このページの本文へ

ここから本文

  1. Home
  2. 注目の技術・ITワード
  3. RPA(Robotic Process Automation)

RPA

Robotic Process Automation

マクロやクローラーもRPAの一種

RPA(Robotic Process Automation)とは、人間が日常的にパソコンを使って繰り返し行う定型作業をソフトウェアを使って自動化する取り組みのことです。身近な業務で例えるなら、請求書の入金状況をチェックして、入金が一定期間以上遅れている取引先に督促メールを送信するなど、業務遂行に専門的なスキルは要求されないものの、これまでは人間がやらざるを得なかった作業を自動化するものです。

どのような業種、職種であっても、人間がパソコンで一日に何度も繰り返し行う作業は意外と多いものです。一つ一つの作業の負荷は高くなくとも、月間、年間の累計作業時間に直すと、その作業に膨大な工数を費やしていることがわかります。誰がやっても同じ結果になる単純な作業を自動化することで、従業員の労働環境の改善や業務の効率化などの効果が期待できます。

定型作業の自動化と聞くと、マクロを連想する人も多いかもしれません。マクロとは、アプリケーション上で複数の操作を行えるようにする機能のことで、マイクロソフトの表計算ソフト「エクセル」のマクロが有名です。マクロは、VBAと呼ばれるプログラミング言語で書かれていて、ワードやパワーポイントなど他のアプリケーションの機能を呼び出す機能に加え、インターネット上のウェブサイトにアクセスして必要なデータを自動収集するなど、様々な機能を組み込むことができます。マクロは、古典的かつ代表的なRPAツールといえるでしょう。

また、インターネット上に公開されているウェブサイトを巡回して、必要なデータだけをコピーしたり、ダウンロードしたりするツールはウェブスクレイパー、あるいはクローラーと呼ばれるものがあります。例えば、企業がプレスリリースを公開しているサイトを定期的に巡回して、特定のキーワードがタイトルに含まれるプレスリリースをダウンロードするといった単純機能のクローラーは、2000年前後にはすでに実用化されていました。これらクローラーもRPAの一例といえます。

RPAで自動化に向いている業務とは

一般的なRPAツールは、大量のデータ処理を指定した手順に沿って効率よく処理してくれますが、状況に応じて判断するような人工知能的な機能は搭載されていません。よって、RPAツールに向いている業務としては、処理するデータ量が多く、1日何度も行う必要があり、人間の判断が要求されず誰が行っても同じ結果が得られるルーチンワークということになります。

例えば、大量のデータの中から特定の条件に合致するものを見つける作業の場合、目視で行うと一定の割合でミスが生じます。このようなデジタルデータの判別を行う作業はRPAが得意とするジャンルです。

初めてRPAツールを導入する際は、パッケージ化されているRPAツールを組み合わせて活用する企業が多いと思われます。日常業務において毎日パソコンで行うルーチンワークは、業種や職種が違えど、似たような作業も多いからです。

エクセルなど特定のアプリケーション内で完結する作業であればマクロが威力を発揮しますし、ウェブサイトにアクセスするなど複数のアプリケーションを横断的に操作するような場合は、それぞれの特性にあったプログラミング言語で書かれたRPAツールが適しています。複数のRPAツールを導入してみて、自社特有の業務プロセスをカバーできないと判断すれば、その部分だけを独自開発して補完することもできるでしょう。

RPA利用イメージ

RPA導入は金融業と製造業で先行

RPAをいち早く導入したのは金融業と製造業でした。人間が処理する事務作業が大量に残ったままになっていた銀行や証券会社、保険会社では、RPAツール導入の効果が表れやすかったからです。某銀行では、2017年から本格的にRPAを導入して、それまで人間が行っていた300万時間分の定型作業を自動化する成果をあげています。

製造業では、取引先から提供されるPOSデータや受注データの変換や並び替えに多くの人的リソースが使われていました。データのダウンロードから表計算ソフトでの処理まで、定型の単純作業をRPAで自動化することで、業務のスピードアップ、ヒューマンエラーの回避など多くのメリットを享受できています。

事務作業以外にも、工場やプラントの保守・点検にRPAを活用している事例があります。例えば、落雷など自然現象の影響を受けやすい工場では、担当者が気象データを定期的に確認していましたが、その作業をRPAによって自動化することができました。情報家電を製造する工場では、製品に組み入れるOSやアプリケーションの初期設定を手動で行わないといけないケースもありますが、このようなルーチン作業もRPAでほぼ自動化できた例もあります。

デジタルデータを活用して製造プロセス改善を目指す工場のことを「スマートファクトリー」と表現しますが、RPAもスマートファクトリーを実現するためのツールとして活用されていることがわかります。

RPAツールは民間企業だけではなく、地方自治体にも広く導入されつつあります。総務省が2022年1月に実施した「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」によると、2021年12月31日時点の自治体におけるRPA導入状況は、都道府県が91%、指定都市が95%でした。1年前の調査に比べて、都道府県は17ポイント、指定都市は30ポイントと大幅な伸びを示しています。その他の市区町村では29%の導入にとどまっていますが、実証中、導入予定、導入検討中を含めると約62%が導入に向けて取り組んでいます。

