中国の子ども達は、「宇宙から『万里の長城』は見える」と教えられてきた。だが2003年10月、中国の宇宙船「神舟5号」で初飛行した英雄・楊利偉飛行士が「『万里の長城』は見えなかった」と発言。小学校の教科書を書きかえるなどの大問題となっていた。ところが、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在していたリロイ・チャオ飛行士が2004年11月に宇宙から撮影した写真には、「万里の長城」がしっかり写っていたのだ。
2004年11月24日、中国系アメリカ人飛行士でISSの第10次クルーの機長として10月からISSに滞在していたリロイ・チャオ飛行士は、北京の北200マイル、内モンゴル自治区あたりを撮影。写真には、万里の長城の一部を確認することができた。180mmレンズをつけたデジタルカメラで撮影したこの写真は、一般的なカメラで宇宙から初めて「万里の長城」が撮影された記念すべき1枚となった。チャオ飛行士は2005年2月にも撮影、中国のリモートセンシングの専門家が分析した結果、万里の長城と確認されている。
チャオ飛行士が撮影した写真は、中国の人々に安堵と喜びをもたらし、新聞に大きく紹介された。だが、彼自身は「目では見えなかったし、写真に写っているかどうかも確信はなかった」という。
NASAジョンソン宇宙センターの地球観測の専門家は、「万里の長城は宇宙から肉眼で見ることも写真を撮ることも難しい。なぜなら、周囲の色や状態と非常に似ているからです。チャオ飛行士が撮影した写真は、晴れた日で撮影日近くに雪が降ったなど様々な条件がそろって、成功したのでしょう」とコメントしている。
実際、宇宙飛行士の話を聞くと、港湾や空港など、周囲の風景から際立った人工的な構造物は宇宙からよく見えるという。最もよく見えるのは、夜の人工的な光。日本海のイカ釣り船の光もはっきり見えるそうだ。
アポロ宇宙飛行士ジーン・サーナン氏が月から地球に帰ってくるときに、地球上空160km~320kmで『万里の長城」を肉眼で見たという情報もあるが、今のところ、少なくともISSでは肉眼で見るのは難しいようだ。「神舟6号」で飛ぶ中国人宇宙飛行士にたくされた宿題となりそう。
|