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工場内で大型機器などの吊上げなどに使われる「ホイスト」製品の開発・製造を手がける三菱電機FA産業機器株式会社。同社は、設備機器の安定稼働・ダウンタイムの短縮と、高所作業が中心となるクレーンやホイストの保守点検作業者の安全性向上に向けて、IoT技術とクラウドを活用した「クレーンリモート監視システム」を三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)の支援を受けて構築しました。クレーンメーカーやメンテナンス業者と一体となった製造から保守までのサービスを強化するとともに、ユーザー、クレーンメーカー、メンテナンス業者の3者の「Win-Win-Win」を実現しています。

左から、取締役社長 林田隆洋氏、主席技監 堤清介氏、取締役 ホイスト営業部 部長 藤田英司氏、ホイスト営業部 フィールドサービス 業務課 課長 松尾大輔氏

左から、取締役社長 林田隆洋氏、主席技監 堤清介氏、
取締役 ホイスト営業部 部長 藤田英司氏、ホイスト営業部 フィールドサービス 業務課 課長 松尾大輔氏

お客様設備の安定稼働により顧客満足度の向上へ

三菱電機の福岡製作所を母体に設立した三菱電機FA産業機器(2000年に三菱電機ホイストとして設立し、2006年に現社名に改称)。現在、クレーンに設置して物を吊上げる「ホイスト」と、FA設備の駆動源である「ギヤードモータ」の2つを軸にビジネスを展開しています。取締役社長の林田隆洋氏は「当社独自の技術を応用したホイスト製品は開発から製造、販売、保守まで一貫体制で対応し、国内トップクラスのシェアです」と語ります。

クレーンやホイストを利用する製造業のお客様(ユーザー)、ホイスト製品の販売を担うクレーンメーカー、クレーンの点検・保守を代行するメンテナンス業者の3者がそれぞれ課題を抱えていました。取締役 ホイスト営業部 部長の藤田英司氏はその状況を語ります。

「製造業のお客様やクレーンメーカーは、設備故障時のダウンタイムを短縮し、生産への影響を極小化したいと考えています。そのためには故障する前に不調を予測して、部品を修理・交換する予防保全が求められています。メンテナンス業者やクレーンメーカーにとっては、工場内の高所に取り付けたクレーンやホイストの点検・保守作業は業務経験も求められるため、安全性の確保や後継者の育成が課題となっていました」

これらの課題を解決するために同社は、クレーンの稼働データをクラウドに集約して設備の状態を一元的に管理する「クレーンリモート監視システム」の構築を検討開始しました。

セキュリティーに関する多角的な提案をはじめ豊富な実績に基づく高信頼性を評価

システムを検討する中で、同社は複数のベンダーに提案を依頼し、その内容を吟味してMDISをパートナーに選定しました。主席技監の堤清介氏は選定理由として、MDISには豊富な実績があり、信頼感を持てたことを挙げます。

「当社にとって定額料金でサービスを提供する『コト売り』は初めてのチャレンジで、IoTやクラウドに関するノウハウはこれからといった状況でした。その点、三菱電機グループを始めとする製造業のシステム構築やサポートに豊富な実績を有するMDISであれば仕様設計から構築、稼働後のフォローに至るまで、着実に支援していただけると判断しました」

MDISの提案について、ホイスト営業部 フィールドサービス業務課 課長の松尾大輔氏は「提案段階からセキュリティーの重要性を指摘していただきました。遠隔でデータを収集してクラウド上で保管することに対しても、閉域接続専用SIMの利用、VPNによる暗号化、二要素認証対応など、安全性を確保するための多角的な提案をいただきました」と振り返ります。

クレーンの稼働状況の可視化で効率的な設備保全業務を実現

クレーンリモート監視システムでは、事務所のパソコンなどからネットワーク経由でクラウド環境にアクセスし、稼働中のクレーンの各種情報をビジュアル化された画面で閲覧できます。トラブル発生時や、部品交換が推奨されると判断された場合にはパソコンやスマートフォンで通知を受け取ることができます。

