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#040

準天頂衛星システム「みちびき」 

画像 準天頂衛星システム「みちびき」
こちらは、
現在位置(今、いる場所)を知ることができる「衛星測位」の中心的な役割をなす人工衛星じゃ。
ここが便利!
カーナビやスマートフォンなどで利用可能な位置情報のナビゲーションはこの「みちびき」があってこそじゃ。
ここがスゴい!
現在4機で運用されているが、今後7機まで増える予定で、高精度なサービスをさらに安定して使えるようになるぞ。
研究生 エコちゃん

人工衛星ですね。地球観測衛星の「ひまわり」や「いぶき」は勉強済みなのでよく知っていますが、こちらの「みちびき」は何をしてくれるのかしら。

博士

みちびきは「測位衛星」といって、現在位置を知るための大切な情報を宇宙から私たちに発信しているんじゃ。測位衛星には米国が運用するGPSや、EUが運用するGalileoなどがあるが、みちびきは、日本を中心としたアジア・オセアニア地域向けの測位衛星じゃ。

研究生 エコちゃん

「測位衛星」が私たちに発信している情報って、どのようなものなのかしら。

博士

みちびきやGPS等の測位衛星から自分がいる場所に届く電波には、 「①電波が発信された時刻」 と 「②その衛星の位置」の情報がのっているんじゃ。の時刻と、今の時刻との差が、電波が衛星から自分がいる場所まで届くのにかかった時間なので、それに電波が進む速さを掛けると、衛星からの距離がわかる。

研究生 エコちゃん

衛星からの距離と、もう一つの情報である「②その衛星の位置」がわかると、現在位置を特定できるんですか?

博士

1つの衛星からの情報では無理で、4つ以上の衛星からの情報()が必要なんじゃ。普段何気なく使っているカーナビやスマホは4つ以上の衛星からの情報と、その他いろいろな補正情報を複雑な計算で処理して現在位置を表示しているんじゃ。

画像 測位衛星(みちびき、GPSなど)

研究生 エコちゃん

なるほど~。てっきり、衛星が私たちの現在位置を教えてくれているものと思っていました。

博士

みちびきは現在4機あり、うち3機は図のような経路で飛行する。これにより8時間ごとに1機が必ず日本付近の上空にいることになり、ビルの谷間や山間部でも電波が届くようになっておるんじゃ。

画像 飛行経路

研究生 エコちゃん

「8」の字を描くように飛行するのですね。北海道を過ぎたらずいぶん南の方まで行きますが、日本の上空だけを旋回できないのかしら。

博士

人工衛星は飛行機みたいに旋回できんぞ。みちびきも他の人工衛星同様に地球を周回しているんじゃが、地球が自転する方向から少しずれた向きで周回することで、このような8の字を描くように見えるんじゃ。こんな感じじゃ。

音声なし。再生時間:40秒

研究生 エコちゃん

本当だ~。すご~い。ところでみちびき4機のうち、のこりの1機はどこにいるのでしょうか。

博士

赤道上空 (図の点の位置)におる。ここにいるみちびきは日本の上空にはいないが、ビルの谷間や山間部でなければ、十分に電波が届く。このように日本の上空と赤道上空にいるみちびきと、日本の近くにいるGPS等の測位衛星を合わせて4機以上からの電波を受けて、私たちは現在位置を知ることができているんじゃ。

研究生 エコちゃん

みちびきと他国の測位衛星が同じように電波を出して私たちがそれを使用しているんですね。

博士

そのとおり。でも他の測位衛星にはない、みちびきだけの特別な機能があるんじゃ。「補強機能」じゃ。

研究生 エコちゃん

何を「補強」するのかしら。

博士

地球の地上約60kmより上には「電離層」と呼ばれる領域が広がっており、「電離層」は、電波を反射する性質を持っているため、衛星からの電波が影響を受けてしまい測位(=位置情報を得ること)の誤差を生む原因となっているのじゃ。みちびきには、この誤差を解消するための「補強電波」を送信して測位の精度を向上させる機能があるんじゃ。

画像 電離層

研究生 エコちゃん

「補強電波」によって、どのくらい測位の精度が向上するのでしょうか。

博士

電波の種類にもよるが、誤差を数cm程度までに向上できる。これにより、例えば、広大な農場に無人のトラクターを走らせるということも可能になる。遠距離を飛行するドローンを正確に目的地に到着させることも可能じゃ。

研究生 エコちゃん

すご~い。食料不足の問題の解決や、労働時間の削減にも貢献しますね。

博士

船舶に正確な航路をナビゲートしたり、視覚障がい者向けに安全な道を誘導したりすることも可能になり、安心・安全面での貢献も大きいぞ。
みちびきは2026年度を目途に7機体制での運用が開始される予定じゃ。そうなれば、みちびきだけで日本国内の測位が可能になり、「補強電波」も今以上に安定して届くことになる。今後、今以上にみちびきによる位置情報が毎にち、重宝されることになるぞ。

研究生 エコちゃん

博士、、、寒い!? 😊。

準天頂衛星システム「みちびき」

「みちびき」は初号機が2010年、2~4号機が2017年に打ち上げられて4機体制が確立され、2018年11月1日から、24時間途切れなく準天頂衛星によるGPS補完・補強のサービスを受けることが可能となりました。

センチメータ級高精度測位ソリューション

三菱電機は、さらに高精度な測位を可能にするセンチメータ級高精度測位ソリューションの実現に向けて取り組んでいます。センチメータ級の測位補強情報を準天頂衛星から放送し、高精度3次元地図と組み合わせることで安全運転支援・自動走行分野をはじめ、鉄道分野、IT農業分野、情報化施工分野など、社会のさまざまなシーンにイノベーションをもたらします。

約1,300の電子基準点から構成される国土交通省国土地理院 GEONETの情報を基に生成。

【ソリューション事例】

安全運転支援・自動走行分野
<合流や車線キープをセンチメータ単位で見守る>

センチメータ級測位システムによる高精度な位置情報で、合流時や走行時なども、自車がいまどの位置を通過しているか極めて正確に把握。スムーズで安全な自動走行を可能にします。

鉄道分野
<列車位置をセンチメータ精度でリアルタイムに把握>

実際に運行されている列車の位置を、センチメータ級測位システムによりリアルタイムに把握できます。この測位情報を活用することで、乗務員の運転支援をはじめ、様々な運行サービスへの展開が期待できます。

IT農業分野
<農業機器の走行を制御、無人・自走による高効率な作業を可能に>

センチメータ級測位システムの利用により、トラクターなど農作業の機器の高精度な自動運転化が可能です。車庫から圃場までスムーズに移動、作付けや収穫など各種作業の無人化を支援。大規模農業の推進や効率化に寄与します。

取材協力
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三菱電機株式会社
宇宙システム事業部/準天頂衛星推進部/営業課
堂本 恒志

研究生 エコちゃん

「堂本さん、みちびきの事業に携わって印象に残ったことを一言お願いします。」

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2018年から4機体制のサービスが開始された「みちびき」は、2026年度以降にはさらに3機が追加され7機体制でのサービスが予定されています。また、当社が担当しているセンチメータ級測位補強サービスは、自動車分野や除雪等の分野でハンズフリーを含む先進運転支援システムや自動制御に活用され、利活用が広がりつつあります。このような大規模なプロジェクトに営業として携わることができたことは大きな経験となっています。今後も安心・安全・快適に暮らせる社会に貢献するインフラとして国の整備拡充を支援し、様々な分野での利便性向上の取組みを進めていきたいです。