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冥王星「降格」に異議あり!? 松本零士 (まつもとれいじ)

画像:松本零士・東映アニメーション  「冥王星」・・・この星には、子供の頃から特別な気持ちを持ってきました。それは、太陽系世界にとって、「最果て」「世界の終端」「外宇宙への出口」というべき存在です。「冥王星の彼方」は正に広大無限な未知の空間で、「冥王星を通過する」ということは、太陽系というやさしい世界から離れ、長く果てしなく過酷な世界に向けて旅立つ、という重要な意味を持ちます。

 「999」でも「ヤマト」でも、冥王星を一つの大きな分岐点として描きましたが、そこに格別な気持ちを持つのは私だけではないはずです。特に、物語りを創る者にとっては本当に特別な存在感のある「惑星」なのです。

 今回の決定は、世界中の専門家によって、科学的に充分な討議を重ねた結果ではあります。観測技術の進歩によって、これまで見えていなかったものが見えてきたり、そのために改めなくてはならない事実があるのは確かです。

 しかし、長い間愛称で親しまれてきた存在が、切って捨てられるようにその地位を追われ、それまでの存在をまったく無にするかのように記号化されることには釈然としないものを感じます。

 今回の決定が為されたとき、身近にいた子供に「小さいから仲間はずれにされちゃうの?」と質問されました。大きいものが認められ、小さいものが小さいという理由だけで余計者のように扱われる風潮を、子供達には見せたくありません。

画像:松本零士  「矮惑星」では、如何にも差別的で夢がないと思います。科学の進歩によって、これからも分析・分類はますます厳密になることと思いますが、その一方で情緒や人間性が失われる傾向が増えるのはどうかと思います。

 もちろん、私は科学の決定に対して云々出来る立場ではありませんから、以上は、あくまでも心の問題としての感想ですが、今でも、私はガリレオのように繰り返しています。『それでも、冥王星は廻る』と・・・。