三菱電機ITソリューションズ株式会社(MDSOL)の調剤薬局様向け総合ITソリューションは、処方箋受付や服薬指導など保険薬局の幅広い業務をカバーするシステムです。近年、薬局業務の中心は調剤などの対物業務から服薬指導をはじめとする対人業務へとシフトしてきました。MDSOLではこうした変化に対応し、多彩なオプションを提供、患者サポートの充実と薬剤師・スタッフの負担軽減を実現しています。
目次
薬局業務の中心は“モノからヒトへ”と変化
調剤薬局は他の医療機関と同様に時代に合わせてその役割を少しずつ変えてきました。近年の薬局に求められる役割の変化について流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケア営業部 ヘルスケアソリューション営業第一課長の久保元一成氏は次のように語ります。
「2015年に厚生労働省が『患者のための薬局ビジョン』を策定したことで、薬剤師の業務は調剤のような対物業務から服薬指導などの対人業務重視へと大きくシフトしました。さらに、かかりつけ薬剤師の制度化が推進され、2020年秋の薬機法改正では服用期間中のフォローアップが義務化されました。こうした背景から薬局の業務領域は拡大の一途をたどっています。薬局・薬剤師への期待が高まる一方、人間にできることには限界がありますのでICTシステムによるサポートが必要となっています」
患者に応じた服薬指導をアシストする服薬指導ガイド(SY-POS2)
対人業務の中でも重要なことが患者への服薬指導と薬歴の作成です。しっかりした服薬指導を行うには、薬剤や患者特性など様々な情報をもとに患者に指導すべき内容を整理する必要があります。また薬歴は服薬指導や継続的なフォローアップを行ううえで重要な情報となります。
MDSOLの「服薬指導ガイド」は、「調剤Melphin/DUO(メルフィン・デュオ)」上で、よりきめ細かな服薬指導と効率的な薬歴作成をアシストするシステムです。開発リーダーを務めた流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケアソリューション部 ヘルスケアソリューション第一課の谷口智昭氏は開発の背景を次のように語ります。
「薬局が対人業務を強化しようとしても、現場の薬剤師は忙しくて時間が足りないのが現状です。薬剤師は患者に合わせた服薬指導を考えることや、指導した結果を薬歴として記録する作業に多くの時間を費やしています。そこで、この部分をシステム側でサポートしたいと考えました」
服薬指導ガイドでは、患者特記、併用薬、処方内容、過去の薬歴といった情報をもとに、薬剤師が指導・確認すべき項目を自動的に抽出、提案します。提案内容は処方時期によっても変わり、例えば初回処方では服用の仕方、2回目では副作用の有無の確認が提案されます。指導内容の基礎となる服薬指導支援テンプレート「SY-POS2」は、北海道科学大学 早川達名誉教授の監修のもとで作成され、内容は随時アップデートされます。このテンプレートを活用し、MDSOLが独自に製品化したものが「服薬指導ガイド」です。
「従来は指導内容を決めるために薬剤師が添付文書などを調べる必要がありました。服薬指導ガイドを使うことで薬剤と患者特性をマッチングして服薬指導に必要な情報を表示することができます」(谷口氏)
指導後は画面上で服薬指導を行った項目にチェックを付けるだけで自動的に薬歴が作成されます。追加の情報があればキーボードから入力することもできます。薬歴は医療情報の標準であるSOAP※1形式で入力されます。
開発では、効率だけでなく指導と薬歴の内容を充実させることを重視したと谷口氏は話します。
「電子薬歴は入力効率を重視した製品が多いのですが、MDSOLではしっかりした服薬指導と薬歴作成ができたうえで、効率化することをコンセプトにしました」
実際に使用した薬局では、全体の8割以上の薬歴が2分以内で作成できたという結果が出ています。これは従来の約半分になります。
「SOAP形式での薬歴作成に不慣れな薬剤師だけでなく、キーボード入力が苦手なベテランにも好評でした。また、ソフトの指導提案によって新たに気づきを得たという声もいただきました」(谷口氏)
また、Melphin/DUOの入力作業を効率化するオプションとしては株式会社mediLabが提供する「mediLab AI」※2もあります。これは処方箋の画像を読み取って自動入力するOCRソフトです。AIを活用することで処方箋フォーマットの登録が不要、用法の表現の違いもAIが自動的に判断して変換してくれるなどユニークな特長を備えています。
- 1 SOAP:S:Subjective=主観的情報、O:Objective=客観的情報、A:Assessment=分析・評価、P:Plan=計画の頭文字を取ったもの。服薬指導時の記録形式の一つ。
- 2 mediLab AIは株式会社mediLabの製品です。
継続的な副作用指導と早期発見を支援m-SPEHEC※3との連携
調剤薬局様向け総合ITソリューションには、医薬品の副作用の早期発見・早期対応を支援する「m-SPEHEC(スピーク)」との連携オプションも用意されています。
株式会社マディアが提供するm-SPEHECはPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)医薬品副作用データベースの情報をもとに、服用期間に応じて最も注意すべき副作用と主な症状を表示するシステムです。
本オプションを利用することでMelphin/DUOの画面上でm-SPEHECによる副作用情報が表示されるだけでなく、指導内容をワンタッチで薬歴へ記入することも可能です。
流通・ヘルスケア事業部 ヘルスケア営業部プロモーショングループマネージャーの水島茂雄氏はm-SPEHECとの連携オプションについて以下のように語ります。「PMDAの医薬品副作用データベースは、実際の医療現場から報告された副作用が記録されており、とても有用です。すでに利用している薬剤師からは『もうこの機能なしには怖くて処方できない』とおっしゃる方もいるほどです」
2021年1月からは、65歳以上の高齢者に特有の注意を喚起する「シニアアラート」機能が加わったほか、副作用の連鎖によって薬が増え続ける「処方カスケード」の検出機能なども追加されています。
- 3 m-SPEHECは株式会社マディアの製品です
オンライン服薬指導などかかりつけ薬局化をアプリで支援
患者の服用状況を継続フォローするためには、薬局・薬剤師の“かかりつけ化”が求められます。Melphin/DUOは、メドピア株式会社が提供する、スマートフォンを利用したかかりつけ薬局化支援サービス「kakari(カカリ)」※4との連携により、薬剤師と患者のより円滑なコミュニケーションを可能にします。
kakariはスマートフォンのカメラで処方箋を撮影して事前に薬局に送信できるほか、電子お薬手帳、チャットでの相談、さらにはビデオ通話を使ったオンライン服薬指導など多彩な機能を提供しています。
「新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにオンライン服薬指導の条件が緩和され、現在は初診からオンラインで指導できるようになりました。また、数ヵ月後に発現するような副作用についてもチャット機能を利用することで、遠隔で注意喚起を行うことができます。患者さんと薬剤師を密に繋げるツールといえます」(水島氏)
このkakariはMelphin/DUOと同じ端末から利用することができるほか、2021年8月からはMelphin/DUOとkakariのデータ連携も可能になりました。服用期間中のフォローアップ予定~結果入力を相互に連携することで、さらなる利便性向上を図ります。
久保元氏は今後の展開について次のように語ります。「服薬指導ガイドのような独自開発の製品を提供するとともに、mediLab AI、m-SPEHEC、kakariのような他社の優れた製品・サービスと連携することで、ますます変化が激しくなる調剤薬局業界に対し、これまで以上に早く、広く、より高い付加価値をお客様に提供していきます」
- 4 kakariはメドピア株式会社の製品です。