JR西日本グループの一員として、線路、土木、建築工事を手がける大鉄工業株式会社。同社は三菱電機ITソリューションズ株式会社(MDSOL)が開発・販売する就業システム「ALIVE SOLUTION TA」を導入し、勤務予定を作成するシステムと勤務実績を登録するシステムを統合しました。鉄道工事特有の「1日2勤務」に対応することにより、システム間連携から解放され、就業情報の即時反映を実現しました。
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勤務予定と実績登録の2つのシステムで業務が煩雑化
大鉄工業(本社:大阪市淀川区)は、1943年に創業して以来、日本の鉄道の発展と安全安定輸送を支えてきました。現在は、JR西日本グループとして「線路」「土木」「建築」の3部門が力を結集し、総合建設業として幅広い分野で事業を展開しています。社員数は全社で約1,600名、施工管理を中心に、経理・企画・営業など様々な業務に従事しています。人事管理は、本社の人事部がすべてを統括。工事に関わる技術者の勤務管理は、西日本エリアにある11の支店とその傘下の出張所の事務スタッフが工事拠点ごとに担当しています。
社員の勤務予定と勤務実績は、長年にわたってスクラッチ開発のERP勤務管理システムを利用してきましたが、2017年にガバナンス強化の観点から自動打刻に対応した出退勤システムを新たに導入しました。結果として勤務予定を作成するシステムと打刻や就業実績を登録するシステムの2つが存在することになりました。人事部 担当課長の吉岡隼人氏は「2つのシステムは1日2回、バッチで連携しているものの、鉄道関連の工事は、自然災害、急な悪天候、ダイヤ乱れなどで勤務予定が急遽変わることも多いため整合性を取るのが難しく、即時連携が求められていました」と振り返ります。
また、ERP勤務管理システムでは、実績入力(出勤簿の作成等)を手作業で対応しており、入力者への負担も大きくなっていました。人事部の井上清美氏は「実績入力は原則的に社員がそれぞれ行うものですが、現場によっては出張所の事務スタッフが作業実績をまとめて入力することもあり、それが大きな負荷となっていました」と語ります。
特に同社の勤務管理が複雑化する大きな要因は、24時間体制で対応する鉄道工事特有の「1日2勤務」にありました。例えば、9時から17時まで勤務した社員が、その日の夜勤に入り22時から翌朝7時まで勤務する場合などが「1日2勤務」に当たります。働き方には日勤のみ、夜勤のみ、日勤と夜勤両方の1日2勤務があり、変形労働時間制により始業時刻、労働時間、休憩時間も細かく設定でき、勤務パターンの組み合わせは10,000通り以上になります。
「勤務パターンの選択肢の多さが結果として入力作業や打刻と申請内容のチェック作業を煩雑にさせ、勤務時間の修正などでも多大な労力がかかっていました」(井上氏)
特殊な勤務管理への理解力と課題解決に向けた提案力を評価
これらの課題解決に向けて同社は2つのシステムの統合を決断し、2018年6月から11月にかけてMDSOLを含むベンダー4社から提案を受けました。同業他社でも導入実績のあるパッケージ製品を提案するベンダーもいましたが、最終的にMDSOLが提案した就業システム「ALIVE SOLUTION TA」の導入を決定しました。
「多くのベンダーの提案は、同社固有の1日2勤務、変形労働時間などの特殊要件に対応していました。価格面でも安価な提案はありましたが、MDSOLは私たちの課題を深く理解したうえで要件を実現するための明確な回答があり、開発後の姿が具体的にイメージできたことが決め手となりました。MDSOLの営業担当からは、就業管理業務に精通したSEやプロジェクトマネージャーをアサインいただき、実際に面会した際にも人間性に信頼が置けると判断しました」(吉岡氏)
導入プロジェクトは、2018年12月にキックオフ。FIT&GAP、基本設計、開発、テスト、社員のトレーニングを経て2020年8月より本稼働を開始しました。特殊要件に合わせて実施したカスタマイズ開発の中で一番のポイントは、プロジェクト体制の中に「業務アドバイザー」として支店の実務担当者2名を加え、現場の要望を最大限に盛り込んだことでした。
「勤務管理を20年、30年担当している現場のベテラン社員に設計段階から参加してもらい、利用者側の意見をシステムに反映させていきました。結果として、現場の方々が"自分ごと"として新しいシステムを捉えるようになりました」(井上氏)
また、稼働直後から約1,600名の社員が、PCやiPadから打刻をしたり、勤務予定や作業実績を入力したりできるようにするため、全社展開の際には操作教育にも力を入れました。人事部の福冨沙映氏は次のように語ります。
「社員トレーニングの期間中はコロナ禍で対面の教育ができないため、支店の担当者にはWeb会議で説明会を実施しました。その他の社員には、業務別に複数種類の操作マニュアルを作成したほか、操作手順を録画した動画マニュアルを制作し、社内イントラに公開しました。動画マニュアルはよく参考にしてくれたようで、スムーズな滑り出しに貢献しました。マニュアル作成の際にはMDSOLのSEからも多くのアドバイスをいただきました」
操作教育の効果もあり、本稼働後の社員からの問い合わせは、想像以上に少なかったといいます。
「従来のシステム導入時と比べて、質問や要望が相当減りました。問い合わせの内容も、より使いやすくするための前向きな意見が届いています。よくある質問や重要と思われるものはFAQにまとめたり、改善要望リストに加えたりしながら、日々進化を続けています」(福冨氏)
勤務管理の一元化で即時連携を実現 出勤簿作成の時間が2分の1に
新システムの導入により、勤務管理の一元化が実現し、打刻した情報を即時に実績として反映できるようになりました。実績の確定と承認を日々実施することで、月末の出勤簿作成業務が改善されるとともに、業務の平準化にもつながりました。
新システムでは利便性の向上に向けて、勤務予定の入力項目に個別の勤務パターンの設定機能(お気に入り機能)を追加しました。さらに、勤務パターンを勤務予定に貼り付けられるようにして、操作性も向上させています。打刻については、iPadからも可能とすることで、現場から事務所に戻ることなく、直行直帰が可能になりました。
「様々な工夫によって、出勤簿の作成にかかる社員1人の月あたりの業務時間平均は、従来の89.3分から45.5分と、約2分の1に削減ができました。この削減時間から全社員分の削減コストを計算すると、3年間でシステムの投資額の回収ができる見込みです。本稼働後に社員100名に対して実施したアンケート調査では、9割以上が満足と答えています」(吉岡氏)
現場要望に合わせて機能改善を進め より使いやすいシステムへ
本稼働から9ヵ月後の2021年5月には、業務の効率化、経費削減を目的に、給与明細書配信システム「ALIVE SOLUTION PV」を導入し、紙の明細書をオフィスに取りに出向くことなく、メールやWebで確認できるようにしました。
今後は、本稼働後の就業規則の改正に合わせて、時間単位休暇の申請 / 実績のシステム入力と、現場要望の機能改善として、作業工数(工事番号と従事時間数)の入力 / 承認の操作性向上等を検討しています。さらに、人事業務の効率化として、人事評価ワークフローのシステム化、ペーパーレス化も構想しています。
「MDSOLには引き続き、人事業務の改善につながるさまざまな提案を期待しています。そして、私たちユーザーの声をALIVE SOLUTIONのパッケージに反映させ、標準機能で多くの企業のニーズに対応できるように、進化を続けていってもらえたらと思います」(吉岡氏)
大鉄工業は、「安全理念」に基づき、これからも安全施工を積み重ね、私たちの暮らしに欠かせない鉄道に関わるインフラの建設整備に貢献していきます。