開発NOTE

若いメンバーが一丸となって、
世界一に挑みました。

若いメンバーが一丸となって、世界一に挑みました。

先端技術総合研究所 中田 勝志先端技術総合研究所 中田 勝志

鉄道向け直流高速度遮断器のフルモデルチェンジは実に約40年ぶりです。そのため前回の開発に携わったメンバーのほとんどはすでに現場を退いています。今回の開発は若いメンバーを中心に、先端技術総合研究所と受配電システム製作所の研究者・技術者が所属部署の垣根を越え、世界一という大きな目標に向かって取り組んできました。

開発メンバーはそれぞれFA、ビル設備などの分野で遮断器開発を行ってきた精鋭です。しかし鉄道向けという初めての分野に挑戦するため、開発はゼロからのスタートと言っても過言ではありませんでした。まずは製品を知るために、アークの挙動や各機構の動作など、基本的なことから徹底的に調べ上げました。解析モデルひとつをとっても、従来の機種のデータを収集し、それを参考に新しい構造を解析モデルで検討するなど、手間と時間をかけ一歩ずつ前へと進んできました。

一枚のスケッチが、難問を解く鍵になりました。

受配電システム製作所 佐々木 央受配電システム製作所 佐々木 央

世界最速の遮断を可能にした要素のひとつが、新たに開発した検出用電磁石です。この開発には非常に苦労しました。短絡電流を高速で検出するには、検出用電磁石の応答時間を短縮する必要があり、そのためには強力な磁力を発生させなければなりません。従来と同じ形状の導体でも鉄心の大型化により、強い磁力を発生させることは可能ですが、検出器が大きく重くなってしまいます。

当初は磁力をより効率的に利用するために鉄心構造を見直し、従来の導体でも応答時間を短縮できないか、検討を続けていましたが思うようにはいきませんでした。導体自体を見直すにしても一体どうすればいいのか悩んでいた時、従来の導体は平たい一枚の板ですが「なぜ一枚でなければいけないのか」ふとそう思ったのです。一枚の導体をU字型に曲げれば二枚分使うことができ、より強い磁力を発生できます。

私は入社当時、電磁石の設計を担当していました。電磁石による動力を利用するソレノイドアクチュエーターなどでは、コイルを何重にも巻くことで、磁力を発生させます。導体をU字型に曲げて二重にすれば、コイルを重ねて巻くのと同じような効果が得られると思ったのです。さっそくこのアイデアを手書きでスケッチに起こし、開発メンバーに送りました。この一枚のスケッチが悩み続けてきた課題の突破口になりました。