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  3. 介護AI 記録分析ツール「けあらぽ」、介護AI 入力予測ツール「記録NAVI」

高齢化が進む日本において介護サービスの充実は喫緊の課題です。介護現場では、生産性向上とともに「介護サービスの質の向上」が求められ、その実現にはITの活用が欠かせません。三菱電機ITソリューションズ株式会社(MDSOL)の「けあらぽ」は、AIが介護記録を分析し利用者の自立度の変化をグラフで表示するシステムです。利用者の状態を一目で確認できるようにすることで、早期の事故防止対策や介護職員間での情報共有を促進します。

三菱電機ITソリューションズ株式会社 流通・ヘルスケア事業部 ライフサポート営業部 長井上 武志 氏三菱電機ITソリューションズ株式会社 流通・ヘルスケア事業部 ライフサポートソリューション部 ライフサポートソリューション課 豊川 絢也 氏

三菱電機ITソリューションズ株式会社 流通・ヘルスケア事業部 ライフサポート営業部 長井上 武志 氏
三菱電機ITソリューションズ株式会社 流通・ヘルスケア事業部 ライフサポートソリューション部 ライフサポートソリューション課 豊川 絢也 氏

2025年問題への対応にはITの活用が不可欠

いわゆる"団塊の世代"が後期高齢者(75歳)の年齢に達し、医療や介護などの社会保障費が急増する「2025年問題」が懸念されています。また、現在すでに慢性的な人材不足に悩む介護現場ですが、さらに人手不足が深刻化することが予想されています。

このような介護業界を取り巻く課題に対して、MDSOL流通・ヘルスケア事業部ライフサポート営業部長の井上武志氏は、ITの活用が不可欠になると語ります。

「2025年問題に対応するうえで、介護現場で生産性向上が強く求められています。IT技術を駆使し、介護記録などの間接業務を効率化し、介護職員が利用者のケアなどの直接業務に専念できる環境を作っていくことが必要です。MDSOLは、MELFARE(メルフェア)というブランドで長年、介護サービスのバックオフィス業務(請求・人事給与・勤怠・会計など)の効率化を支援してきました。最近では、これに加えてより介護の現場に近い業務を支援するツールの開発・販売も行っています」

利用者の状態悪化を見逃さず防げる事故を防ぎたいという現場の声

実際の介護の現場ではITによるどのような支援が求められているのでしょうか。MDSOL流通・ヘルスケア事業部ライフサポートソリューション部ライフサポートソリューション課の豊川絢也氏は、現場では利用者の事故防止につながるような仕組みが求められていると話します。

「転倒などの事故が起きるかもしれないという懸念は、介護職員への大きなプレッシャーとなっています。事前に何らかの兆候がある場合には、それを見つけて対策を取ることで事故を防ぐことができます」

事故を防ぐためには、利用者の状態変化を素早く捉えて、介護職員間で情報共有する仕組みが必要です。そこで注目したのが介護記録の活用でした。

「介護施設では、全利用者の状態が介護記録に詳細に記述されています。蓄積した介護記録を使って、事故や病気の兆候が見つけられないかというお客様からのご要望をきっかけに、『けあらぽ』の開発に着手しました」(井上氏)

介護記録の文章をAIが分析して利用者の状態変化をグラフ化

「けあらぽ」は、防げる事故を防ぎたいという介護現場のニーズに呼応してMDSOLが開発したAI記録分析ツールです。毎日の介護記録を分析して、利用者一人ひとりの状態(自立度)の変化を分かりやすいグラフにします。

「けあらぽ」に搭載されたAIは、介護記録の文章から利用者の自立度に関わる記述を抽出、分析してADL(日常生活動作)の評価値へと変換します。ADLの指標には業界標準となりつつある「バーセルインデックス(BI)」の10項目を採用しています。

例えば「ベッドから車いすへの移乗は、全介助にて行った。」という文章があれば、AIはBIの「移乗」に関する記述だと判断し、そこに書かれた表現や数値に合わせて点数化します。評価結果は自立度の総合評価であるBI値と項目ごとの値が時系列でグラフ表示されます。(図参照)

介護職員はグラフを見るだけで、最新の介護記録に基づいた利用者の状態変化を一目で把握できます。多くの介護施設では、ひとりの利用者を大勢の介護職員が交代で担当します。利用者の状態変化を可視化することで、チームでの介護がスムーズに行えます。

