるとともに、快適性の検証と向上にも取り組んでいます。壁面緑化や植栽パーティションの設置など、自然とのつながりを考慮したバイオフィリックデザインを取り入れています。

また、建設時には、付近にあったケヤキの木を地区内の別の場所に移植。周辺の環境にも配慮しています。

ZEB:快適な室内環境を保ちながら、建物の高断熱化や設備の高効率化による「省エネ」と太陽光発電等の「創エネ」により、年間のエネルギー収支をプラスマイナスゼロ(もしくは創エネ量>消費量)とする建築物のこと。

https://www.mitsubishielectric.co.jp/
zeb/about/

マネジメントの声

生物多様性保全に取り組んできたなかで、2つの点が重要であることを再認識しています。1つは地域との人や緑地を介したつながり、もう1つはバランスの取れた活動です。

例えば、当地区では、植栽として地域にゆかりある種を優先的に導入してきました。あわせて、当地区の創業時から存在し、地区のシンボルとなっている桜並木も大切に保全しています。これらの情報を発信してきたことで、「今後、老木を植え替える際に、鎌倉産のサクラの品種を植えてはどうか」というアドバイスをいただくことができました。リンドウの植栽に当たっても地域の方から苗をいただいており、こうしたつながりが活動の継続には必須だと考えています。

一方で、長く活動を続けていくためには、手間やコストを抑える方法も検討する必要があります。また、すでに安定している生態系が、人の干渉でかえって崩れてしまうことも避けねばなりません。生物多様性緑地の水辺では現在、鎌倉メダカがすっかり定着し、トンボ類の姿も増えてきました。これは地域の生態系にある程度マッチした環境になったからだと考えています。手を加えるべき点とそうでない点のバランスに配慮しながら、今後の方向性を検討していきます。そのために、生物多様性緑地の観察頻度を増やすなど、活動の現在地をもう一度見直しているところです。

業務部長 小玉 亮
設備・環境管理グループマネージャー 塚本 祥希

東部研究所地区の活動の方向性

以下は三菱電機グループの各事業所による生物多様性保全活動の方向性を示した一覧表です。
東部研究所地区の活動がどの方向性に当てはまるのかを、色で示しています。

外来種の駆除などを実施。在来種の導入や情報発信も

活動の方向性
  • A 生きものへの
    負の影響を低減する
  • 1.「開発圧※1」「外来種圧※2」の抑制  ※3
  • (1)生きものに対する影響把握
  • (2)外来種管理
  • 2.「希少種」「固有種」への注意喚起と保全
  • (1)構内生物リストの公開
  • (2)希少種、固有種の保全
  • (3)周辺の保全課題への協力
  • 3.農薬影響の管理や、緑地・天然資源の保全
  • (1)生きもの殺傷の抑制
  • (2)水や土壌等の天然資源への配慮
  • B 生きものとの
    より豊かな共生を目指す
  • 4.機能緑地の設定
  • (1)緑地管理の体制
  • (2)飛翔性生物の利用地の整備
  • (3)「みどり+生きもの」優先地の整備
  • (4)事業所周辺への「みどりの連続性」の提供
  • (5)事務所周辺の生物多様性保全活動への貢献
  • 5.緑地の単純化、特定化など、産業的志向からの
    脱却
  • (1)植生の多様化・多層化
  • (2)植物などの特性に合致した緑地管理
  • (3)地域への貢献・配慮
  • C 働く中で社員が
    自然との関係を取り戻す
  • 6.生態系サービスの職場での積極的享受
    (休憩所、フロア)
  • (1)文化的サービスの享受・場づくり
  • (2)供給サービスの享受・場づくり
  • 7.「無関心」「無関係」状態から、
    「全員が関係ある」状態へ
  • (1)理解と行動促進の教育
  • (2)職場・業務での関係創出

※1開発圧:棲みかの破壊。事業拠点を新たに建設することや、天然資源の採取などのために開発が行われること(サプライチェーンでの開発を含めて)、などが該当。操業による水の使用が周辺地域や水源、ひいては生きものの生息環境に影響を与える場合などもこれに含まれると考えられる。

※2外来種圧:その地域にもともと存在しない生きものが、外構や建物の脇の緑地、生垣などをつくる際に地域の外から樹木や草木を導入することがある。何気なく行われる生きものの移動が、地域固有の種の生息を脅かしたり、遺伝的な汚染の原因となることがある。

※3外来生物法の「特定外来生物の飼育、栽培、保管又は運搬」に関する規定に則り活動を実施。

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