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ニュースリリース

テキスト版

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2012年12月21日
電シ本No.1211

費用の過大計上・過大請求事案の社内調査結果と再発防止策について

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 三菱電機株式会社は、電子システム事業本部における、防衛省、内閣衛星情報センター、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(以下、宇宙航空研究開発機構)、独立行政法人 情報通信研究機構(以下、情報通信研究機構)および総務省への費用の過大計上・過大請求事案の社内調査結果と再発防止策について、下記のとおり、お知らせします。

 一連の事態を招いたことは誠に申し訳なく、お客さまをはじめ皆さまに深くお詫び申し上げます。当社は今後、当社グループの全役員、全従業員が一丸となって、二度とこのような問題を起こさぬよう信頼回復に努めてまいります。なにとぞ、ご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

 社内調査結果と再発防止策の詳細は、別添の「電子システム事業本部における費用の過大計上・過大請求事案に関する「社内調査結果」と「再発防止策」について」のとおりです。
 本件に関連し、本日付で、別紙「防衛省、内閣衛星情報センター、宇宙航空研究開発機構及び情報通信研究機構との契約における費用の過大請求に関する返納金の引当計上の見込みについて」および「通期業績予想の修正に関するお知らせ」を公表しております。



1. 経緯

 当社は2012年1月17日に、防衛省、内閣衛星情報センターおよび宇宙航空研究開発機構から鎌倉製作所における原価集計などに関する問い合わせを受けました。社内で調査したところ、契約をまたいで工数の付替えを行い、費用を実際よりも多く計上している案件があったため、 1月27日に、防衛省、内閣衛星情報センターおよび宇宙航空研究開発機構に事実を一報し、詳細な調査を行うとともに、他のお客様との契約に同様な事実がないか、関係会社の契約に同様な事実がないかの調査を実施しました。調査が進むにつれ、情報通信研究機構と総務省についても費用の過大計上・過大請求があること、および関係会社4社でも同様に防衛省への費用の過大計上があることが分かり、以下に示すとおり、それぞれのお客様へ報告するとともに、詳細調査を実施してきました。

費用の過大計上・過大請求事案の経緯
日 付 内 容
2012年1月17日 防衛省、内閣衛星情報センターおよび宇宙航空研究開発機構から、鎌倉製作所における原価集計などに関する問い合わせを受け、社内調査を開始。
2012年1月27日 防衛省、内閣衛星情報センターおよび宇宙航空研究開発機構に、契約をまたいで工数の付替えを行い、費用を実際よりも多く計上している案件があることを報告。
2012年2月3日 情報通信研究機構に、契約をまたいだ設計工数の付替えが存在することを報告。
2012年2月24日 当社の連結子会社3社(三菱プレシジョン株式会社、三菱電機特機システム株式会社、三菱スペース・ソフトウエア株式会社)と、持分法適用関連会社の太洋無線株式会社が、契約をまたいで工数の付替えを行い、費用を実際よりも多く計上している案件があることを、それぞれの社から防衛省に報告。
2012年3月2日 総務省に、研究開発委託契約に関する費用の過大請求があることを報告。
(7月4日、返納金を国庫に納付済み)

2. 社内調査の概要

 調査チームは、調査の中立性を確保するため、法務・コンプライアンス部所属の従業員を中心に弁護士を含めて編成し、防衛・宇宙事業を担当する電子システム事業本部、鎌倉製作所、通信機製作所、およびコーポレート部門を対象に調査を行いました。関係会社も、各社で弁護士を入れた調査チームを編成し、自社の調査を行いました。

 調査の対象にした契約は、実際にかかった費用が契約にて認められた原価よりも少なかった場合に契約金額の減少や超過利益の返納が発生する「原価監査付契約」だけでなく、契約時に金額が確定している「一般確定契約」も含め、広く調査しました。

