三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(MIND)の「ネカ録」は、ネットワークカメラ用の録画·配信サーバーです。ネカ録を使用することで多数のカメラ映像の録画や視聴を一元管理することが可能です。2005年の登場以来、ネカ録は基本性能の向上と先進的な機能の提供により、ネットワークカメラの応用範囲を広げてきました。ここでは進化の歴史を中心にネカ録の魅力を紹介します。
目次
様々なメーカーのカメラに対応した画期的なシステムとして登場
ネカ録は、2005年に業界初※の一体型ネットワークカメラ用録画・配信サーバーとして登場しました。ネカ録の発案者であるクラウドプラットフォーム事業部 プラットフォームソリューション部 管理課 シニアアドバイザーの坂本顕男氏は、当時の監視カメラ市場の状況を以下のように振り返ります。
「2000年以前の監視カメラは、アナログ接続のカメラと録画機を組み合わせたものが一般的でした。その後、ネットワークにつながるカメラが登場し、遠隔監視が可能になりました。今後は間違いなくネットワークカメラの時代が来るはずだと考え、ネットワークカメラ対応の録画・配信機の開発に着手しました」
ネカ録の第一号機である「NS-1000」のユニークな特長が、様々なメーカーのカメラを接続できるオープンな設計でした。
「従来はカメラメーカーごとに異なる専用のレコーダーが必要でした。そのため、お客様はカメラの選択肢が限られていました。そこで、ネカ録では様々なメーカーのカメラを接続できるようにして、適材適所で最適なカメラを使いたいというお客様のニーズに応えることを考えました」
NS-1000は多様なカメラをサポートした業界初のハード・ソフト一体型の製品でした。ネカ録シリーズはハード・ソフト一体型とすることで導入の容易性と高い信頼性を実現しています。
「NS-1000は様々なメーカーのカメラを接続できるマルチベンダー対応や接続できるカメラ数の多さなどが多くのお客様から高く評価されました」(坂本氏)
画期的な製品としてデビューしたネカ録は、バージョンアップを繰り返しながら機能と用途を拡大してきました。
バージョンアップで先進的な機能をいち早く搭載
ネカ録は世代を重ねるごとに画質や接続できるカメラの台数、録画時間といった基本性能の強化に加え、先進的な機能をいち早く搭載してきました。
2007年に登場した「ネカ録2.0」では、ネカ録本体の録画データを遠隔でバックアップできるセンター集中バックアップ機能を搭載しました。これにより録画データの長期保存が求められる銀行のATM監視システムに採用されるなど、高信頼性の録画システムとしての地位を確立しました。
2013年発売の「ネカ録4.0」からは、自社開発・自社生産のハードウエアを採用、信頼性をさらに向上させました。
「自社開発では、目的に合わせて設計や部品を最適化できるので、外部から調達するよりも信頼性が大きく高まります」(坂本氏)
自社設計ならではのユニークな機種が「NS-850」です。NS-850は記録装置としてSSDを採用し、大幅な小型化と優れた耐環境性を実現しています。本体に直接モニターとマウス・キーボードを接続して、PCレスでライブ映像の表示や録画映像の再生が可能です。従来は難しかった狭小、高温、振動、塵埃といった厳しい環境下にも設置できます。
再配信機能を搭載 映像解析システムとの連携で用途を大幅に拡大
ネカ録の応用範囲を大きく広げるきっかけとなったのが2017年に発売された「ネカ録5」に搭載された再配信機能です。この機能を使うことで、ネカ録で収集した映像を外部の映像解析システムなどに渡すことが可能になりました。ネカ録のソフトウエア開発を担当するクラウドプラットフォーム事業部 プラットフォームソリューション部技術第一課 担当課長の渡辺和也氏は、再配信機能および他システムとの連携について次のように語ります。
「それまでのネカ録は監視カメラの映像を表示し、録画・再生するという用途が主でした。ネカ録5からは映像解析など外部システムとの連携が容易になり、用途が大きく広がりました。再配信機能を使うと、外部の映像解析システムからはネカ録がひとつのカメラのように扱えます。カメラメーカーごとに異なる規格や仕様の違いをネカ録が吸収するので、映像解析システム側にも大きなメリットがあります」
外部システムとの連携によって広がった用途として坂本氏はマーケティング分野を挙げます。
「映像解析の用途としては、例えば店舗の来店者の分析があります。映像解析によって性別や年齢といった属性ごとに人数を集計することもできます」(坂本氏)
2019年に加わったPC画面のキャプチャー機能も新たな用途を生み出しました。
「PC画面のキャプチャー機能は、例えば工場のシーケンサデータの表示画面の記録に使われます。製造現場の機械や設備を監視しているカメラの映像と、シーケンサの画面の両方を記録しておき、異常発生時に両者を連携して表示することで速やかな原因究明に生かされています。そのほか、エンジニアによるメンテナンス作業や金融機関の入出金操作の画面を記録して、何か問題が起きた時に誤操作や不正の有無を確認する用途などに利用可能です」(坂本氏)
プラグイン対応でよりきめ細かなニーズに素早く対応可能
2021年の最新モデルでは、ネカ録の機能を拡張するプラグイン機能が搭載されました。
「プラグイン機能に対応したことで、ネカ録の機能を容易に拡張できるようになりました。標準で提供しているプラグインとしては、カメラ本体の映像解析機能との連携があります。例えば最近のカメラには映っている人の数を数える機能を備えたものがあります。そのデータをネカ録で取り込んでデータベース化し、設定した条件でアラートを出すことができます。ほかにも、センサー入力をトリガーにした記録映像の自動切り出しなど、お客様からは様々な要望があります。今後、プラグインを充実させることで、こうしたニーズにも応えていきます」(渡辺氏)
「AIカメラとの連携は、人の密集を防止したり、1人での入室や作業を禁じられている場所の監視など様々な用途があります。今後、カメラやサーバーの認識機能がさらに高まることで、認識したデータの収集と活用が重要な機能になってくると思います」(坂本氏)
今後のネカ録の開発について、渡辺氏はレコーダーとしての基本機能の充実や、他社ソリューションとの連携強化、プラグインの充実に加えて、クラウドとの連携を挙げました。
「今のネカ録は基本的にはローカルでの運用が中心になっていますが、これからはより高度な映像解析などクラウド上のサービスとの連携が求められると思います。十分なセキュリティーを担保したうえで、ネカ録とクラウドを連携させることで、ネカ録が取り込んだ映像やデータの活用範囲をさらに広げることが可能になります。このようなシステムの開発を、今、進めています。今後も安心・安全、便利な社会の実現を目指して、ネカ録を進化させていきます」
- ※一体型ネットワークカメラ用録画・配信サーバーにおいて。2005年2月 MIND調べ。
- ※本記事は、情報誌「MELTOPIA(No.261)」に掲載した内容を転載したものです。