三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社(MDIS)が企画・運営する「DX人材育成アカデミー」が、三菱電機株式会社 インフォメーションシステム事業推進本部およびグループ会社のデジタルトランスフォーメーション(DX)人材の育成の場として2021年10月に設立されました。アカデミーはセキュリティ、データサイエンス、デザインアプローチの3分野で構成されており、高度なITスキルとビジネスセンスを備え、超上流からお客様とビジネスの新しい価値を共創できる人材を育成しています。
目次
DX時代に求められるお客様とビジネスを共創していける人材
DX人材育成アカデミー創設の背景について、校長を務めるMDIS デジタルトランスフォーメーション事業推進センター ビジネスイノベーション推進部 次長の須藤純吾氏は以下のように語ります。
「DXを推進することは、既存のビジネスプロセスの効率化にとどまらず、プロセスや経営モデルそのものを変えていくことです。これに取り組む人材には、高度な専門知識に加え、広い視野で物事を捉え、お客様と一緒にビジネスの新しい価値を創造する『共創』の力が求められます。ITサービス業としてDXに取り組む上では、こうした人材を継続的に育てていくフレームワークが必要だと考えて本アカデミーを設立しました。創設時にセキュリティ、データサイエンス、デザインアプローチの3分野にした理由は、DXを実現する上で重要なファクターであるとともに、MDISが得意とする分野だからです」
講座とコミュニティの両輪で実践的な能力を備えた人材を育成
同アカデミーの特徴は、専門知識を学ぶ講座と専門家同士が情報共有を行うコミュニティ活動の2つを組み合わせている点です。
アカデミーの参加者は、各分野の専門講座を受講し必要となる知識を習得します。さらに専門家の集まるコミュニティに参加し、メンバーとの交流や情報共有を通じて実践的な能力を身につけていきます。
コミュニティには、組織や職種の垣根を越えてインフォメーションシステム事業推進本部およびグループ会社、三菱電機の本社・研究所等から様々なメンバーが集まっています。交流によって座学では習得できない、実務を通じた知見やノウハウ、異なる立場からの視点などを学びあうことができます。
個人が有する資格と能力を見える化した独自のスキルマップでモチベーションを向上
MDISではスキルレベルの見える化の面でもDX人材をサポートしています。アカデミー事務局のMDIS総務部 人材育成課 課長の大見由紀人氏は次のように語ります。
「当社ではITスキル標準(ITSS)※に、DXで求められる要素を追加した独自のスキルマップを作っています。これは”MDISプロフェッショナル認定制度”として、情報処理学会(CITP)に認定されています。
また、個人が有する資格と能力の見える化を行っています。当社HRMポータルでは”ダッシュボード”を使い、自分の保有資格は何か、既受講講座は何か、自分のITSSレベルに応じてどのような講座を受講したらよいかを簡単に見られるようになっています。
自分の客観的な人材レベルを常に把握できることは学びのモチベーション向上につながります。こうしたノウハウをグループ会社でも活かせるような提言をして行きたいと考えています」
セキュリティ分野:アカデミーのモデルとなったコミュニティを継承
講座とコミュニティを両輪とするフレームワークは、2018年に発足した「セキュリティスペシャリストコミュニティ」(セキスペコミュニティ)がモデルとなっています。セキュリティ分野のリーダーを兼任する須藤氏は、次のようにこれまでの成果を振り返ります。
「セキスペコミュニティはセキュリティの高度人材育成を目的として設立され、定期勉強会、資格試験対策、コミュニティサイトでの情報共有、独自のサイバーセキュリティハンドブック作成など活発な活動を続けてきました。世間のセキュリティニュースを題材に論点を纏める総括力も強化しています。DX人材アカデミーは、セキスペコミュニティで培った設立・運営ノウハウを継承したものです」
アカデミーの事務局で、アカデミー立上げを推進したMDISビジネスイノベーション推進部 部長の井上竜彦氏は以下のように語ります。
「セキスペコミュニティの仕組みは大変うまく機能しており、今ではセキュリティ人材を育成する場として定着しています。講座+コミュニティという仕組みの成功事例があったことで、アカデミーでは3つの専門分野をスムーズに立ち上げることができました」
データサイエンス分野:データの利活用で重要となる専門家同士の情報共有
データサイエンス分野の活動についてリーダーを務めるMDISビジネスイノベーション推進部 第三課長の田口進也氏は次のように語ります。
「DXの肝はデータの利活用にあります。様々なデータを収集してどのように業務を効率化できるか、新しいビジネス価値を創出するか、この2つの視点を持って活動しています」
参加者からは”こういう場が欲しかった”という声が寄せられています。
「データサイエンスの分野はとても幅広く、各専門に特化しているので、一人でできることには限りがあります。そのため、事例や技術などの情報を共有できる場があることは非常に重要です。お客様からの”データを使って何かやりたい”といった抽象的なご要望に対しても的確な提案を行うセンスを磨くためにコミュニティが役立つと考えています。参加者にはKaggleコンペティションのメダリストもいます」
デザインアプローチ分野:顧客の本当に必要なものを見いだす人材を育成
デザインアプローチは、あるべき理想の姿を描いてから現実的な解に落とし込んでいく開発手法です。新たな価値創出に有効とされ、DX推進の手法として注目されています。
デザインアプローチ分野のリーダーを務めるMDIS技術統括部 技術部 デザイン課 課長の米沢みどり氏は活動の方向性を次のように語ります。
「アカデミーでは、決まった要件のものを作るだけでなく、潜在的なニーズも含めてお客様が本当に必要としているものとは何かを考えて、提案できる人材の育成を目指しています。これまでも他部門の方にデザインマインドを持つための研修プログラムを提供してきました。アカデミーでは、期間や内容により多くのバリエーションを持たせたいと思います。お客様の立場に立ち、まず理想像を作り、現実に落とし込んでいくという姿勢を持っているだけでビジネスの可能性が広がります。コミュニティを通じて日頃から情報共有を行うことで、より高度なデザインアプローチが必要であれば、適切な専門家を選びサポートしていくことができます」
継続的な人材育成の場として進化を続けていく
アカデミーの長期的な展望について井上氏は次のように語ります。
「技術や市場の変化に合わせてアカデミー自身も変わり続けることが必要です。この先、技術や市場の変化によって分野の追加や統合を検討して行く仕組みができています。将来的には三菱電機及びグループ会社がお客様に信頼される土台として、このアカデミーがあってほしいと考えています」
- ※経済産業省が定めた、情報サービスの提供に必要な実務能力を明確化、体系化した指標
- ※本記事は、情報誌「MELTOPIA(No.261)」に掲載した内容を転載したものです。
三菱電機株式会社
ネットワーク株式会社
専務執行役 インフォメーションシステム事業推進本部長織戸 浩一 氏
総合電機メーカーの強みを生かし、「超上流指向」の人材を育成していきます
三菱電機グループは、これからのDXで必要となるシステム構築の構想段階からお客様と共創し、提案やアドバイスを行える「超上流指向」の人材育成を強化して参ります。製造業は技術開発に投資しますが、IT・サービス業は人材育成に同等以上の投資をするという考えです。総合電機メーカーの強みを生かし、セキスペコミュニティのような「コミュニティ」を通じた横のつながりを有効活用していきます。この結果、お客様に対し、高度な知識・実践力を持つSE能力、それにより生まれるソリューション・サービスを提供して参ります。