本試験の背景と結果
HVDC送電は、長距離ケーブル送電において、交流送電よりも電力損失が少なく、低コストであるため、欧州、特に北海やバルト海では、洋上風力発電設備を陸上送電網に接続するための有効な手段として用いられています。近年では直流送電網の拡大・継続性確保・安定性向上のために、機器として信頼性が高く、低コストの直流遮断器が求められています。
一方、交流電流では半サイクル毎に現れる周期的な電流零点で電流を遮断できますが、直流電流では遮断器が強制的に電流零点を形成する必要があります。また、直流送電では直流・交流間の電力変換を行う変換器が用いられており、事故時には変換器が電圧低下によって停止する前に事故電流を遮断する必要があることから、遮断器には数ミリ秒での高速遮断が要求されます。
当社は今回、事故電流が発生した際、強制的に電流零点を形成して数ミリ秒で電流を遮断する機械式DCCBのプロトタイプを用いた直流電流の遮断に成功しました。
機械式DCCBの特長
- 事故電流の高速遮断が可能で、電力系統の安定運用に貢献
- 遮断器本体を高速動作させる電磁反発操作機構を採用し、事故電流の高速遮断を実現
- 送電時の電力損失を最小化し、HVDC送電網を高効率化
- 通電時の電力損失が大きいスイッチング素子である半導体素子を不要とし、電力損失の少ない導体を用いた機械式接点のみで電流を遮断することで、電力損失を最小化し、HVDC送電網を効率化
- 冷却設備などが不要で、HVDC送電保護設備の低コスト化・小型化に貢献
- 半導体素子を用いた遮断方式と比べて、安価で使用環境の影響を受けにくい機械式接点を採用。クリーンルーム・冷却設備が不要なため、HVDC送電保護設備の低コスト化・小型化に貢献