防犯や防災をはじめ、業務の効率化やマーケティングなど幅広い用途で使われている三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(MIND)のネットワークカメラ用録画・配信サーバー「ネカ録」。近年、新たな用途として、金融業での内部統制強化や製造業でのトレーサビリティ強化に活用したいというニーズが増えてきました。そこでMINDは、ネカ録にPCの画面も一緒に録画することができる「PC画面キャプチャ機能」を追加した新モデルを2019年4月より出荷開始しました。
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「誰が・いつ・何をしたか」を知りたいユーザーの要望から開発がスタート
MINDが「PC画面キャプチャ機能」を開発したきっかけは、ユーザーからの要望にありました。あるお客様から「交通管制業務のエビデンス取得のためにPCの画面を録画したい」という要望が届いたのが始まりでした。また、金融業界のお客様からも「内部不正を監視するために従業員がPCをどのように操作しているかを録画したい」という要望が上がってきました。
「これらの声に応えるべく、2018年6月にプロジェクトを立ち上げました」とクラウドプラットフォーム事業部 プラットフォームソリューション部 技術第一課の渋谷尚亮氏は当時を振り返ります。
開発は、既存の技術やノウハウを活用できることが判明したため、比較的スムーズに進んだと言います。
「ネカ録はマルチベンダーのカメラに対応するために、以前からプロトコルテスト用のシミュレーションプログラムを作っており、この技術やノウハウがPC画面キャプチャ機能の開発に活用できることが分かりました。これにより、当初想定していた開発工数が大幅に短縮されました」(渋谷氏)
マウスポインターの録画要否、解像度、品質などの設定項目を独自のノウハウで決定
PC画面キャプチャ機能はシンプルな仕組みになっており、利用は簡単です。まず、画面を録画(キャプチャ)したいPCに「PCキャプチャ&配信プログラム」をインストールし、配信解像度、品質、マウスポインターの録画要否などを設定します。するとバックグラウンドでプログラムが動作し、ネットワークを介してPCの画面がネカ録に配信されます。
ネカ録ではPCから受信した映像を、設定しておいたフレームレート(1秒間に最大5フレーム)でカメラ映像とともに録画します。録画したカメラ映像とPCの画面映像は、監視用PC上のビューアーソフトを使って同時に再生することができます。
開発時には、画面を録画するPCの設定項目が検討されました。中でも、マウスポインターの画像の録画は不正監視の用途で使用されることを考えると、必須の機能でした。クラウドプラットフォーム事業部 プラットフォームソリューション部 技術第一課の江川真理子氏は次のように説明します。
「Windowsの標準仕様ではマウスポインターの画像は録画されません。そこでマウスポインターの座標を取得し、矢印画像を合成することでマウスポインターを録画できるようにしました」
配信解像度は接続しているモニターの解像度に合わせて最大4K(3840×2160ドット)からHVGAW(640×320ドット)まで設定できます。ただし、4KやフルHD(1920×1080ドット)などの高解像度に設定すると、精細な記録が残せる一方、データ容量が増えてしまうデメリットも抱えています。そこで、配信解像度をHD(1280×720ドット)やHVGAW(640×320ドット)などに変更できる機能や画像圧縮の品質を任意(90段階)に設定できる機能を用意しました。
「配信解像度の変更や細かい品質の設定を用意することで、お客様の事情に合わせて、画像の精細さや録画容量と録画期間のバランスを考えて設定できるよう配慮しています」と江川氏は語ります。
PC画面キャプチャ機能は、2019年4月1日以降に出荷された「ネカ録5」に標準搭載されています。それ以前に「ネカ録5」を購入されたお客様も、ネカ録をアップデートし、プログラムをダウンロード、インストールすれば追加料金なしでこの機能を利用できます。
金融業から製造業、データセンターまでネカ録のメリットを活用したユースケース
画面キャプチャ機能を利用した「ネカ録5」のユースケースを紹介します。
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【ケース1】金融業界向け内部統制強化
振込処理や入金処理などを担当する職員の行動をカメラで撮影するとともにPCの操作画面を一緒に録画することで、内部統制の強化に貢献します。
営業本部 ソリューション営業第三部 第一課課長代理の荻上晃宏氏は「内部統制の不備は企業の信頼と信用の低下を招き、企業価値の毀損につながる重大な問題です。ネカ録5は、カメラの映像とPCの画面を一緒に録画できるので、他人のIDとパスワードを不正に使った“なりすまし行為”の早期発見が可能です。PC操作を監視していることを意識させるだけでも、抑止効果が期待できます」と語ります。
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【ケース2】製造業向け製造ライン監視、トレーサビリティ強化
製造ラインでは、生産設備などのトラブルで短時間の停止や空転を繰り返すいわゆる「チョコ停」が大きな課題です。チョコ停が発生した際、製造ラインのログデータだけでは原因が特定できないことが多々あります。工場内に設置したカメラの映像と製造ラインの監視・制御用PCの画面を合わせて確認すると、作業員のミスによるものなのか、機器のトラブルなのかを早期に把握することができます。
「展示会でも“ログデータだけから原因を追及するのは難しいが、PCの画面とカメラの映像を合わせて見れば、原因究明のスピードが上がり品質向上にも貢献しそうだ”といった反響がありました」(荻上氏)
食品製造など、トレーサビリティや安全性が求められる現場でも、製造ラインをカメラで撮影するとともに、トレーサビリティシステムの管理画面を録画しておくと、製品不良が見つかった際に原因の早期究明につながります。
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【ケース3】データセンター向けセキュリティー強化
サーバールームの管理を外部のベンダーに委託している企業は多くありますが、過去には委託先の社員によって大量の個人情報を不正に持ち出される事件が発生しました。こうした際も、監視カメラとPCの画面を一緒に録画することで、セキュリティーレベルを高めることができます。
また、ネカ録PC画面キャプチャ機能は、監視カメラがなくても利用可能です。さまざまな状態を示すモニターが多く稼働する監視センターでも、モニター画面の録画・配信用途で利用が可能です。システムログだけでは把握が難しいシステム全体の状態を俯瞰する際に役立ちます。
ケース1~3の他にも個人情報を扱う行政機関やセキュリティー要件が厳しい現場など、多様な用途での利用が考えられます。MINDでは今後もお客様の要望に応えながらネカ録および画面キャプチャ機能を強化していく方針で、渋谷氏は「お客様にとってより使いやすいシステムに進化させていきます」と話します。