RPAはマーケティング自動化にも威力を発揮

RPAは、金融業と製造業以外にも、ほぼすべての業種で導入されています。どのような業種であっても、経理や総務などの事務部門は存在し、交通費精算のチェック、商談日報の整理、在庫状況の更新、公文書のダウンロードなど、数々のルーチンワークが存在するからです。

マーケティング分野においても、RPAとコンセプトが似ている「マーケティングオートメーション」と呼ばれるツールがあります。これは、顧客や見込み客の購買履歴、ウェブサイトでの行動履歴、メールマガジンへの反応などのデータに基づき、マーケティング活動を自動化するためのツールです。簡単な例で説明すると、過去に商品Aを購入した人に商品Bの割引クーポンをメールで一斉送信する、というルールさえ決めれば、その作業を自動的に処理してくれます。ルール通りにやれば誰でもできる作業ですが、自動化することで手間や時間を大幅に短縮するという目的はRPAと共通しています。

ウェブサイトを訪問してくれた見込み客にリアルタイムで対応することをウェブ接客と表現しますが、ウェブ接客においてもRPAの活用が可能です。例えば、入力された質問にチャットボットが対応する機能を組み込んだRPAを導入することで、対話式で効率よくフォームに必要事項を記入してもらえるようになります。さらに、入力されたデータを業務システムに登録し、利用者に内容確認メールを送信するまでの一貫した業務を自動化することができます。

地方自治体におけるAI・RPAの導入状況(RPA導入状況)

出典:総務省「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」

RPAはAIとの連携で仮想知的労働者に進化する

現時点でRPAツールとして市販されているものは、比較的汎用性の高いICT技術を使って現状のプロセスの一部を自動化・効率化する過渡的なソリューションです。現在の業務プロセスは、すべて人間が行うことを前提に構築されたものです。その業務プロセスを維持しつつ、自動化に適した一部の作業をRPAツールに代行させるのが現実的な考え方といえます。現状のプロセスがそのまま使えるということは、これまで人間が積み重ねてきたノウハウも継承できるので、現場の人には安心感もあるでしょう。

RPAツールは、AI(人工知能)の実用化が進むにつれて、大きく進化する可能性を秘めています。RPAを開発、販売する企業が中心になって設立された日本RPA協会は、RPAを「これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を、人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用して代行・代替する取り組み」と表現しています。ここでは、すでにAIや機械学習を活用することで、人間でないと対応できないと思われていた高度な作業までRPAが代行する未来像がはっきりと打ち出されています。

一般的にAIと表現される技術にも様々な種類があり、レベルにも大きな幅があります。すでにAIとの連携をうたったRPAツールも少なくありません。AI-OCRやチャットボットなどのツールがその一例としてあげられます。これらのツールはAI機能を取り込むことによって、特定の作業を効率的に自動化できていますが、AIとしてはまだまだ発展途上といえます。業務プロセスを理解して熟練スタッフのような高度な判断もできるようになった時には、もはやRPAではなく、仮想知的労働者(Digital Labor)と表現する方が適切かもしれません。

RPAを導入する際の注意点

将来的には、様々な業務がAIによって行われるようになると予測する調査結果もあります。野村総合研究所とイギリスのオックスフォード大学が2015年12月に公表した調査結果によると、10年から20年後には日本の労働人口の約49%が就いている職業においてAIやロボットによる代替が可能になるとのことです。日本RPA協会によると、2025年までに全世界で1億人以上の知的労働者、もしくは3分の1の仕事がRPAに置き換わると予測されています。

仮想知的労働者にまで進化したRPAは、現在の業務プロセスにおける効率化にとどまらず、人口減少による人手不足という社会問題の解決に寄与することが期待されます。いずれにしても、今後、RPAで自動化できる業務の範囲が広がっていくことは間違いありません。

RPA導入による自動化のメリットも大きくなりますが、導入する企業にとっては注意すべき点も増えます。RPAツールもプログラムの一種ですので、それを制御するOSのバージョンアップやシステム仕様変更の影響を受ける場合があります。社内の人間がトラブルに対応できないようなブラックボックスになることは避けるべきです。市販のツールであっても、それぞれの部署が五月雨的に導入するのではなく、自社のシステム部門と連携して、RPAツールを適正に管理できる仕組みを作ることが鍵となります。

また、高度なRPAの拙速な導入で業務プロセスが変化してしまい、逆に業務全体の効率が悪くなってしまうリスクも考慮しなければなりません。これまで積み重ねてきたノウハウを活かせる現状の業務プロセスにRPAツールを段階的に導入しながら、AIの活用を見越した新しい業務プロセスの模索を並行して行うことが重要です。

出典:野村総合研究所 2015年12月2日付プレスリリース「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」

関連リンク