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Withコロナ時代のビジネスで注目されるeシールとトラストサービスの概要

2020年12月 | Special focus

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、国内でもテレワークを導入する企業が大幅に増えました。テレワークの普及によって浮上した課題がビジネス文書の安全・確実なやりとりです。ネットワークを通じて安全に書類をやりとりするためには、発行元のなりすましや内容の改ざんを防ぐ仕組みが必要となります。その手段として注目されているのが”デジタル社印”とも称される「eシール」をはじめとするトラストサービスです。ここではeシールとトラストサービスの基本について解説します。

ビジネス文書の安全・確実なやりとりを実現するeシール

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、ビジネスのオンライン化や在宅でのテレワークが幅広く普及した年となりました。それに伴い、ビジネス文書の電子化も加速しています。社内文書だけでなく、請求書など外部とやりとりする文書についても電子化したいと考えている企業が増えています。

ここで問題となったのがハンコ(印章)の存在です。多くの企業は現在でも書類の正当性を示すために社印などのハンコを使用しています。普段はテレワークで業務を進められているのに、書類にハンコを押すためだけにウイルス感染のリスクを冒して出社しなければならない事態は、社会問題にもなりました。

対応策として、電子化した書類に画像として社印を貼り込む方法もあります。しかし、単に紙の書類を電子化しただけでは、セキュリティ上の脅威が増大してしまいます。電子文書は偽造や配布のコストが紙の書類よりもはるかに低く、架空の請求書などをメールで企業に大量に送りつけることも容易です。

今、社会がオンライン化やテレワーク化を一層推し進めるためには、電子メールなどで送られてきた電子文書が本当に取引先から発行されたものか、あるいは途中で改ざんされていないかを容易に検証・確認できる仕組みが必要となっています。

そして、ビジネス文書の安全・確実なやりとりを実現する手段のひとつとして注目されているのが「eシール」です。

Eシールはデジタル社印として文書の正当性を証明

eシールは電子証明書技術を用いて、文書が特定の法人によって作成され、かつ改ざんされていないことを検証できる仕組みです。

例えば、発行元の企業によってeシールが付与されたPDFなどを、Adobe Acrobat Reader等の電子署名に対応したアプリケーションで開くと、その文書が署名されていることが分かります。もし、証明書に問題があったり、内容が改ざんされたりしていれば、エラーや警告が表示されます。

eシールは、日本の商習慣で言えば請求書などに押される社印(角印)に相当します。社印の場合は人間の目視によって確認されますが、eシールは電子的な仕組みで確認することで、より効率的かつ確実に書類の正当性を検証できます。電子的な証明のためeシール自体に印影はありません。もちろん人間に分かりやすいよう、アプリケーション側でeシール付きの書類に印影を追加し表示することはあります。

ちなみにeシールの「シール(seal)」は、日本だとお菓子や雑誌のおまけで付いてくるシールを思い浮かべがちですが、英語の「seal」は「密閉する、封をする行為」という行為を指します。かつて欧米には送り主の紋章を浮き彫りにした蝋(ろう)で書簡を封印する「ワックスシーリング(wax sealing)」という習慣があり、これをイメージすると分かりやすいかもしれません。

個人ではなく組織に紐づけられるeシール

Eシールの基本的な仕組みは、すでに日本のビジネスでも使われている電子署名と同じです。電子署名との大きな違いは、電子署名は個人に紐づけられているのに対し、eシールは組織に紐づけられている点です。

企業の発行する書類に個人の電子署名を使用した場合には、担当者の異動や退職後に電子証明書の再発行手続きが必要になるほか、書類の正当性の検証作業が複雑となるなどの課題があります。

eシールであれば個人ではなく組織が認証の対象となります。特定の担当者や部署に縛られることなく、組織の発行する幅広い書類に付与することが可能です。ひとつのeシールを複数の社員や部署で使用できるほか、請求書発行システムなどにeシールの自動付与機能を追加することも可能です。

eシールによって電子請求書や電子領収書の正当性が確保されることで、事務処理の大幅な自動化・効率化が可能になります。2023年10月に導入が予定されている改正消費税法に基づく適格請求書等保存方式、いわゆる”消費税インボイス制度”においてもeシールを活用することが期待されています。

法的整備の検討が行われているeシールなどのトラストサービス

  • 電子署名

    電子文書を署名者が作成したことと署名後に改ざんされていないことを証明

  • タイムスタンプ

    電子文書がある時刻に存在し、その時刻以降に改ざんされていないことを証明

  • eデリバリー

    電子文書が送受信されたことを証明

  • モノの正当性の認証

    機器やセンサーの正当性、データが改ざんされていないことを証明

  • ウェブサイト認証

    ウェブサイトが正当な組織や人によって開設されたものかを証明

これらトラストサービスが社会で機能するためには法律的な裏付けが欠かせません。eシールが社会で幅広く使われるためにも法律の整備が必要となります。

EUでは2016年施行の「eIDAS(イーアイダス)規則」によってこれらのトラストサービスに法律的な効力を与え、サービスを提供する事業者の認定なども行っています。これにより、EU域内ではeシールによる正当性の証明に法的な効力があります。

日本では電子署名法によって電子署名に法的な効力が認められていますが、eシールについてはまだ法律の規定はありません(図1参照)。現在、総務省などが必要な法整備に向けて検討を進めています。

社会のデジタル化が進む中で、これらトラストサービスの重要性が高まっていくことは確実です。これからの企業が業務のデジタル化を推進するうえでは、トラストサービスを上手く使いこなして効率とセキュリティを両立させることが求められるでしょう。

  • 本記事は、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(MIND) の宮﨑洋光氏への取材に基づいて構成しています。

電子署名/eシール/タイムスタンプの違い

三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社
セキュリティ事業部 ジャパンネット部 第二課 エキスパート
宮﨑 洋光 氏

2006年三菱電機情報ネットワーク株式会社(MIND)入社。配属後、PKI(Public Key Infrastructure)技術をベースとした医療分野向けの電子認証サービスやネットワークサービスの企画・立上げ・運用を担当。現在は電子署名サービスやeシールなどを含めたトラストサービス事業全般を推進。