 調査にあたっては、契約関係書類、作業関係書類、および電子メール等の物的資料を検討したほか、役職員に対するヒアリングを行いました。

3. 調査結果

(1)工数付替えの態様
 「一般確定契約」「原価監査付契約」において、工数を付替えて不適切計上をした案件があることが判明しました。不適切な工数計上を開始した時期や経緯の詳細は分かりませんでしたが、遅くとも防衛事業については1970年代、宇宙事業については1990年代初めには行われていたことを確認しました。
 また、工数付替え以外にも、設計外注費等で本来計上すべき工事とは異なる工事に計上していた例などが確認されました。
 不適切な工数計上の流れは以下のとおりです。
契約額に基づき、材料費、加工費、設計費等の目標原価を設定。
目標原価を基に、工事(契約)をとりまとめるプロジェクト部門が目標工数を各課に配分。
各課長が課員に目標工数を配分。
課員の実際の工数が目標工数に合致しない場合、別の工事に計上するか、または計上しないことにより、目標工数に合った工数を入力(工数の付け替え)。
職場によっては、課員が計上した工数を課長等が修正して付替える場合もあり。
指示に基づき計上された工数がその後の処理に使用され、お客様に過大請求。実際の工数の記録は存在せず。
 
(2)上位者の関与
 工数の付替えは「目標工数を遵守する」立場の課長を中心として行われ、部長以上の製作所幹部が工数の付替えを指示する等、積極的に関与していた事実は認められませんでした。しかし、これら幹部は、人により濃淡の違いはあるものの、自らの課長時代の経験等から工数の付替えの事実を概括的に認識しつつ、損益計画を立てていました。
 
(3)動機・背景
 鎌倉製作所、通信機製作所においては、防衛・宇宙事業の継続のため、事業全体で損益を維持する管理を行っていました。具体的には契約金額に基づいて目標工数を設定し、実際の工数が目標工数を上回ることのないよう、契約をまたいで赤字工事の工数を黒字の工事に付替えることなどにより、赤字幅抑制と契約金額の減少や返納金の発生を回避していました。
 また、実際の工数が目標工数を上回った際、計上できなかった工数は、人員配置の目安となる直接作業率(計上工数を就業時間で除したもの)の低下となるため、課長等は工数を付替えて直接作業率を維持することで人員の削減を回避し、事業継続に必要な人員の確保を図っていました。
 
(4)顧客による過去の制度調査における対応
 顧客の制度調査に対し、鎌倉製作所と通信機製作所は工数の付替えが発覚するのを恐れ、想定問答の準備、提示資料の取捨選択、現場の掲示物撤去などの準備を行い、工数付替え用の「工数修正端末」の存在も秘匿していました。
 また、鎌倉製作所は2004年に、宇宙航空研究開発機構から「工数付替えによる過大請求」について自主調査実施の指示を受けながら、工数付替えの事実は確認できなかったと回答しました。
 
(5)関係会社4社の不適切な工数計上
 当社の連結子会社3社(三菱プレシジョン株式会社、三菱電機特機システム株式会社、三菱スペース・ソフトウエア株式会社)と、持分法適用関連会社の太洋無線株式会社の計4社も当社と類似した不適切な工数計上を行っていたと、それぞれの社から報告がありました。動機と背景も当社と同様に、赤字抑制、返納金発生回避、人員確保などが挙げられている一方、当社から移管された事業に関しては、当社から引き継いだ工数を維持するためとするものもありました。
 

4. 原因分析

 調査結果を分析した結果、事案の原因となった問題は次のとおりです。

(1)電子システム事業本部の問題
 電子システム事業本部の問題は以下のとおりです。
目標工数管理の定着化
事業全体で損益を維持するため、目標工数に合わせた工数計上が長年にわたり引き継がれた結果、上位者の明確な指示がなくても現場レベルでの工数付替えが慣習となり、定着していました。
従前からの仕事のやり方、慣習を是正する意識が希薄
防衛・宇宙事業の専門性・特殊性を重視するあまり、他の事業本部との人材交流が不足し、人材や各々の仕事に対する認識が画一化されたため、従前からの仕事のやり方・慣習を是として積極的に是正する意識が希薄になっていました。また、従業員は、原価監査付契約等に関する知識や原価計上に関する知識が不十分で、工数付替えが過大請求につながるとの認識が欠けていました。
 
