コラム
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2005年 6月分 vol.4
宇宙に一番近い町
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


ななめ発射が特徴のM-Vロケット5号機(JAXA)
 「宇宙に一番近い町」とパソコンで検索すると、鹿児島県内之浦町が出てくる。日本の固体ロケット発射場、内之浦宇宙空間観測所(USC)があるからだ。だけどこの町、宇宙には一番近くても東京からはかなり遠い。鹿児島空港から鹿屋までバスで1時間40分、そこからさらにタクシーで約1時間。大隈半島の東側、内之浦湾に面した射場は世界の宇宙基地では珍しく、山腹に施設が点在している。この発射場から7月6日、日本のX線天文衛星「アストロE II」がM-Vロケット6号機で打ち上げられる。

 種子島には打ち上げ取材に行ったことがあるけれど、内之浦にはまだ。空港からの足を考えると、正直どうも気後れしてしまう。でもネットで世界の裏側とだってつながることができる時代だからこそ、がんばって内之浦に行きたい気が強烈にしている。白砂青松の海岸線をぶらぶら歩いて、よいしょと山を登って、打ち上げ失敗からの再起をかけた衛星が宇宙に飛んでいく姿を見届けて、周りの人と喜びを共有したりしてみたい。JAXA宇宙科学研究本部から送られてくるISASメールマガジンの峯杉賢治さんの記事「そうだ! 内之浦へ行こう」を読んでそう思った。(このメルマガ、書き手の個性が出ていて愛読してます)

 実はUSCからM-Vロケットが発射されるのは、あと数回しかない。ペンシルロケットを生んだ糸川英夫博士が日本中を歩き回って内之浦に射場を作ることに決定し、1962年に設置されてから40年以上、日本の科学・工学衛星を送り続けてきた。M-Vロケットでの打ち上げが計画されているのはアストロE IIを含めて4~5機。M-Vロケットの開発は終了し、その後射場がどうなるか未定。だから今回は無理でもあと数回の間に、是非訪れておきたいな、と思うのだ。

リフトオフ!(JAXA)
 内之浦の特産はさつまあげ、柑橘類のポンカン・たんかん、キヌサヤエンドウ、銀河アスパラ、塩干物など。また「ロケット桜」があるらしい。内之浦町のホームページによれば、「20数年前、当時総務課の職員が『ピリピリしている実験班のスタッフの気分が少しでも和らいだら』との思いでソメイヨシノの台木に接ぎ木して植えました。冬場のロケット打ち上げの時期に花を咲かせるため、この名がつきました。」とのこと。開花は1月下旬~2月中旬だというから、冬の打ち上げの頃に行くのもいいなぁ。

 打ち上げ当日は、一般見学席で見ることができる。ただし、USC周辺の道路は打ち上げ2時間前ぐらいから通行止めになるし、渋滞するため早めに行った方がいい。USCに電話したところ、空港からレンタカーを借りて行くのが一番早く、それでも「2時間半から3時間」。山道ですか? と聞いたら「鹿屋から内之浦はくねくね道です。でも案内板が出てますからね。ほほほ」とほんわか答えてくれた。あったかそうな雰囲気。また行きたいところが増えちゃった。


内之浦宇宙空間観測所
http://www.isas.ac.jp/j/about/center/ksc/ksc.shtml

アストロE IIカウントダウンページ
http://www.isas.ac.jp/j/countdown/index.shtml