コラム
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2008年 5月分 vol.2
野口飛行士、半年間の宇宙ぐらし決定。さて住み心地は?
ライター 林 公代 Kimiyo Hayashi


2009年末からISSに長期滞在が決定した野口飛行士。しかもJAXA飛行士で初めてロシアのソユーズ宇宙船で往復。パイロットの役割をするという。着ているのはロシアの宇宙服。(提供:GCTC/JAXA)  日本人宇宙飛行士の話題が続きますね。土井飛行士が宇宙から帰ったと思ったら、もうすぐ星出彰彦宇宙飛行士の打ち上げ。そして、2009年末から野口聡一宇宙飛行士が宇宙ステーション(ISS)に滞在することが決定! しかも半年間もの長期滞在だ。嬉しさ爆発の会見で野口さんは、「地上のふだんの生活を持ち込みたい。宇宙生活の生の姿を見てほしい」と語った。では「きぼう」の住み心地はどうなのでしょうか・・・?

 きぼうは大きく3つのパートに分かれる。メインの部屋(船内実験室)は、大きさは長さ約11m×直径4.2m(内径)の円筒形(星出飛行士が組み立て予定)。大型バス1台がすっぽり入る大きさだ。その上に倉庫の役割をする船内保管室が、ロフトのように乗っている。(土井飛行士が3月にとりつけずみ)。保管室は土井さん曰く「感覚的に4畳半」。でも実験ラックを外せばかなり広くなるという。そして、船内実験室から突き出した、テラス的実験スペース。テラスに出るときには、宇宙服の着用をお忘れなく。

生活空間として、かなり快適度の高い 「きぼう」完成予想図。ISSの進行方向の一番前にあるのでデブリ(宇宙ゴミ)があたったりしないか、ちょっと気になる。デブリ対策のバンパーが つけられてはいるのだが。(提供:JAXA)  例えれば「テラス・ロフト付きワンルームマンション」。そんなきぼうの特徴は、まず「大きい」こと。宇宙ステーションのモジュール中、最大だ。さらにロフトつきだから仕事はもちろん、遊んだり隠れたり? 何でもできる。各国の飛行士が口をそろえるのは「綺麗」で静かなこと。土井飛行士と一緒に来日したNASAの飛行士は「きぼうは高級車のようで、新車の匂いがした」という。ラインが美しく仕上がりは職人芸だと絶賛。静かさもピカ一。(関係者曰く「日本人は真面目だから、騒音レベルも含めてすべてNASAの要求通り作っちゃった。できてみたら他のモジュールは多少手抜きもあるのに」。だから「きぼう」は一番きっちり作られているのだ)実験装置が多いとどうしても騒音が出るが、倉庫の役割をする保管室は静かで「居住区にするといい」と土井さんお勧めの空間だ。ここ、茶室など色々な用途に使えそうですね。

 だが、私は「きぼう」の売りは「窓」だと思っている。だって、宇宙にいったら絶対に地球を見たいと思いませんか? 今、ISSで地球を見ようと思ったら、宇宙飛行士達はロシアモジュールに出かける。ISSはかなり大きくなっていて土井さんは「シャトルから一番奥のロシアモジュールまで行くのに時間がかかって、見たい景色を見逃したこともある」と残念そうに話す。アメリカ実験棟にも窓はあるが、地球を見るのには適していない。

2008年2月に撮影した「きぼう」船内実験室内部。実験ラック(棚)を取り外した状態。確かに広い。奥の中心の円筒形がエアロックで、その両側の小さく丸いのが窓。(提供:JAXA)  一方、「きぼう」には2つの丸窓がある。直径45センチで観測用の高品質のガラスを使っているというから、地球を見るのにバッチリだ。野口飛行士は「休みの日には、きぼうで地球を見ながら本でもよんでうつらうつらお昼寝してみたい。気づいたら地球を一周していたりして」と語っていたが、無重力で地球を見ながらお昼寝とは最高の気分だろう。もしISSに旅行に行ったら、やっぱり「きぼう」に泊まってみたい。

 ともあれ、星出飛行士が、6月の宇宙飛行で船内実験室に入るときには、ぜひ窓をチェックしてみてくださいね。どんな眺めが見えるでしょうか。