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製造業のデジタルトランスフォーメーション実現に向けてスマート工場化のノウハウを活かしたコンサルティングサービスの提供へ

2021年3月 | EXPERT INTERVIEW

2018年に経済産業省が「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」を発表して以来、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が飛び交っています。DXの波は製造業にも押し寄せているものの、多くの企業が表面的な取り組みに留まっているのが実情です。真のDXを実現するためには、ERPを起点にシステムの全体像を見つめ直し、基幹業務の変革から始めなければなりません。三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)は、20年以上にわたる製造業へのERP導入経験とそこで培ったコンサルティング力により、ERPデジタルコアの整備からデジタルデータのさらなる利活用へと進む2段階のDXを支援します。

三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社産業第一事業部 製造システム第二部 第一課シニアサーティファイドプロフェッショナル中塚 善之 氏

三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社
産業第一事業部 製造システム第二部 第一課
シニアサーティファイドプロフェッショナル
中塚 善之 氏

三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)

「なんちゃってDX」に留まる多くの日本企業デジタルコアとなるERPの整備がカギに

レガシーシステム脱却などの改革に後れを取りデジタル競争の敗者となるとした「2025年の崖」の警鐘により、多くの企業がDXに取り組んでいます。しかし、残念ながらその多くが部分最適に留まっているのが実情です。

基盤となるERPを整備することなく、RPA等のデジタル技術を使って一部の業務を自動化/省力化したり、分析ツールを導入して未来予測を行ったりと、全体最適化がされていないDX事例が数多く見られます。多くの企業にとってDXは初めてのチャレンジであり、試行錯誤が多くなることは仕方がありません。とはいえ、漫然と実現の可否を探るPoC(概念検証)を続けているだけでは、DXは実現できません」と20年以上にわたってERP導入を支援してきたMDIS産業第一事業部 製造システム第二部 第一課の中塚善之氏は語ります。

経済産業省は「DX推進ガイドライン」の中で、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。つまり、単なる「デジタル化」ではなく、業務や会社そのものをデジタル技術を使って「変容(トランスフォーム)」し、劇的な変化を遂げることが本来のDXの意味です。さらに中塚氏は次のように語ります。

「DXは基盤があってこそ成り立つもので、その基盤となるのがERPです。シンプルなERPでデジタルコアを構築し、その基盤上でAI、IoT、アナリティクスなどのアプリと連携させていく。そうしなければ、変化するビジネスに追従しながらイノベーションを起こすことはできません」

DXを実現するためには、最初に業務プロセスや意思決定のプロセスを見直し、シンプルなデータ活用基盤を構築することが必要です。

「これによって、『こうであろう』といった確度が低い予測から、データに基づく判断へとシフトすることができ、シミュレーションで精度を高めることも可能になります。これまで日次決算やリアルタイム経営、アジャイル経営のような先進的な経営手法が普及しなかった原因である大量データの扱いや処理性能に関わるテクノロジーの問題が解決して、経営判断に最新のデータを活用できるようになりました。」(中塚氏)

今のタイミングが思い切ったデジタルシフトの最後のチャンス

ERPをコアとしたデジタルシフトは、製造現場においても業務変革を促します。工場における生産性の可視化は、製造業の長年の課題でした。これまでも工場内の設備や機器からデータを取得している例はあったものの、多くは製造ラインごと、現場ごと、拠点ごとに個別運用されていました。そのため、様々な数字が乱立し、統一した基準で稼働率や不良率などを比べて判断することができませんでした。

ERPと連携するMES(製造実行システム)を含めた標準化によって、これまでブラックボックス化されていた製造現場の生産性を、世界標準の指標を用いて明確に定義し、指数化して共有することが可能になります。工場で発生するロス時間も、それが材料待ちなのか、作業指示待ちなのか、整備故障の問題なのかなど、項目を細分化して原因を特定し、生産性との関係を分析しながら改善につなげることができます。さらにそれらを体系化して事業全体に拡大することが可能です。

生産管理は納期、コスト、在庫、品質、稼働率など複合的に絡み合う事情があり、従来はデータ(事実)よりも現場判断が優先される傾向がありました。理論よりも直感のほうが、スピード感があったこともその理由です。データを駆使して収益性や流動性、生産性を考慮した最適解を求めるERPの効果は20年以上前から提唱されてきたことですが、リアルタイム性や情報共有のために、業務を標準化することに割り切ることができなったため、成功例は少数に留まっていました。

