コラム
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2002年 11月分 vol. 6
地球の口ぶえ 木星のコーラス
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

写真  地球が口ぶえをふいていて、木星が歌を歌っているって知ってます? 鳥のさえずりのように、動物の遠吠えのように、様々な「歌」が惑星から聞こえてくる。その音楽をネットで聴くことができる。もちろん、タダで。

 惑星の歌は、NASAが太陽系に送り出した惑星探査機パイオニアやボイジャー、木星探査機ガリレオや土星探査機カッシーニなど、数多くの探査機から送られてくるデータを元に作られている。惑星付近で探査機がとらえたプラズマ波を音波に変えたのがアイオワ大学の物理学者ドン・ガーネット博士。40年間、探査機が送ってくる「宇宙の音」に耳をすませてきた人物だ。

 アイオワ大学のホームページでは、変換された「宇宙の音」を聞くことができる。Earth whistlers(地球の口笛)にも何種類かあって、「Earth multi-hop whistlers」は高音の口笛が次々と折り重なって鳥のさえずりにも聞こえて楽しげだし、「proton(陽子)whistlers」をクリックすると、汽笛かまたは動物の遠吠えのような「ホゥー」という音をバックに時折、素早い生き物が飛び交うような音がランダムに入ってきたりして、森の中にいるようでもある。プラズマとか陽子とか気むずかしげな粒子たちが、生き物が踊り暴れるような音を醸し出す、不思議さ。

 一方木星のコーラスを聞いてみると・・・控えめな太鼓の「ドンドコドコ」という音でリズムをとりながら、幾重にも音が重なり合う。さすがに太陽系最大の惑星の貫禄、地球のコーラスにはない「深遠な音楽」に聞こえてくる。

 これらの音に注目した作曲家テリー・ライリーは「Sun Rings(太陽の輪)」というタイトルで10曲を作曲。第1回目のコンサートが2002年10月26日、アイオワ大学で行われた。演奏したのは、1992年にグラミー賞最優秀室内演奏賞を受賞したクロノス・カルテット。2003年にはヒューストン、サンフランシスコ、そしてロンドンで行われるクロノス・カルテットの公演で「Sun Rings」が演奏されることが決まっている。

 さらに、この音楽がビジュアル化された。ローリング・ストーンズやU2のコンサートでマルチメディアデザインを手がけるウィリー・ウィリアムが制作。映像は最初に考えていたより瞑想的になったそう。カルテットもいいけど、U2が宇宙をテーマにしたら、めちゃくちゃカッコイイのでは?