「グラフを見て“最近食事の点数が落ちている”、“歩行の点数が落ちている”といった変化に気付けば、原因を探るなど予防策を講じたり、状態に合った適切なケアを早期に実施したりすることができます。一般的に、介護施設では利用者の状態を定期的な会議や日々の申し送りなどで共有します。ただ、担当者が気付いたことを報告する形式では、どうしても内容に個人差や抜け落ちてしまう情報が出てきます。『けあらぽ』のようにデータに基づいた数値で状態を可視化することで、会議や申し送りだけでは把握しきれない利用者の状態変化も発見できます」(豊川氏)

MDSOLでは、AI分析の精度を評価するため、介護施設の専門職の方によるADL評価と「けあらぽ」による評価の比較を行いました。その結果、「けあらぽ」による評価は、人間が時間をかけて行うものと遜色ないことが実証されました。専門職レベルのADL評価を毎日行えることは大きなメリットといえるでしょう。

厚生労働省が推進する科学的介護情報システム(LIFE)の活用も支援

「けあらぽ」の算出するバーセルインデックスの値は、厚生労働省が推進する「科学的介護情報システム(LIFE)」にも活用できます。

LIFEは科学的裏付け(エビデンス)に基づいた介護の普及のために、2021年から運用を開始したシステムです。全国の介護施設の現場からデータを収集して分析、その結果を現場にフィードバックして科学的介護を推進します。

介護施設はLIFEへのデータ提供を行うことで業務の改善に役立つフィードバックが受けられるほか、介護報酬の加算も取得できます。

LIFEへ送信する指標には「けあらぽ」と同じバーセルインデックスが指定されています。

「多くの介護施設はLIFEへの対応に積極的です。今後、介護サービスの質の向上やご家族へのケアプランの説明などで、科学的なエビデンスが不可欠になると考えているためです。

LIFEに提供するBI値のエビデンスとして『けあらぽ』の結果を用いることで、少ない作業負担でLIFEへの対応が可能です」(豊川氏)

「記録NAVI」との併用で分析の精度を向上

「けあらぽ」は、MDSOLの介護AI入力予測ツール「記録NAVI」と組み合わせて使用することで、分析精度が向上します。

「記録NAVI」は介護記録を簡単に素早く作成できるツールです。「記録NAVI」には、実際の介護現場に則した文例が収録されています。画面の案内に従って、文例を選択していくだけで、介護記録が作成できます。

「記録NAVI」は介護記録作成の効率化と併せてデータ分析の精度を上げることを目的に開発したと井上氏は語ります。

「開発では、東海大学との共同研究において、自由記入の介護記録で自立度評価ができるか検証しました。その結果、自由記入の介護記録ではあいまいな表現や自立度に直結するような記述の不足が多く、自立度評価が難しいことが分かりました。ですが、『記録NAVI』を使うことで介護記録の表現が統一され、記入者によるばらつきがなくなり『けあらぽ』によるデータ分析の精度が高まりました。『記録NAVI』で作成した介護記録を使うことが分析には有効ということが分かりました」

「記録NAVI」と「けあらぽ」の組み合わせは、業務負荷軽減と予防安全、科学的介護への対応と様々なメリットをもたらすソリューションとなっています。

今後の介護ソリューションの開発について、井上氏は次のように語ります。

「今後は『けあらぽ』の分析機能をさらに強化しBI値以外に予兆分析などもできるように開発を続けています。『記録NAVI』についても、より簡単に記録作成が行えるような改良を行っていきます。また、他のMELFARE製品も含めると介護現場の支援に活用可能なデータは多くあります。それらをうまく使って職場環境を改善するなど、IT化の恩恵を現場で働く人達に還元できるような統合プラットフォームへと展開させたいと考えています」

利用者の状態の推移を分かりやすいグラフで表示する「記録NAVI」と「けあらぽ」の連携イメージ

利用者の状態の推移を分かりやすいグラフで表示する「記録NAVI」と「けあらぽ」の連携イメージ

「記録NAVI」で作成された介護記録の文章を、「けあらぽ」のAIが自動分析してバーセルインデックスの評価値へと点数化。

  • 介護AI記録分析ツール けあらぽ

    けあらぽは、テキストマイニングで介護記録を可視化し、利用者の状態把握を可視化することで、根拠に基づいたケアプランの立案及び適切な介護を実践することができます。

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  • 介護AI入力予測ツール 記録NAVI

    記録NAVIは、介護記録がわずか数クリックで作成可能なソリューションです。マウスやタッチパネルで選択するだけで、統一した介護記録が作成可能職員のケアの視点でカテゴリー分け。新人の方でもポイントを押さえた記録が可能文例や作成した介護記録はひらがな表示されるので、外国人スタッフや新人スタッフも専門用語で記録可能

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