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星空の散歩道

2011年10月21日 vol.71

おひつじ座を眺めよう

 夕方、暗くなると東の空にひときわ明るい輝く星に気づくことだろう。惑星の中の王者・木星である。この10月末には衝(しょう)と呼ばれる位置にくる。衝というのは、地球からみて、太陽とちょうど反対側にやってきた時のことをいう。衝は、太陽系天体では、観測好機となる。なぜなら、日の入りと共に東から上り、日の出と共に西に沈むので、ほぼ一晩中眺めることができるからである。

 さて、木星に天体望遠鏡を向けると、その周りを回るガリレオ衛星とよばれる4つの衛星を眺めることができる。かなり小さな望遠鏡でも、この衛星は見えるはずだ。もし、自宅に望遠鏡があるなら、ぜひこの機会に覗いてみてほしい。埃をかぶっている望遠鏡が有れば、活躍させるチャンスである。望遠鏡がないという方なら、お近くの科学館や公開天文台などで見せてくれることもあるので、問い合わせの上、ぜひ足を運んでみてほしい。

東の空から上る木星とおひつじ座(11月1日21時、東京) ステラナビゲータ/アストロアーツで作成しました。

東の空から上る木星とおひつじ座(11月1日21時、東京) ステラナビゲータ/アストロアーツで作成しました。

  

 ところで、いま木星が輝いている場所は、おひつじ座である。おひつじ座は黄道十二星座のひとつで、星占いなどでよく耳にするはずである。皆さんの中には、おひつじ座生まれの人もいることだろう。しかし、その知名度とは逆に、おひつじ座を眺めたことのある人は、ほとんどいないのではないだろうか。おひつじ座を構成する星は暗いために、星座としては目立たないからである。

 

 そんな今なら、明るい木星を目印に、おひつじ座を探して眺めるチャンスといえるだろう。まずは木星を探して、おひつじ座探しにチャレンジしたい。おひつじ座というのは、ギリシア神話では、金色の毛皮を持つ羊とされている。この羊の皮を手に入れるため、冒険に旅立つのがアルゴ船で、かつてのアルゴ座 (りゅうこつ座、ほ座、らしんばん座、とも座に分割されている)となっている。

 

 まずは木星から、少し左上に注目してみよう。そこに、ふたつの星がやや離れて並んでいるのがわかるはずである。左側が、おひつじ座で最も明るいα星のハマル、右上の星はβ星のシェラタンである。ハマルは2等星、シェラタンはハマルよりもやや暗い3等星だが、このふたつはよく目立つ。次にシェラタンのすぐそば、やや木星寄りの場所にいささか暗めの4等星が輝いているのを見つけられるだろうか。ちょっと都会だと、このレベルの明るさだと見つけられないかもしれないが、双眼鏡が有れば、なんとかなるだろう。これがγ星メサルティムである。この三つの星が、後ろを振り返ったおひつじの頭に相当する。おひつじ座は、ほとんどこの三つの星が主要部分といえる。星座を見慣れている人でも、なかなかこれ以外の部分の星を認識することは、あまりないかもしれない。だが、これだけだと、おひつじ座の頭しか見ていないことになる。もう少し頑張って、 δ星ボティンを探しておきたい。ボディンは、おひつじ座のしっぽに輝く恒星で、他に目印がないので、特定しにくい。ただ、いまだと木星を目印にできる。まずは、おひつじ座の隣にある、おうし座の散開星団すばるを探そう。すばるは肉眼でも小さな星がこちゃこちゃと集まっているので、すぐにわかるはずだ。このすばる星団と、現在の木星とを直線で結んでみる。この直線の途中に、さきほどのγ星メサルティムと同じ程度の4等星が見つかるだろう。これがδ星ボディンである。

 

 おひつじ座の残りの星はみな4等星以下と、これらの4つの星よりも暗いので、これだけ見つかれば十分であろう。木星は、ちょうどおひつじの前足に輝いているので、想像力たくましく、4つの星と木星から、天の羊の姿を思い描いてみてほしい。木星の輝きに、金色の毛皮を持つ羊を想像できるかも知れない。