埼玉県加須市に製造拠点を置く栄和プレス工業株式会社。同社は1987年から約30年にわたって利用してきたオフコンベースの生産管理システムを、株式会社三菱電機ビジネスシステム(MB)が販売・サポートする「Factory-ONE電脳工場MF」にリプレースしました。パッケージに移行したことにより、生産現場で受入入力や実績入力が行えるようになり、生産管理部門の業務が省力化されました。また、現場で発注、受注、在庫、生産計画などの情報が把握できるようになるなど工場内の可視化が進んでいます。
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システムの継続性を確保するためオープン化への移行を決断
1955年に創業した栄和プレス工業は、プレス金属加工を得意とし、電装部品のほか、農機具や小型船舶などのエンジン部品の製造を手がけています。自社内に金型部門を持ち、顧客の要望に迅速に対応するほか、生産ラインに最新鋭のプレス機を導入して生産効率を高めるとともに、各工程ではシーケンサを活用して自動化を進めています。近年は近県の樹脂メーカーとグループを形成して樹脂と金属を組み合わせたアッセンブリー製品を受託生産するなど、新たな付加価値を提供するビジネスにも取り組んでいます。
事業の基盤となる生産管理システムは、1987年に三菱電機のオフコンを導入して以来、約30年にわたって改善を重ねてきました。代表取締役の岡安成郎氏は「当社では、オフコンから抽出したデータを一旦データベース(SQLServer)に格納し、それを参照して現品票などを発行する自社開発の検査システム(Access)を運用しています。MBからオフコンに精通したSEが減少傾向にあるという話を聞き、生産管理システムのオープン化を進めるタイミングだと判断しました」と語ります。
30年にわたるサポート対応の実績と複数回に及ぶデモ実施を評価
栄和プレス工業は、メンテナンス性や将来性などを考慮してパッケージの導入を決断。約30年にわたって同社をサポートしてきたMBの提案を踏まえ、「電脳工場」の導入を決めました。岡安氏は次のように語ります。
「当初はパッケージにおける業務の流れがイメージできませんでした。そこでMBに複数回にわたってデモを実施していただき、理解を深めていきました。オフコンで使ってきた当社の図番を用いて、電脳工場に置き換えたときの受注、在庫管理、発注管理の流れを詳細に説明していただいたことで、リプレースに対する不安が払拭されました」
導入プロジェクトは2016年10月からスタートし、2017年8月に新たな生産管理システムが本稼働を迎えました。その後、オフコンと並行稼働しながら日次や月次の処理、棚卸の結果などを検証し、2018年1月から電脳工場に一本化しました。また、検査システムのプログラム修正を極力減らすため、当面はSQLServerを引き続き使用しますが、将来的にはAccessから電脳工場を直接参照する計画です。プロジェクトには、岡安氏をリーダーに各部門の業務担当者が参加。MBのSEと打ち合わせを重ねながら開発を進めました。「従来は各業務担当者が担当領域を着実にこなすことを重視していましたが、今回のリプレースでは、業務全体の流れをメンバー全員に理解してもらい、連携を深めることを重視しました」と岡安氏は語ります。
電脳工場の導入にあたっては、各図番に対して部品の材料から組み付けまでの「品目構成」を作る作業が新たに発生しました。この領域を担当した金型部門課長の福地康寿氏は「従来は担当業務である金型の設計・製造の範囲だけでしたが、プロジェクトを通して部品がどのような製造工程を経て完成するかを把握できました」と振り返ります。
また、得意先からの内示データをAccess経由で電脳工場に取り込めるようにインターフェースを作成し、生産計画がスムーズに立てられるようにしました。担当した品証部門(当時プレス部門)の横溝誠二氏は「得意先各社で形式が異なる内示データをAccessに取り込む機能を作る作業を通して、生産計画の流れが理解でき、自分自身のスキルアップにもつながりました」と話します。
検査システムとの連携により在庫管理の精度を大幅に向上
電脳工場の導入により、生産現場が在庫、生産計画、受注数、出荷予定など工場の全体像を把握できるようになりました。生産管理部門の遠藤禎也氏は次のように語ります。
「従来は検品を終えた完成品の個数をオフコンに入力するだけで完成品がどのようなフローを経て工場から出荷されるかあまり意識していませんでしたが、電脳工場の導入によって業務領域が広がり、上流の生産計画から下流の出荷まですべての工程を把握できるようになりました。それによって仕入先とのコミュニケーションが生まれたほか、業務全般に責任感が芽生え、自分自身が成長していることを実感しています」
生産現場で外注加工品や材料の受入入力を行うと、仕入データが自動的に生成されます。これによって生産管理部門で行っていた仕入入力の作業が不要になりました。従来1日2回、生産管理部門が入力していた実績情報も生産現場で即時入力することになり、実績とデータの差異もなくなっています。出荷入力についても電脳工場の一括入力機能を使うことで売上入力が完了し、大幅な業務効率化を実現しました。その結果、それまで対応できていなかった仕入先の登録作業などに時間を割けるようになり、さらなる効率化に向けて新しい一歩を踏み出すことができました。生産管理部門の高橋弘美氏は「生産現場での受入入力により、全体で2割程度の仕事量を削減できました。出荷入力も以前は2日に1回、約30分かけていましたが、現在は5分ほどで終了し、年間50時間の削減を実現しています。生産計画もペーパーレスで作成ができるようになり、納品書や受領書などの紙代も節約できました」と語ります。
さらに、検査システムと電脳工場の連携により、在庫管理業務が効率化されています。仕入先、得意先、出荷先マスターが取引先マスターとして統合されたことで検索も簡単になりました。
プレス機や自動倉庫と連携し工場全体のIT化を推進
電脳工場によって工場の見える化を実現した栄和プレス工業は、今後も業務フローを見直しながら効率化を図る方針です。岡安氏は「シーケンサを使って生産設備のデータを取得し、検査不良品の早期発見やトレーサビリティーの確保に活用したり、IoTでプレス機や自動倉庫を遠隔作動させたりすることも実現してみたい」と将来構想を語ります。
30年以上にわたり栄和プレス工業の生産管理システムを支え、電脳工場の導入にも深く関わったMBについては、利用者重視のきめ細かなサポート体制を評価。岡安氏は「これからも提案だけでなく、私どもの相談に本音で応えてほしい」と期待を寄せています。
栄和プレス工業は、「昨日より今日は一つスキルアップする」を理念に、チームワークでものづくりに取り組んでいきます。
- ※本記事は、情報誌「MELTOPIA(No.238)」に掲載した内容を転載したものです。