これにより、複数のお客様に納入したクレーンを対象として、どこの場所の、どのクレーンが、どれだけ稼働し、異常時にはどんなエラーが発生しているかが把握できます。突発的なトラブルが発生した際にも、お客様やクレーンメーカーは素早く故障個所を特定して速やかに部品交換を行うことで、ダウンタイムを短縮することができます。

お客様の設備担当者やメンテナンス業者は、現場に出向くことなくクレーンやホイストの点検履歴や部品交換時期が把握でき、効率的な設備保全業務が実現します。結果として少人数での保全対応が可能になり、保全コストの削減やお客様の負担軽減につながります。

クレーンメーカーやメンテナンス業者は、設備の稼働分析・寿命予測・予兆管理などにより、お客様に対して先を見据えた対応や、データに基づく根拠のあるメンテナンス提案が可能となり、顧客満足度の向上に貢献します。「守りの保守」から「攻めの保守」へ転換することで、新規顧客の獲得や設備増設による売上拡大、保守契約数の増加などが期待されます。

「クレーンメーカーやメンテナンス業者と一体となった製造から保守までのサービスの充実で、製造業のお客様、クレーンメーカー、メンテナンス業者の3者が"Win-Win-Win"の関係を築くことが可能となります」(藤田氏)

サービス開始から約1年が経過した2020年7月現在、リモート監視対象のクレーン台数は約100台に達しています。

「クレーンリモート監視システムは、国内のホイストクレーンメーカーでは初のサービスです。今後、キャンペーンなどで認知度を高めてサービスの良さを知っていただき、利用台数を増やしていきます。すでに導入したお客様からは、海外工場のクレーンの稼働状況を遠隔で監視したいという要望もいただいています」(松尾氏)

クレーンリモート監視システムは、同社のビジネスモデルの変革にも大きな影響を及ぼす可能性を秘めています。

「国内クレーン市場の新規登録設置数が頭打ちとなっている中、クレーンリモート監視システムによる『コト売り』へのチャレンジは、これまでの『モノ売り』依存から脱却するためでもあります。本システムは、新規導入のホイストだけでなく、既設のホイストにも対応できます。また、ホイストのリニューアル時には他社製品からの乗り換えも含めて、当社の製品やメンテナンスサービスを検討いただき、さらなるシェア拡大と売上高の伸長につなげていきたいと考えています」(林田氏)

ビッグデータやAIに対応し製品やサービスの機能強化に反映

今後は、お客様、クレーンメーカー、メンテナンス業者の声を参考にしながら、クレーンリモート監視システムのさらなる強化を図っていく考えです。すでにデータセンターとホイスト間の双方向通信対応や、通信回線の5G、6Gへの対応を視野に入れて研究を進めています。

「機能強化は、将来のビッグデータやAIへの対応を見据えたものです。センサーデータで取得するデータの種類の増加や、顧客管理の強化を通して、大量のデータを蓄積・分析することで、製造現場でのリアルな利用状況を把握し、製品やサービスの機能強化に反映させていきます」(松尾氏)

クレーンリモート監視システムによって、お客様と良好な関係を築き、継続的な価値の提供をするストックビジネスへと踏み出した三菱電機FA産業機器。MDISとは現場作業員の点検作業のデジタル化とプロセスの簡素化を図る「フィールド業務支援システム」の共同開発も進めています。林田氏は「業界をリードする新たなサービスの実現に向けて、今後も支援を期待します」と話します。

三菱電機FA産業機器は、お客様の「いま」を支えるために、そして「未来」を描くために満足していただける製品とサービスを提供していきます。

システム構成イメージ

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  • アフターサービス業務用途IoTソリューション

    産業機械などの機械設備を製造し販売・保守されるお客様が、出荷先のエンドユーザーでの稼働状況を自動的に収集する、運用・保守業務のサービスプラットフォームを提供します。

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三菱電機FA産業機器株式会社

所在地 福岡県福岡市西区今宿東1-1-1

設立 2000年

http://www.melfaip.co.jp/