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星空の散歩道

2014年9月18日 vol.87

皆既月食を観察しよう

 2014年最大の天体ショー。それは10月8日の皆既月食だろう。月食とは太陽─地球─月が直線上に並び、月が地球の影に入り込んで、満月の一部または全部が欠けたように見える現象である。月が地球の影をかすめるような場合には、月の一部のみが欠ける部分月食となる。一方、月全体が地球の影にすっぽりと入り込むと、満月全体が暗くなる皆既月食になる。今回は後者のケースである。実は、2014年には、これ以前の4月15日にも、皆既月食が起こっているのだが、こちらは月の出直後にはほとんど終了しており、日本では観察できなかったといってもよい。それに引き替え、この秋の皆既月食はかなり観察条件が良い。

 その条件の一つは、皆既月食のすべての過程が観察できるという点だろう。皆既月食でも、最初は地球の影に入り始める部分食から始まるのだが、この部分食の開始は18時15分。日本全国どこでも月がすでに東の地平線から上っており、見ることができる。そして月の出後の満月が次第に欠けていく様子が観察できる。皆既月食の始まりは19時25分、食の最大が19時55分、皆既の終わりが20時25分、そして部分食の終わりが21時35分である。日本全国で部分食の始まりから終わりまで、3時間20分の天体ショーのすべてが観察できるわけである。

 ちなみに、部分食前後に半影食というのも起こる。この半影月食の詳細は、2011年11月のコラム(vol.72/「12月10日の皆既月食を眺めよう」)を参照して欲しい。さすがに半影月食の開始は西日本では月の出前になって見ることができないし、東日本でも月の高度が低く、認識しにくいかも知れないが、もともと半影月食そのものが条件が良くても簡単に観察できるものではないので、こちらは無視してもよいだろう。ちなみに、後半の半影月食は月の高度もあがっているので、気づくかも知れない。部分食が終わる21時35分から22時35分まで、この半影月食が続いているので、注目して見るとよいかもしれない。

今回の皆既月食の経過。(東京)(提供:国立天文台)

今回の皆既月食の経過。(東京)(提供:国立天文台)

 さて、今回の皆既月食で観察条件が良い点のもう一つは、すでにお気づきだと思うが、その時間帯が宵のうちであることだ。ここ数年の皆既月食は、早朝だったり、深夜だったりとなかなか観察しにくい時間帯であった。特に、2011年12月の皆既月食は、今回と同じように全過程が観察できる条件だったものの、真夜中の天体ショーで、皆既月食は23時6分から始まり、23時58分に終わるというものだった。土曜日だったのだが、さすがに小学生の子供たちが観察するには辛い時間帯だった。その点、今回は月の出直後の皆既月食開始なので、こどもたちにとっても観察に無理のある時間帯ではない。水曜日という平日だが、無理なく多くの子供たちが観察できる格好の時間帯に起こる皆既月食といえるだろう。

 ところで、皆既月食の楽しみはなんといっても、皆既中の月の色である。皆既中でも、月には太陽の光がわずかに届いている。地球の高層大気を通って屈折した光が、地球の影へと入り込み、月に届くからである。その光の中で青色の成分は地球大気に散乱されて無くなってしまうが、残った赤色の光だけが皆既月食中の月を照らし出すことになる。ちょうど夕日が赤くなるのと同じ原理で、皆既食中の月は、ぼんやりとした赤銅色に輝く事が多い。ただ、その赤さは毎回、異なる。地球の大気の成層圏に漂う火山灰の量などによって、届く光の量が異なってくるからである。今回は明るい赤銅色になるのか、それとも真っ暗になってしまうか。それは起こってみないとわからない。

 月が、東から徐々に高度を上げていくことそのものも、それほど日常は意識することもないだろう。そんな月の動きと共に、皆既月食の経過によって、月がどのように欠けていき、そして今回は果たしてどんな色で輝くのか、またどんなふうに再び輝きを取り戻していくか、その経過を観察してほしいものだ。国立天文台では、今回も皆既月食について解説をすると共に、観察の仕方やスケッチ用紙などを掲載しているので、ぜひ活用して欲しい。