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デジタルインボイス活用推進で求められる中小企業への普及

2023年3月 | Expert interview

インボイス制度の施行を前に、企業はシステム改修や運用の見直しを行っています。それと並行してバックオフィス業務の効率化の手段としてデジタルインボイスに注目が集まっています。インボイス制度への対応状況やデジタルインボイスの動向について、三菱電機ITソリューションズ株式会社(MDSOL)ソリューション事業部 首都圏システムエンジニアリング第一部 第二課の関根大樹氏に伺いました。

三菱電機ITソリューションズ株式会社
ソリューション事業部
首都圏システムエンジニアリング第一部 第二課
関根 大樹 氏

2004年 株式会社三菱電機ビジネスシステム(現MDSOL)入社。北海道支店に配属後、仲卸業向け販売管理システムや飲食業向け店舗管理システムの設計・開発を担当。本社配属後は主にスクラッチシステムの開発に従事。2013年から「指南シリーズ」の設計・開発に参画、2019年より同パッケージの開発責任者に就任し現在に至る。

インボイス制度対応でポイントとなる取り引きの洗い出し

関根氏はMDSOLが提供する販売管理システム「販売指南」などの業務パッケージシステムの開発や保守を主に担当しています。ユーザー企業のインボイス制度対応の状況について、次のように語ります。

「販売指南のお客様は中小企業が多いこともあり、当初は『インボイス制度が始まるらしいが、いったい何をすればいいのですか?』という問い合わせが多くありました」一般的にパッケージシステムの法改正対応は本体のバージョンアップで行われます。しかし、販売管理システムのインボイス制度対応に関しては標準パッケージの改修だけでは対応が難しいといいます。

「販売指南では、ほとんどのお客様が標準パッケージをベースに請求書などを自社の求める仕様にカスタマイズしています。そのため、大多数のお客様のシステムに対して個別の改修が必要です」(関根氏)

独自システムを長年更新していないために対応に苦労する企業もあるといいます。

「独自開発したシステムを長年使い続けている会社では、当時の開発担当者が居なくなっているなどの理由で、更新しようとしても難しい場合があるようです」(関根氏)

ユーザーにとってはシステムだけでなく、運用面での対応が負担になっているといいます。

「お客様の作業でポイントとなることは取り引きの洗い出しです。取引先ごとに取り引きの内容や帳票などをすべて確認して、変更が必要な場合、どのように変えるのかを決める必要があります」(関根氏)

デジタルインボイスへの対応で手作業からの脱却を目指す

MDSOLでは、パッケージシステムのインボイス制度への対応と並行して、デジタルインボイスへの対応も進めています。

「インボイス制度だけに対応しても業務が効率化されるわけではありません。手作業のままではそれ以前よりも作業負荷が増えることになります。そこでインボイス制度対応の先にある選択肢として、請求業務からアナログな手作業をなくすデジタルインボイスへの対応を進めています」(関根氏)

2023年10月に、販売指南などのパッケージをPeppolネットワークを利用したデジタルインボイスのやりとりに対応させる計画です。Peppolは図3のような仕組みでインボイスデータのやりとりを行います。送受信はユーザーが手作業で行う必要はなく、販売管理や会計システムが自動的に行うことができます。Peppolの仕組みは電子メールとよく似ています。

図3:デジタルインボイスの利用イメージ

図3:デジタルインボイスの利用イメージ

Peppolユーザーは、アクセスポイントを経て、ネットワークに接続することで、Peppolネットワークに参加するすべてのユーザーとデジタルインボイスをやり取りすることができる。

電子メールは相手のメールアドレスさえ分かれば世界中の誰にでも送信できます。「Peppolも電子メール同様に、宛先が分かればPeppolネットワークに参加しているすべてのユーザーとインボイスデータのやりとりが可能です。国際標準仕様なので海外との取り引きも容易になります」(関根氏)

デジタルインボイスは会計システムとの連動が重要

関根氏はMDSOL の業務パッケージシステムのデジタルインボイス対応の開発にも参加しています。

「2023年10月には、販売指南と会計システムとの連動により、受け取ったデジタルインボイスに対しての自動振り込みや入金データからの売掛金の自動消し込みも可能になるように開発を進めています。銀行口座との連携には全銀EDIなどの仕組みを利用します」(関根氏)

販売管理システムと会計システムとの連動はデジタルインボイスを活用するうえでの重要なポイントだといいます。

「デジタルインボイスは請求に加えて、その後の自動支払や売掛金の自動消し込みまで行うことで、大きな生産性向上が実現できます。そのためには会計システムがデジタルインボイスに対応することが必要です。より多くの企業がこうした自動化を導入できるよう、連携が特定の販売管理システムと会計システムの組み合わせに限定されない、オープンで利用しやすい環境構築が求められます」(関根氏)

業界全体でデジタルインボイスに対応することが重要に

関根氏は日本でのデジタルインボイス普及に関して、国内企業の大多数を占める中小企業が参加するかどうかがカギを握っていると話します。

「デジタルインボイスは自社だけが導入しても意味がありません。取引先を含む業界全体がデジタルインボイスの活用に取り組むことが求められます。業界によっては大企業が中心となって普及を推進することができるでしょう。リーダー役となる大企業がいない業界では、業界全体が協力して導入を進める方法を見つける必要があります」

今後のシステム開発について、関根氏は次のように語ります。「これからのビジネス環境では、中小企業でもバックオフィス業務のデジタル化と自動化が必要になっていくでしょう。国もデジタル化を推進していますので、我々の提供するパッケージシステムがお客様のデジタル化に貢献できるように開発を進めていきたいと思います」