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モバイル&SNS時代における
企業ウェブサイトのあり方と最新のデザイントレンド

2018年12月|SPECIAL FOCUS

企業にとってウェブサイトは極めて重要な情報発信チャネルです。そのコンテンツやデザイン、ユーザービリティ(使い勝手)は、企業のブランドイメージを大きく左右します。近年、モバイルやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の普及により、ユーザーのインターネット上の行動様式は大きく変化しました。それに合わせて企業のウェブサイトはユーザーの行動に最適化することが求められます。ここでは、モバイル&SNS時代におけるウェブサイトのあり方と最新のデザイントレンドについて解説します。

見たいときに見たいものだけを見る
モバイル&SNS時代のユーザー

業種や製品・サービスのジャンルに関係なく、あらゆる企業にとってウェブサイトでの情報提供が重要になりました。ユーザーにとってウェブサイトはもはや企業そのものを象徴する存在であり、ウェブサイトの内容や印象が企業イメージを大きく左右します。

ウェブサイト閲覧に欠かせないインターネットはメディアであると同時に、テクノロジーの最前線にもなっています。テクノロジーの進化はメディアとしての特性を変化させます。そのスピードは従来のメディアとは比較になりません。情報発信を行う側はこの変化に対応して、素早く情報発信の内容や方法を変えていかなければなりません。

近年のインターネットの注目すべき動向としては、世界中でモバイル(スマートフォン)とSNSの普及・進展があります。

2018年現在、世界のインターネットトラフィック(通信量)は、パソコンよりもモバイルの方が多くなっています。特に新興国でこの傾向が強く、パソコンより先にスマートフォンが普及した国や地域では、インターネットトラフィックの多くがモバイルからになっています。(出典:Statcounter, “Desktop vs Mobilevs Tablet Market Share Worldwide”)

モバイルの普及と共に人々の間に浸透したのがSNSです。
Twitter、Facebookなどを世界中の人が利用しています。

このモバイルとSNSの浸透は、ネットユーザーの行動や志向を大きく変えました。ネットは極めてパーソナルなメディアになったのです。

モバイルとSNS時代のネットユーザーは、基本的に自分が見たい情報を、自分が見たいときにだけ見ることに慣れています。TwitterやFacebookなどのSNSは自分がフォローしているユーザーの情報のみが表示されます。ニュースアプリでは、ユーザーの嗜好に沿ったジャンルのニュースだけを受け取ることが可能です。新たに知りたい情報があれば検索でピンポイントに情報源にアクセスできます。映像や音楽も定額ストリーミングサービスで、好きなときに好きなものだけを楽しめます。

常に持ち歩けるモバイルデバイスでこうしたサービスを利用しているユーザーは、まさに見たい情報を見たいときに見られる環境にあります。加えて、SNSはユーザー自らが情報の発信者にもなります。見たい時に見るだけでなく、言いたいことを自由に言うこともできるのです。

コーポレートファーストから
コンテンツファーストな情報発信へ

このように、モバイルとSNSが普及し、大きくパーソナライズされた今のインターネットでは、情報発信者の都合を優先するのではなく、受信者に合わせることが重要になります。企業は、自らが発信しやすい情報やスタイルよりも、ユーザーが知りたい情報をユーザーが受けとりやすい(見やすい)スタイルで発信するように心がけるべきです。そのためには情報発信の考え方を、企業側の発想(コーポレートファースト)から、ユーザー側の発想(コンテンツファースト)へと切り替える必要があります。

コーポレートファーストな情報発信では、企業側が発信したい情報を企業側の作りたい方法で見せるだけにとどまってしまいます。例えば、カタログをそのまま掲載していたり、ウェブページが小さな字でびっしりと埋めつくされていたり、メニュー選択の繰り返しで見たい情報になかなかたどり着けないという状況は、従来の企業ウェブサイトによく見られる課題です。

これに対し、ユーザーの立場に立ったコンテンツファーストな情報発信は、ユーザーに喜ばれる形でコンテンツを提供するものです。欲しい情報やデータがきちんと用意されており、行きたい場所にたどり着きやすい、さらに、情報はデバイスに最適化されたフォーマットで表示される必要があります。

コーポレートファーストとコンテンツファースト

モバイル&SNS の時代には、今まで以上にユーザーに喜ばれる内容と形式での情報配信が求められる。

コンテンツファーストがもたらす
ウェブデザインの変化

こうしたユーザー本位の情報発信は、先進企業のウェブデザインで具現化されています。

一つはテキストメニューが並ぶ目次型のサイトから、サマリー型のサイトへの変化です。従来、企業サイトの多くはトップページにずらりとメニュー項目が並び、そこからさらに細分化された目次を経て、目的の記事にたどり着くまでほしい情報が得られませんでした。

これに対して、最近のウェブサイトでは下の階層にある情報の要点(サマリー)を上の階層にコンパクトに表示することで、下の階層に移動する前にある程度の内容が分かります。ニーズの高い情報はトップページからすぐにアクセスできるようになっています。表現についても、写真などのビジュアルやタイポグラフィを駆使して、メリハリがある、拾い読みしやすいデザインになっています。これにより、訪問したユーザーは欲しい情報を素早く得られるだけでなく、企業や製品が強く印象に残ります。

もう一つの変化が、ワンカラム+シングルページというシンプルなレイアウトの普及です。従来のウェブデザインの主流は、画面を縦に3カラムに分割し、中央にコンテンツ、左右にメニューやボタンを配したものでした。また、長い文章は複数のページに分けることを基本としていました。

今のトレンドは1カラムでコンテンツだけを見せるレイアウトが主流になっています。さらに、長いコンテンツでもページは分割せずに、一つのコンテンツは1ページで見せてしまいます。デバイスの性能向上や回線速度の向上に加えて、スマートフォンでは画面のボタンを押すよりもスクロールする方が楽なことが、こうした変化を生んでいるといえます。

ウェブデザインのトレンド

モバイルによる閲覧が増えたことで、ウェブデザインのトレンドが大きく変わった。

ユーザーの見たいコンテンツや使いやすいデザインを提供するうえで欠かせないのがアクセスログなどのデータ分析です。

ログを分析することで、自社コンテンツのどこにユーザーが興味を持っているのか、あるいは関心がないのかをある程度把握できます。その分析結果をもとにコンテンツを修正し、さらにアクセスログを分析するというPDCAを回すことで、ユーザー満足度の高いウェブサイトにすることができます。コンテンツやデザインの効果を情報発信者が自ら分析できる点こそが、ウェブサイトの最も革新的な部分といえます。企業が効果的な情報発信を続けるためには、コンテンツやデザインを改善し続ける仕組みの構築が重要になるでしょう。

三菱電機株式会社
宣伝部 ウェブサイト統括センター 専任
粕谷 俊彦 氏

広告会社でのコピーライター経験を経て三菱電機に入社。1990年代はパソコンや携帯の宣伝担当として、広告・カタログ・イベントなど製品プロモーション全般に携わる。2001年から公式サイト運営部門にて、様々なコンテンツやサービスの開発を進めてきた。2009年12月には独自開発したウェブサイトを冊子化する機能によって「第3回 企業ウェブグランプリ」でベストグランプリを受賞。直近は海外向けのサイト開発を主な業務としており、社外の専門家を集めたUX(User Experience)チームを率いて、ユーザーフレンドリーな情報発信プラットフォーム構築を推進している。

三菱電機株式会社