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Serendie Streetという共創の場から
新しいアイデアがどんどん生まれ、
成長し、具現化していく

2024年12月 | EXPERT INTERVIEW

三菱電機のデジタル基盤「Serendie®」には、事業領域を超えたデータ活用や人財の交流を促進し、今までにないサービスやソリューションを産み出すための様々な取り組みが行われています。ここでは、Serendieの構築を行っている三菱電機 DXイノベーションセンター プラットフォーム設計開発部 部長の水口武尚氏にSerendie構築の経緯、イノベーションを産み出すための工夫や狙いなどについて伺いました。

三菱電機株式会社
DXイノベーションセンター プラットフォーム設計開発部 部長
水口 武尚 氏

三菱電機 DXイノベーションセンター プラットフォーム設計開発部 部長。東京工業大学卒業、同大学院総合理工学研究科知能科学専攻修士課程修了。1993年三菱電機(株)入社。モバイル端末やカーマルチメディアシステムの新製品・新機能開発において、データ処理の高速化などのソフトウエア開発を経験。情報技術総合研究所 IoTシステム基盤技術部グループマネージャーとして、IoT/組込みシステム向け基盤ソフトウエアに関する研究を牽引。2023年より現職、Serendie技術基盤の開発・活用を推進。

三菱電機株式会社

Serendieは異なる事業領域が共通で使える場所

Serendieの構築を行っているDXイノベーションセンター(DIC)は、2023年に発足した新しい組織です。DICとSerendieの関係について水口氏は次のように語ります。

「DICは三菱電機がありたい姿として掲げる“循環型デジタル・エンジニアリング”への変革を推進するために設立されました。“循環型デジタル・エンジニアリング”を分かりやすくいえば、お客様に導入いただいたコンポーネントやシステムから得られるデータを分析して課題やニーズを把握し、そこから新しいサービスや機能を開発してお客様に還元するというサイクルを回すことです。設立以来、私たちはそのために必要な施策の検討と試行を重ね、その結果生まれたのがSerendieです」

Serendieの重要な役割が事業領域を跨いだサービスやソリューションの創出を容易にすることです。

「従来、異なる事業領域のシステムを連携する際は、例えばAシステムとBシステム、BシステムとCシステム、BシステムとDシステムといった組み合わせごとに個別の仕組みを作ってきました。今回、Serendieという共通の基盤ができたことで、それぞれのシステムがSerendieにつなぐだけで、他のシステムにも簡単に連携できるようになります。これにより三菱電機グループ全体で事業領域を跨いだサービスやソリューションの開発に取り組む機運を高めたいと思っています」(水口氏)

データ活用の起点として
コンポーネントの重要性がさらに高まる

Serendieのデータ分析基盤では、データを集約するデータプールや分析ソフトウエアにグローバルに定評あるサービスを採用しています(図)。

Serendie を実現する4つの技術基盤

「すでに世の中にある優れたサービスを積極的に使っていくことで基盤構築のスピードアップを図っています。業界で標準的に使われているものは今後も長く使われる可能性が高く、長期に安定した基盤を提供するうえでも有用です。採用したサービスはすでに社内のデータサイエンティストが使っているものですし、世界中のユーザーコミュニティによるノウハウの共有が盛んというメリットもあります」(水口氏)

三菱電機の各事業部門が提供する既存のソリューション(BLEnDer®、Ville-feuille®、Linova®、INFOPRISM®、e-F@ctory)とSerendieの関係については、次のように語ります。

「Serendieは既存のソリューションを置き換えるものではなく、各ソリューションからデータを集約し、データ分析やデジタルサービスを提供する基盤として位置づけています。各コンポーネントやシステムからデータを取得する部分はノウハウの塊ですから、一つの基盤で置き換えることは技術的に難しく、メリットもありません。また、デジタル基盤を作ったからといって、コンポーネント事業をおろそかにすることではありません。三菱電機の強みはハードウエアの存在です。ハードウエアがあるからこそ、そこにデータが生まれて、そのデータを活用することで改善のサイクルを回せます。むしろ、新しいデジタルサービスを作る起点としてのコンポーネントの重要性がより高まります」

一方で、DX人財の育成では“ものづくり”から“コトビジネス”へのマインドセットの変革が大切だと話します。

「Serendieで作りたいのは、継続して価値を提供する“コトビジネス”です。そのためには“プロダクト中心から顧客中心”へ、“ウォーターフォール開発からアジャイル開発”へ、“機器販売モデルからサービスモデル”へと発想や手法を変える必要があります。DICではそのために社内向けに様々なイベントを行うなどの啓蒙活動を行っています」(水口氏)

Serendie Streetというリアルな場から生まれた
鉄道向けデータ分析サービス

Serendieにおける最初のサービスである「鉄道向けデータ分析サービス」は、鉄道と電力という異なる領域の交わりから生まれました。その開発には、共創基盤であるSerendie Streetが大きな役割を果たしたといいます。横浜にあるSerendie Streetは多様な人財が実際に顔を合わせてデータを見ながら知見を共有し合う場として作られました。

「鉄道と電力のデータを組み合わせるというアイデアはこれまでにも存在しましたが、事業領域の壁もあって実現には至りませんでした。今回、Serendie Streetという共創の場ができたことで、電力系部門と交通系部門、DX部門、データサイエンティストが一緒に活動する機会ができました。すると、どんどんアイデアが生まれ、具現化して事業化が実現しました。Serendie Streetでは開放的な会議室で大画面を囲みながら大勢で議論ができるようになっています。それが効果を発揮するのを目にして、アイディエーションを行ううえでの“場”の重要性を実感しました」(水口氏)

2025年1月には二つ目のSerendie Streetが横浜アイマークプレイスにオープンします。

「2025年1月からは、Serendie Streetを社外のお客様にも公開する予定です。お客様向けにアジャイルやデータ分析などのイベントを開いたり、外部のパートナーやお客様も一緒に加わってプロジェクトを進められる場にしたいと考えています。イベントをきっかけとした交流によって自然とプロジェクトが生まれることもあるでしょう。一度来て終わりという一過性の場所ではなく、継続的にここに集まってアイデアを出し合い、試作が必要ならここで一緒に作ることもできる場所を目指しています。ご興味のある方はぜひお問い合わせいただきたいと思います」(水口氏)