それがテクノロジーの進化やDX潮流、最近の社会変容によって戦略的なERPプロジェクトにシフトする事例が増えてきました。「変化を求めるなら、世の中のデジタル化が一気に加速したコロナ禍の今がチャンスです。このタイミングを逃がしたら、100年に一度の機会を失うことになります。withコロナ時代では、不確実性が従来以上に高くなるのは明らかで、ここでデジタル化に遅れたら、真のDXを推進するライバルとの差が周回遅れになるくらい大きくなることでしょう」(中塚氏)

スマート工場化の成功は思い込みを打破することが重要

製造業のDXに向けてスマート工場化を進めている三菱電機において、経営管理から基幹業務、製造現場とつながる垂直統合の中核技術であるERPとMES、及び関連業務改革支援の役割を担うMDISは、DXを2段階に分けて進めてきました。第1段階ではこれまでの基幹業務を見直してプロセスを改革し、コアとなるERPをシンプルな形で再構築しました。第2段階では、AIやIoTなどの新しいテクノロジーを導入したり、クラウドサービスなど第3のプラットフォームとの連携を進めています。

「最初から理想的なDXを進めることは難しく、まずは地道で泥臭い活動・プロジェクトから始めることになります。それはガラケーユーザーがスマートフォンに乗り換えることと同じで、土台となる道具から始めなければこれまでの混沌としたシステムから抜け出せずに、DXの恩恵を最大化できません」(中塚氏)

多くの製造現場では、システムが全体として体系化されないまま、断片化した仕事や個別システムを抱えています。スマート工場化のプロジェクトでは、その過去を見直し、データ・理論・本質を重視した意思決定にシフトしました。「スマート工場化の流れは黒船が来たようなもので、私たちも過去の思い込みを打破することが重要であることを学びました」と中塚氏は話します。

しかし、企業内でDXの雰囲気を醸成することは簡単ではありません。企業のIT投資を取り巻く環境は大きく変わっておらず、DXレポートで指摘されているように、日本企業のIT関連予算の80%は現行ビジネスの維持・運営(ラン・ザ・ビジネス)に割り当てられています。戦略的なIT投資が浸透していかない理由は、経営層の理解やIT部門の推進力不足、ユーザーの理解と共感という組織的なコンセンサスの問題、技術者不足などさまざまです。

これまでの10数年おきざりにされた根深い問題だからこそ、社会の変容と不確実性が高まるこの時期を好機と捉え、新しいテクノロジーをコアとしたデジタル改革にシフトすることが重要です。さらに注意が必要なのは、DXブームとPoCという方法論は何か新しいことを”やってる感”に満足してしまい近視眼的な取り組みに終わり迷走するリスクがあるということです。「便利なアプリが使えたり、省力化や自動化が進んだりすることは、効果が目に見えるだけにわかりやすいものですが、断片化、陳腐化に陥りやすい。デジタル化の本質はそこではなく、思い込みを打破し既存のビジネスモデルや業務を変革することにあります。そのためには現在の雰囲気を変えなければなりません。MDISでは三菱電機のスマート工場化で培ったノウハウで、結果を出す仕組み作りもお手伝いします」(中塚氏)

MDISは問題解決コンサルへとシフト
テンプレートや新技術でDXを支援へ

MDISは2001年4月の設立以来、システムインテグレーター(SI)として、お客様の大小様々なシステムの企画・設計・開発を支援してきました。しかし、社会変容が進み不確実性が高まる中、これからは「システムを作らない時代」が訪れようとしています。業務の標準化とクラウドシフトが進めば、システム開発ビジネスが縮小するのは必然的な流れで、MDISは問題解決コンサルティングを主体とするビジネスに注力しています。

「日本でERPの導入が本格化した20年前は数億円に達するプロジェクトが一般的にありました。MDISはそこで、テンプレートを活用した方法論を確立し、導入コストの低減や効率化に貢献してきました。これからも、製造業の現場や基幹業務に精通したプロフェッショナルの強みを活かして、製造業のお客様のDX化を支援していきます」(中塚氏)

  • 本記事は、三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社 中塚 善之 氏への取材に基づいて構成しています。

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