国内外の自動車メーカーを中心としたマニュアル関連の制作や技術ドキュメントの翻訳の他、自動車ディーラーの営業支援を手がける丸星株式会社。「文字と言葉」のプロフェッショナルとして事業を展開する同社は、お客様のマーケティングを支援する新たなビジネスを創出するため、三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)が販売するベクスト株式会社のテキストマイニングツール「VextMiner(ベクストマイナー)」を導入しました。自動車メーカーから受託したアンケート分析や、コールセンターのVOC(Voice Of Customer:お客様の声)分析に活用し、見えなかった課題の発見や、これまでにない新たな気付きを獲得してお客様にフィードバックしています。
常務執行役員 GCソリューション サー ビス本部本部長 中尾 是幸 氏(左) ソリューション企画営 業本部ソリューション 企画部部長 市場 利一 氏(中) ソリューション企画営 業本部ソリューション 企画部コンサルティング室データ分析官 渡邉 啓介 氏(右)
「文字と言葉」を活かしたビジネスに向けテキストマイニングを検討
価値ある情報提供を通して企業間コミュニケーションを支援する丸星。近年は、自動車ディーラー向けの営業・販売・アフターサービスのコンサルテーションから、販売店教育、営業研修、教育コンテンツの開発までを支援するソリューションビジネスにも注力しています。
丸星がテキストマイニングツールを導入するきっかけとなったのは、マニュアル制作と翻訳に続く「第3の事業」の確立に向けた取り組みにありました。ソリューション企画部 部長の市場利一氏は次のように説明します。
「丸星は、1954年の創業以来、一貫して自動車業界に向けたサービスを提供してきました。2011年にシイエム・シイグループに加わったことで、そのサービス領域はよりマーケティングの性格を強めています。自動車業界の転換期である今、新たなビジネスを軌道に乗せるには自動車オーナーやディーラースタッフたちの個々の価値観やニーズを把握するためのテキストマイニングツールが不可欠だと考えました」
テキストマイニングの深い知識と操作教育等の柔軟な運用対応を評価
複数のテキストマイニングツールを比較した中から丸星が選んだのは、MDISが提案した、大量データや長文の分析に対応した「VextMiner」でした。VextMinerは、システムが行う自動分類(クラスタリング)により、文書情報の全体像を素早く把握することができます。また、その結果をもとに分類体系を、分析目的に合わせて自由に再構築することが可能です。常務執行役員の中尾是幸氏は選定の理由を次のように語ります。
「MDISには当社の利用目的をしっかり理解したうえで、適切な提案をしていただきました。特に、テキストマイニングツールの利用は初めてで、社内の導入体制、運用体制も十分に整っているとはいえない中、知識が豊富なMDISの支援により、試用版の評価時にデータに依存する分析の難易度やお客様への報告イメージをつかめたことは、導入選定、運用検討する上で大きなポイントになりました」
導入後の操作教育は2日間にわたって行われ、複数の分析担当者がVextMinerの基本的な操作を身につけました。その後も随時サポートを受けることで社内の要員だけで精度の高い分析ができるようになりました。コンサルティング室データ分析官の渡邉啓介氏は「初めて操作した時は戸惑うこともありましたが、テキストマイニングの概念が理解できると、VextMinerを自由に使い、分析全体のバランスも考えられるようになりました。MDISは、利用中に発生した疑問や改善要望にも迅速に対応してもらえる心強いサポーターです」と話します。
見えなかった課題の発見や気付きをお客様に提供
丸星は2016年に長年取引のある輸入車ブランドのオーナーズマガジンに関するアンケート分析を受託しました。アンケートは、選択肢を使った定型回答が中心でしたが、発刊を重ねるごとにテキストによる自由回答が増えてきました。そこで丸星はテキストマイニングを活用した新しい分析サービスを提案し、採用されました。
「VextMinerは、異なる表現で書かれた大量のテキストの中から、”キーワード”だけでなく”文書単位”で話題が抽出できます。ディーラースタッフや車のオーナー目線で、性能や技術に関わる広い意見を解釈できる丸星の分析結果は、お客様からオーナーズマガジンに関する意見や、自動車そのものに対する要望が具体的に把握できるという声をいただきました」(渡邉氏)
オーナーズマガジンのアンケート分析が評価され、テキストマイニングを用いた分析サービスは、SNSやコールセンターの声を含めたVOC分析にも広がり、丸星の新たなビジネスに成長しています。
VOC分析では、自動車メーカーのコールセンターに寄せられた問い合わせやSNSへの書き込みなど、約2,500件/月のデータに対してテキストマイニングを実施。毎月1回、レポートを提出しています。
「お客様からは、これまで部門内だけに留まっていたエンドユーザーの貴重な意見が、社長を含めた全社員で共有できるようになった効果は大きいという話を伺っています」(渡邉氏)
また、少数意見からトラブルの萌芽をいち早く捉える予兆分析にもテキストマイニングは活用されています。市場氏は「自動車業界でもSNSから、車の不備などの予兆を捉える取り組みが行われています。これを丸星の分析ビジネスに取り入れていこうというアイデアもあります」と話します。
VOC 分析で得たノウハウをマニュアル制作や翻訳業務に反映
今後丸星では、通信とセンサー技術を搭載した「コネクテッドカー」の導入に伴う様々な課題解決の他、マニュアルの音声ガイド化や翻訳業務にテキストマイニングを活用する計画です。
中尾氏は「マニュアルは、将来的にカーナビのように音声でガイドすることが想定されます。VextMinerのリコメンド機能はマニュアルの検索に近いアルゴリズムのため、音声ガイドに活用できると考えています」と展望します。
翻訳業務に関しては、機械翻訳の結果確認にテキストマイニング技術を応用して補完することを検討しています。
「機械翻訳が進化しても翻訳ミスは避けられません。テキストマイニングを応用することで翻訳結果を網羅的にチェックして信頼度を判定し、人間がチェックする領域を絞り込むことで翻訳の効率化が実現できると考えています」(市場氏)
中長期的な展望に関しては、自動車業界以外の分野にもテキストマイニングを活用した付加価値サービスを展開していく予定です。
丸星は、ドキュメントの効率的な制作や合理的なデータ管理の技術と経験を活かして、お客様を強力にサポートしていきます。
※ 本記事は、情報誌「MELTOPIA(No.236)」に掲載した内容を転載したものです。