コラム
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2004年 1月分 vol. 2
火星科学者は本をカバーで判断しない
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


火星ローバー「スピリット」「オポチュニティ」名付け親のソフィーちゃんとローバーの実物大模型。ソフィーちゃんはシベリアの孤児院にいたが、今はアリゾナ州の養母コリスさんの元で宇宙飛行士になる夢を追う。(NASA/JPL)  右の写真は、1月15日夜(日本時間)、火星に一歩を踏み出したばかりのローバーの実物大模型。となりは2つのローバー「スピリット」と「オポチュニティ」(今月末に火星に着陸予定)の名付け親ソフィー・コリスちゃん。(9歳)。ゴルフカート大のローバーもソフィーちゃんと比べると結構大きい。高さ約1.5m、幅約2.4m、重量約180kg。1日100m走ることができる能力をもつ。まずは北東250mの方向にあるクレーターを目ざすことになっている。

 これまでスピリットは、グセフクレーターに「粘土質」の土があること、水の存在を示唆する炭酸塩の存在など早くも興味深い情報を送ってきている。国立天文台の渡部潤一先生によると「グセフクレーターは本当に湖底だったかもしれないね。ローバーに付く土ぼこりも少ないようだし。NASAはまだまだ出してない情報があると思うよ。」面白くなりそう・・・。

真右下、やや薄暗く引っかき傷が見える場所はスピリットが着陸時にエアバッグを引きずり、粘土質の土壌が露出したもの。「マジックカーペット」と名づけられた。(NASA/JPL)  スピリットが着陸したグセフクレーターと、相棒のローバー、オポチュニティが着陸予定のメリディアニ平原は「水」をキーワードに選ばれた。グセフクレーターは大きな穴があり川が流れ込んでいたと思われる等「地形的な」観点から、メリディアニ平原は水があってできるミネラルが堆積しているという「化学的な」観点から。

 しかしこれまでは上空から観測しただけ。「科学者は本のカバーを見ただけで中身を判断してはいけない」とテネシー大学のモルシュ氏は語る。地上でもグセフクレーターと見かけ上似ている土地はある。カナダ北極圏にあるホートンクレーターやエジプトのサフサフ砂漠。しかし二つの場所の成り立ちは全く違う。だからこそ、ローバーが地質学者のように徹底的に調べなければならない。アームの先端にとりつけられた顕微鏡カメラを含めて立体画像撮影用の魚眼レンズ付きのカメラなど9つのカメラ、岩の表面を削って内部の様子を調べるための研磨用ツール、成分、組成、状態などを詳しく調べる様々な科学機器。火星の過去と現在の水について、生命について、貴重な情報がもたらされるだろう。

 ところで、科学者が世界中の子ども達に「あなたの岩を送ってください」と呼びかけている。10センチぐらいの岩をアリゾナ州立大学のクリステンセン博士に送ると火星ローバーに搭載されているのと同様の機器を使って岩の成り立ちを調べ、Web上に写真と共に載せてくれる。記念のステッカーと証明書も送ってくれるそうだ。これからローバーたちが調べる火星の岩とアナタが送った岩がどう違うかも実感できるだろう。ウチの娘は石コレクター。この話をしたら「送る!」と乗ってきた。どう分析してくれるか楽しみだ。


「Send in your schoolhouse Rocks!」詳しくは
http://marsrovers.jpl.nasa.gov/classroom/schoolhouse/