コラム
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2003年 8月分 vol. 3
火星の「お楽しみ」は続く
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


「Happy face crater(ハッピーフェースクレーター)」。NASAの火星探査機マーズグローバルサーベイヤー(MGS)が1999年3月に送ってきた、火星の笑顔。(Photo by NASA)。  「6万年ぶり」が夏休み後半のキーワードでした。もうご覧になりましたか? 私の周りにも、「確か小学生の頃にオヤジが買ってくれた」望遠鏡を引っ張り出して見ている人、「不熱心ながら一応天文ファン」など、星空を見上げる人が急増中。

 オヤジの望遠鏡を覗いた彼の感想は「もう少し見えるかと期待していた」。つい月のクレーターに見入ってしまうと。正直です。私もNHKがハワイから生中継した「すばる望遠鏡がはじめてとらえた火星」を見て、内心「あれっ」と思ってしまった。以前、天文台の方が「最近の小学生は望遠鏡をのぞいても、感動してくれない。高解像度の鮮明な写真を見慣れていて物足りないようだ」と悲しそうに語っていたっけ。

 しかし、「不熱心な天文ファン」氏にとって、今回の火星の見え方は「驚きだった」。「惑星の円盤をくっきり確認できたのは初めて」と語るのだ(ちなみに口径8センチ屈折望遠鏡)。見かけの火星の大きさは前回、2001年6月の接近時より二回り大きく、さらに1999年4月頃の接近時に比べると倍近いそうな。住宅街で窓から望遠鏡を突き出せば、ご近所さんに気持ち悪がられるかも、と気を遣いつつ大接近を実感し「ときめいて」いるそうです。

こちらも、MGSが送ってきた画像。「From MARS, with LOVE」とNASAはメッセージをつけた。やっぱり火星には生命がいるんじゃないのかなぁ。(NASA)。 やっぱり望遠鏡が欲しい。自分で火星をとらえてみたい。でも写りの悪くなったテレビを買い換えるのが最大目標の我が家は泣く泣く断念。その代わりに、近所の科学館で望遠鏡を覗いてきました! オレンジ色に黒のまだら模様、白い極冠を帽子のようにちょこんとかぶった火星は「ラブリー」でしたよ。秋は全国の科学館で火星の観測会が行われます。火星は12月まで見えているし、一番観測しやすいのは9月。8月は火星がのぼってくるのが8時過ぎとやや遅かったけれど、9月には午後7時ごろに東の空に姿を見せ始める。そして注目は9月9日。月に火星が大接近。シベリアでは月が火星を隠す「火星食」が見られる。日本では北の地方ほど月―火星間の間隔が狭く、南ほど離れる。東京では午後8時40分に月と火星が再接近。月の直径の5分の1までランデブー。

 火星をきっかけに、夜空をもっと楽しみましょう。実は本屋でユニークな星座早見版を見つけました。「和名星座早見」。おとめ座のスピカが「真珠星」、さそり座は「うおつり星」、しし座の頭部が「いとかけ星」。心和む、この語感。冥王星の名付け親でもある野尻抱影さんの研究をもとに国立天文台の渡部潤一先生が編集。となりの棚にあった「日本の星 星の名言集」(野尻抱影著 中央文庫)を見ていたら、火星の和名は「夏日星(なつひぼし)」。歌好きな星で、人になって地上におりて歌を作り詠んだという、お茶目な星。「聖徳太子伝暦」にそんなお話が載っているそう。古の夜空を思いながら星を見上げるのも、いいですね。

和名星早見 渡辺教具製作所
http://www02.so-net.ne.jp/~starnet/products/1107.html
日本の星 「星の方言集」 野尻抱影 中公文庫 定価952円+税