特別講座 三田市の自然

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三田製作所が生きもの調査を開始してから2年弱。その間に、実は製作所内にいた「ちょっと生きものに詳しい」社員たちが、少しずつ活動に参加・協力するようになってきています。その中の一人、地元の有識者とともに生態系の保全にかかわる活動を行い、専門的なレベルで意見を交わせる「アマチュア・ナチュラリスト」が、三田市の自然の特徴をご紹介します。

<講師>

地元・三田市をとりまく自然の特徴を
ちょっとだけご紹介します

三菱電機株式会社 三田製作所

カーマルチメディア製造第二部 工作課 工作係 専任

吉田 滋弘

兵庫県有馬富士公園 自然の学校

人博連携グループ 鳴く虫研究会 きんひばり

日本生態系協会 ビオトープ管理士(計画管理2級)

上級鳴く虫インストラクター 北摂里山検定特級

ナチュラルウォッチャーリーダー(兵庫県)

Project Wild(Educator), Project Learning Tree(Facilitator), Project Wet(Educator), IPNET-Japan Interplitor


POINT1  市面積の六割超!どっちを見てもそこには「森」

ここ三田市は、四方を山で囲まれた土地柄です。ほとんどは生活に利用する目的で人が植えた「二次林」だったと考えられていて、実際、炭の材料となるクヌギなどが多く見られます。鉄道沿いの地域を中心に市街地も広がっていますが、三田市の調査によれば、市面積の実に65%を森林が占めているそうです。これに加えて、溜め池や湿地などの水辺に恵まれています。これらの環境があいまって、一部では希少な生きものも見られます。

三田市で見られる希少な生きものの例

POINT2  生きものの通り道!南北を貫く「回廊(コリドール)」

もう一つ、忘れてはいけない特徴は、「氷上回廊」が近いことです。兵庫県から中国地方にかけては、ほとんどの土地が山(中央分水嶺)によって南北に分断され、北側と南側で気候が異なります。このため、生息する生きものにも南北で差が生じてくるのが普通です。しかし、三田市の北西にある丹波市氷上町付近を中心に、この中央分水嶺が標高95メートルにまで低くなる場所が存在します。これが氷上回廊です。この回廊と、付近を流れる竹田川や武庫川などの川が、生きものの通り道として機能しています。これが、三田市を含む回廊周辺部の生態系に大きな影響を与えていると考えられています。

生きものの通り道!南北を貫く「回廊(コリドール)」
武庫川(写真左下)は三田製作所のすぐそばを通過しています
武庫川(写真左下)は三田製作所のすぐそばを通過しています

いるはずのない鳥、いったいどこから?~生きものの「移動」~

イソヒヨドリ
イソヒヨドリ

生きもの調査で確認された生きものの中でも、メンバーの頭を悩ませたのが「イソヒヨドリ」でした。というのもこの鳥、「イソ」の名の通り、本来は海岸性の鳥なのです。ただ、近年は、主食の昆虫が少なくなる冬を中心に、内陸の川やダム湖の近くでも目撃されることがあるようです。

製作所に飛来するまでの道筋は大きく2つ考えられ、一つは若狭湾から氷上回廊を伝って南下するルート。もう一つは、大阪湾から武庫川を北上するルートです。エサを探すうちに長距離を移動したか、縄張り意識が強い鳥ですから、別の個体との争いに敗れて移動したのかもしれません。

こうした移動は、鳥や虫など、飛べる生きものではしばしばあることです。今後も類似の例があったときは、地理的条件や季節風などの影響を総合的に考えていく必要があるでしょう。ただしイソヒヨドリの場合は、近年では都市部での営巣例もあるとのこと。ひょっとしたら、近くに棲みついているのかもしれませんね。


「三田市の自然」と「当製作所の活動のこれから」をテーマとする
有識者ダイアログを開催!