(2)全社コンプライアンス体制の運用上の問題
 全社コンプライアンス体制の運用上の問題は次のとおりです。
事業部門に対する牽制機能が不十分
事業本部のコンプライアンス活動に対するコーポレート部門の関与(牽制)が弱く、また、不正行為を発見する能力が十分ではありませんでした。
コンプライアンスに関する監査・調査が不十分
工数付替え後のデータのみが計上・保存されていたため、部外者では発見が困難でした。特に、防衛・宇宙事業などの個別の事業特性・事業環境によるリスクを考慮し、両製作所に対して確認すべき重点監査項目を内部監査に反映させるといった対応が不十分でした。
また、工数の付替えが定着し、問題意識が希薄化していたため、本件では内部通報制度が利用されませんでした。

5. 再発防止策

 原因分析を踏まえ、再発防止に関する電子システム事業本部に関する施策と全社コンプライアンス体制に関する施策を次のとおり策定して実行中です。

(1)電子システム事業本部に関する施策
問題点 施 策
目標工数管理の定着化
経営陣の刷新
電子システム事業本部長、同副本部長、同業務部長の経営幹部を2012年3月1日付けで他の部門から登用し、経営陣を一新しました。事案終結後には、事案に関係した幹部の再配置も実施する予定です。
経営管理手法の刷新
事業全体での損益管理から「個別・機種別契約の損益管理」に改め、実態どおりの工数計上としました。具体的には、実態どおりの工数計上を確実に実施して、以下の手段により適正に管理します。損益の厳しい工事には適正となった原価計上実績を把握の上、徹底した原価低減と生産力強化により、製品競争力の強化と損益改善を図ります。
 ①作業時間計上の適正化および監査
 ②情報システムおよびデータの健全性確保のための仕組み構築
 ③その他費用の適正な管理
従前からの仕事のやり方、慣習を是正する意識が希薄
契約制度および原価計算規程の理解促進に向けた教育
防衛・宇宙事業特有の契約内容や原価計算規程に関する基礎知識について具体的な事例を盛り込んで教育を行い、理解度のチェックを行うことにより、従業員の日常業務において契約違反に該当する行為がないかの自己点検能力を向上させます。


(2)全社コンプライアンス体制に関する施策
問題点 施 策
事業部門に対する牽制機能が不十分
全社コンプライアンス方針の明確化と浸透策の推進
全従業員へ本事案発生に関する社長メッセージをメール発信するとともに、社内報にも掲載しました。
階層別コンプライアンス研修を一層、充実させます。
全社コンプライアンス施策の推進体制の強化
法務部を2012年10月1日付けで「法務・コンプライアンス部」に改称し、全社コンプライアンス推進を担う部門であることを明確にするとともに人員を増強して、コンプライアンス施策を社内へ一層浸透させます。さらに、全事業本部に本部長直轄の「コンプライアンス部」を新設し、事業推進と一体不可分なコンプライアンス活動を推進しています。
将来の経営管理者の育成
経営幹部や総務・経理・資材などの管理部門については、事業本部をまたがる人事異動を継続的に推進するとともに、積極的に国内外の他事業を経験させることで、コンプライアンスを含めた多面的な価値観・見識を有する多様な人材を計画的に育成していきます。
コンプライアンスに関する監査・調査が不十分
コンプライアンスに関する監査・調査体制の強化
内部通報制度「倫理遵法ホットライン」のさらなる周知徹底と、実効性を向上させる施策を実施します。また、自社・他社の不祥事事例などからテーマを選定し、個別のテーマに応じてリスクの高い被監査部門を抽出して重点的な監査を行うことにより、不正・不祥事事例の早期発見力強化に努めます。

6. 社内処分

(1)電子システム事業本部に対する処分
 本事案発生時の電子システム事業本部長は、2012年3月に更迭しました。電子システム事業本部長経験者の顧問についても、解嘱します。
 本事案に関与したその他の関係者についても、社内規程に従って厳正に処分します。
(2)執行役に対する処分
 本事案の重大性を踏まえ、執行役社長は月例報酬6か月分相当の減給、その他の執行役については、月例報酬1か月分相当の減給とします。

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