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星空の散歩道

国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe

 Vol.124

求む 流星雨目撃情報

今週末はオリオン座流星群の極大期である。ちょうど週末の10月21日から22日頃が極大と予想されている。夜半過ぎに、東の地平線からオリオン座が上るにつれ、速度の速い流星が散見されるはずである。そのため、夜半前にはほとんど出現しない。今年は月明かりの邪魔も無いので、暗い夜空のもとで、流星を楽しむことができるだろう。夜空の状態にもよるが、一時間ほど眺めていれば、5個から10個程度の流星は確実に見えるはずだ。

こうした、予測できる流星群は、定常群と呼ばれ、毎年、同じような数の流星が観察できる。しかし、宇宙にはまだわからないことがある。突然、誰も予測しない時期に、たくさんの流星が雨のように現れるのが目撃されることがある。こうした現象は予測が出来ないことから、天文学者だけでなく、観察のスキルを持ったハイレベルアマチュア天文家が目撃・観察することは少ない。しかし、こうした現象は天文学的には貴重である。

例えば、1956年12月5日、インド洋上を航行中の南極観測船・宗谷で、1時間あたり300個にも上る流星雨が観測され、貴重な記録となった。この流星群は、その後、2003年に発見された小惑星が母親であることが明確となり、その詳細が研究され、流星群やそれを生み出す彗星の進化の観点から、たいへん貴重な研究成果につながった。(欄外参照:国立天文台・極地研究所・総合研究大学院大学の共同記者発表)

こうした突発的な流星雨の目撃について、国立天文台には、しばしば情報が寄せられている。そのひとつは1933年の秋に、ほんの数分間の間に無数の流星が出現したものである。当時の二人の目撃証言が得られており、出現そのものには疑いが無い。渡辺銀一氏は、幼い頃に銭湯からの帰り道、大きな流れ星の後に、無数の流星が空を埋め尽くし、あたりが明るくなったのを目撃した。あまりのことに呆然とするだけだったという。二人の証言は、どちらも函館での目撃情報で、1934年の函館大火の前年であることが確実ではあるが、残念ながら日時はまだ不明である。

このような現象は極めて短時間で終わってしまうため、なかなか記録に残らない。もうひとつ、パリ在住の方から、長野市に暮らしていた幼い頃、目撃した突発流星雨情報が寄せられている。帰宅途中、ふと夜空を見上げると無数の暗い流れ星が降り注いでいたという。空は暗く星が見えている中、歩く方向は南東へ向かう道で、片側は田んぼだったという。もともと帰り道に星を眺める習慣はあったので、そのときにも見上げると、左手の方向(南)から、「小さい星が間断なく落ちてくる」のが見えたのだという。数分間は見ていたと思うがずっと続いて、ものすごい数だったらしい。こういうことは、しばしばあるのかな、と思って気にしなかったという。こちらは、日時どころか、季節もよくわかっていない。

渡辺銀一氏の回想にもとづくスケッチ。大きな流星の後、空一面に無数の流星が描かれている。(提供:渡辺銀一氏)

いずれにしろ、突発流星雨の貴重な目撃例であることは確かである。どちらの例でも話は理路整然としており、目撃時の記憶もかなり確かに思えるからだ。なにより、突発流星雨の特徴(数分間以上、継続していること、間断なく流星が流れていること、ある方角(放射点)から流れていることを認識してること)をよく捉えている。このような突発的な流星雨は、天文学上で非常に貴重な目撃情報であり、国立天文台では、これらを含めて、さらに多くの情報を募集するための、専用メールアドレスを作成した。もし、なんらかの情報をお持ちであれば、shower@prcml.mtk.nao.ac.jpまでメールでお寄せいただきたい。