-それでは月と人類、あるいは月と日本人の関わりはどうですか?
渡部:たとえばエジプトではシリウスが昇るのを見て一年の始まりを決めてナイル川の氾濫を予測して、種籾を撒いていた。砂漠の人たちは方向や暦を知る術として星を見ざるを得なかった。ところが日本は山紫水明の国だから、あたりの山や川を見れば自分の位置がわかるし、四季があるから紅葉すれば秋だとわかるから、暦のために星を見る必要はない。だからメソポタミアやエジプトの人たちほど星を見てこなかったんですね。
一方で、日本人は月を非常によく見てた。月は月読命(つくよむのみこと)が宿る神様だったので、あまり歌に詠まれることはなかったんですが、平安時代頃から天皇と離れた存在としてうたわれるようになりました。世界最古のSF、「竹取物語」も月をテーマにしていますし、月齢ごとに月の別名がありますね。そんな国は他にない。よく見てきた証拠ですね。
-鏡さんの著書で、生まれたときの月の形が支配する性格や運命の本がありますね?
鏡:ルネーションといって、20世紀に入ってからできた占星術の技法ですね。占星術はすべからく「○○みたいな」ということでロジックが展開します。宗教学的にいえば「象徴的思考」ということです。たとえば植物が育って枯れていくとか、人の一生とか、皆さんが体感するような、この世で起こる様々な変化のプロセスを月の満ち欠けと重ね合わせてみることができる。それを満月とか三日月とかいくつかのフェーズに分けて、たとえば「今は月が満ちていくような状態で」とたとえる。そこで単なる記号とドライに考えないで、月と同じようにみんなが生きているんだと考えることができるわけですね。
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