「三田市の自然」と「当製作所の活動のこれから」をテーマとする有識者ダイアログを開催!
実施日
参加者

2015年12月16日

兵庫県立人と自然の博物館

橋本 佳延様

鈴木 武様

大谷 雅人様

三菱電機(株) 三田製作所

押尾 和彦

吉田 滋弘

安藤 侑子

三田製作所の環境・施設管理課メンバーは2015年12月、地元の「兵庫県立人と自然の博物館」にて有識者ダイアログを開催しました。本ダイアログでは、かねてから三田市内でナチュラリストとして活動してきた社員が、博物館所属の研究者の方々の知見と、三田製作所の活動に当たっての課題や関心とをつなぐ役割を果たしました。

当日は、調査結果などから見える製作所内の自然の特長や、今後取り組んでいくべきことなどについて意見を交わしました。その中で、「地域本来の植物を植える(地域性緑化)取組として、他の在来植物と共存しやすいチガヤを植え、芝やススキとは高さの異なる草地をつくってはどうか」といったアドバイスをいただくことができました。ご意見を活かして、活動のレベルアップを図っていきます。

  • イネ科の多年草。全国的に見られる普通種で、70~80cm程度の高さとなる。ツリガネニンジンやゲンノショウコなどの在来の野草と共存する。

有識者よりひとこと

植生創出研究グループ
主任研究員
橋本 佳延様

当博物館でも実験したことがありますが、今回植栽をお勧めした「チガヤ」の草むらは、年2回程度の刈り込みで維持でき、他の企業でも成功例がありますので、ぜひチャレンジしていただきたいです。また、当博物館は、さまざまな系統の植物種を保存する、いわゆる「ジーンファーム」の役割を持っていますので、地域本来の植物の種や株を分けるなどの点で協力できるかと思います。

植生創出研究グループ 主任研究員 橋本 佳延様
草原里山の生物多様性、外来植物・竹林問題を研究。遺伝子から生態系を視野に入れた自然環境保全を目指す。県内の「尼崎の森中央緑地」においては、行政が進める地域性植物による森づくりも支援する。学術博士、技術士(穿設部門)。
生物多様性保全研究グループ
主任研究員
大谷 雅人様

調査結果を見たところ、通常は多様性の豊かな土地にしかいない「ショウリョウバッタモドキ」が工場内で見つかっていたのには驚きました。取組の主旨にも共感できますし、ぜひ活動を続けていってもらいたいですね。

生物多様性保全研究グループ 主任研究員 大谷 雅人様
植物の絶滅危惧種や地域固有種の保全のために遺伝マーカーを用いて研究。里山の生物のなりわいについても興味。農学博士。
生物多様性保全研究グループ
研究員(兵庫県立大学助教)
鈴木 武様

三田市を代表する企業の一つである三菱電機さんが、こうした取組を始められたのは喜ばしいことです。地域のほかの企業のお手本になるような活動に育てていってください。

生物多様性保全研究グループ 研究員(兵庫県立大学助教) 鈴木 武様
絶滅危惧植物の保全、特に遺伝子解析を用いた研究を実施。シダ植物が専門であるが、最近は西日本のタンポポ調査も実施。他にカタツムリやネズミにも造詣が深い。理学博士。

ご意見を伺って

製造管理部 環境・施設管理課長  押尾 和彦

三田製作所 生きもの調査活動の旗振り役を務める。

貴重なご意見を活かして、さっそく活動をスタートさせました。

チガヤの草地づくり予定地
チガヤの草地づくり予定地

本ダイアログを受けて、ご提案いただいたチガヤの草地づくりについての検討を進めたところ、製作所内には生えていないと思っていたチガヤがあることが分かりました。新たな発見であり、それならば当製作所もチガヤの草地づくりで地域性緑化の役割を果たせるのではないかと思い、さっそく用地を確保して取り組んでいきます。

とはいえ、チガヤでの自然草地化は難しいこと、期間も5~6年くらいかかるというお話も伺いました。やるからには管理が大切です。先生方には、近隣の企業の活動事例も教えていただけたので、そうした企業にも実際に足を運び、管理方法や経験談も聞いて自社の活動に活かしていきたいと考えています。

カーマルチメディア製造第二部 工作課 工作係 専任  吉田 滋弘

鈴木氏に師事し、地元・三田市の自然について学んだナチュラリスト。

これからも製作所と専門家をつないでいきたい。

もともと生きものに興味があったので、三田製作所への配属後、地元の自然について色々勉強したことがありました。その際にお世話になったのが、人と自然の博物館です。このご縁があって私が製作所側と博物館側の“つなぎ”となることができたのは幸いでした。

生きものの専門家のご意見は得がたいものですが、これを具体的な取組に落とし込んでいくためには、ご意見のどこをどう取り入れるべきか、企業としての視点で議論する必要があります。私は生きもの調査の直接の担当というわけではないのですが、専門家と社員をつなぐ立場から、こうした活動をこれからも手伝っていきたいと思っています。


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