コラム
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2002年 11月分 vol. 5
オーロラ 見える魅力と見えない神秘
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


写真 空を舞う幻想的な光のカーテン、「オーロラ」。その怪しげな光は各地には様々な伝説を作ってきた。たとえばエスキモーの人たちにとってオーロラは「死者の精霊」。オーロラに襲われるから「オーロラが出ている時に口笛を吹いてはいけない。」という言い伝えもあるようだ。また中世のヨーロッパではオーロラは空の上で戦闘が行われたり、ローソクが並べられている絵として描かれてきた。

 20世紀、人工衛星が飛ぶようになり、オーロラの科学がどんどん明らかにされてきた。オーロラは太陽からやってくるプラズマの「風」と地球が磁石であるためにもっている「磁力線」とが、ぶつかり合って発生する。太陽活動が活発な時は嵐のように風がふいてきて、頻繁にオーロラが発生する。

 さらに、オーロラは「発電機」でもあった。その発電量は数兆ワットにもなり、地上に被害をもたらすこともあった。1989年のオーロラ大発生のとき、電離層に100万アンペアもの電流が流れて火災が発生、カナダで約9時間停電がおこり100万人が被害を受けたそうだ。驚異のオーロラパワー、地球上で利用できたらいいのに。

 地球の生命は太陽に生かされている「太陽圏」の住人であり、太陽が地球の大気や磁気と関係しあって魅せる光の饗宴に酔いしれる。オーロラ、夕陽、虹・・・。人間の目で見ることができる光の範囲は限られているからこそ、その美しさだけを堪能できる。もし人間がエックス線を感知できたら、爆発する太陽の恐ろしい姿を目にし、「母なる太陽」というイメージは一変するかもしれない。

 だけど「耳」の感度はもっとよかったら、と思う。オーロラには「音」があるらしい。エスキモーには聞こえるそうだし、観光客の中にも聞こえる人がいるらしい。だが誰も録音には成功していない。オーロラが出る前に犬が吠えると言う。彼らは人間には感じられないオーロラの「何か」を感じているのだろうか。