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My Purpose 学び続けてチームにとって必要な存在に My Purpose 学び続けてチームにとって必要な存在に
Voices 2024.02.20

チームを大切にしながら自分自身を高める。
両方を追求するエンジニアの強い思い

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国内にある三菱電機の拠点には、外国籍の従業員が数多く働いている。今回登場するフランス出身のジャノ・クレアアメリさんもそのひとり。なぜ母国を離れて日本に移住し、日本の企業で働くことになったのか。そして、今回インタビューの際に同席していた彼女の上司が、「彼女にしかできない仕事がある」というほど高い専門性を持つジャノさんが、周りとの連携を重視しているのはなぜなのか。仕事に臨む姿勢、思いについて語ってもらった。

求められる高い精度がモノづくりを支える

ジャノさんは、工作機械向けCNC(数値制御装置)に関する研究開発を行っているエンジニアだ。CNCはプログラムを通じて工作機械の動作を制御する装置。工作機械は色々な素材を削ったり加工したりするものだが、このCNCがあることで、より複雑で細かい部品や金型などを作ることができるのだ。

「工作機械は、主に業務用として使われることが多く、高い精度や滑らかさが必要です。様々な部品の金型を作ったり、部品そのものを加工したりするのが工作機械です。一般的に知られている3Dプリンターよりも遥かに高い精度が必要ですし、複雑な加工にも対応できます」

工作機械で作ることができるものの一つとして見せていただいたのが、このアルミ素材の加工品だ。

「これは様々な加工をテストしたものですが、私が仕事をしていて楽しいと思うのは、工作機械を高い精度で制御することで、このような「美しい加工物」を作ることができることです。工作機械が作る製品には同じものを同じ品質で作ることが求められるので、そのためにCNCは重要な役割を果たします。さらに、一度納品された工作機械は、30、40年と長い期間稼働することもあるので、継続的に製品やサービスを提供し続けることが重要です。三菱電機は、それができる数少ない会社ですね」

数学好きなエンジニアの父からの影響

女性の社会進出が進んでいるフランスでも、理系に進む女性はやはり相対的に少ないそうだ。この理系の道へとジャノさんが進んだのは、父からの影響も大きい。

「父は数学が大好きなエンジニアで、私も小さな頃から数学や物理学に接して楽しく学び、自然と理系の道に進みました。フランスの大学では、エンジニアを育てる学校に進みました」

数学が好きだということ以外にも、モノづくりが好きということも彼女の仕事の取組み方に影響しているようだ。

「工作機械を使うことで単純な素材からキレイなものができることが不思議で好きです。小さな頃から絵を描いたり工作したりと色々と作ってきました。作ることが単純に好きでしたし、数学と似ていると思うところも。例えば作る過程で少しでも間違えると、結果が全く変わってしまいます。数学も仕事もプロセスが大事だなと。ちゃんとゴールや目的を考えながら、どう辿り着くのかを意識しつつ少しずつ作るのがどちらも重要な要素です

日本文化との馴れ初め、フランス時代の三菱電機とは?

フランスで生まれ育ったジャノさんが、本格的に日本に移住したのは、2017年からの留学がきっかけだった。

「中学生の時、日本のエンタメを熱心に見始め、その後日本の文化全般に興味を持つようになりました。高校時代にホームステイをしたのですが、親切な人が多く、また、とても安全な国だと感じました。異文化としても興味深いですし、とても楽しく過ごすことができたので、もう少し日本に長く住みたいなと。それでフランスの大学の留学提携先として、日本の大学に留学することになりました」

その後日本の大学・大学院を卒業し、三菱電機に入ることになるが、“MITSUBISHI”といえば、車というのがフランスでの代表的なイメージだったそう。しかし、日本に来たことで、三菱電機グループの大きさを知ると同時に、三菱電機の手がける領域の広さに驚き、惹かれたという。

「今では三菱電機は、何でもできる会社というイメージです。家電も作れば、工具も作る。事業で言えば、宇宙関連事業まで手がけており、本当に幅広い会社だと思います。今でも同期と話してみると、自分とは全然違うことを研究したりしていて、情報交換をすると大きな刺激をもらえます。そういう環境にいられることが楽しいですね」

失敗にも成功にも、しっかりと向き合い続けること

ジャノさんの研究は数年かかることも珍しくない。また製品に直結するだけでなく、技術自体を研究することもあるという。研究というマラソンでは、必ずしもゴールが鮮明には見えているわけではない。遠くにゴールらしきものが朧げに見えているだけだ。研究には失敗がつきものだからこそ、それでも続ける根気強さと、へこたれない思考のコツのようなものが必要になる。

「なぜその挑戦が失敗だったのかを、目を背けずにちゃんと分析することが重要です。原因がわからずモヤモヤしたままだとそのまま進むのは難しいですが、ロジカルに理由がわかればちょっとずつでも進めるんじゃないかなと思います。あとは、小さなことでもいいから達成感を味わうことですね。うまくいけばモチベーションが上がって、また次の目標に向かえるので、小さくてもいいのでそのサイクルを回すようにしています」

失敗から学び、試行錯誤を繰り返した先で生まれる技術。ただし、その技術が社会の中に組み込まれ、ちゃんと“生きた技術”になるためには、大切な意識があるという。

日本だけでなく、海外でどんな技術が進んでいるのかなどを常にチェックしておく必要があります。周りを見ながら、お客さんや世の中のニーズを把握することで、どんな製品が求められているのかを考えます。最近だと、電気自動車の部品を作るための工作機械に関連するプロジェクトに関わりましたが、エンドユーザーが使う製品の部品を作るのも工作機械の役割の一つなんです」

今の仕事を通じて願うこれからの社会

「今の仕事を通じて、社会や世界をよくしている意識はありますか?」 という質問には、実にエンジニアらしい答えを返してくれた。

「今の世界は状況が刻一刻と変わっていきますが、技術の世界も同じです。人の持つ技術も変わっていく中で、工作機械ができることも変わっていきます。私たちのチームがより精度が高く、使い勝手のいい工作機械を作ることで、最終的にすごい製品を生み出すことができる。そうして世界がよくなっていく。または、なっていって欲しいという感覚を持っています」

工作機械は30年、40年と使われることも珍しくない。その時間感覚も社会、そして未来を考えるきっかけになっていると言う。

「未来を予見するというのはなかなか難しいことだとは感じています。部署のメンバーで集まって、10、20、30年後はどうなっているか想像して、ブレストすることもあります。もちろん正解はわかりませんが、今自分が作っている技術で、そういった良い社会の方向にちょっとでも向かうことができたらいいなと思います」

周りを支え、周りに支えられ

さらにジャノさんには、仕事をする上で大切にしていることがある。

「周囲の人が楽しい気持ちで仕事ができる環境作りを意識しています。というのも、より良い技術を創造するためには、様々な人と力を合わせて、チームを信頼して課題を乗り越えなくてはいけません。私一人では何もできないし、私ができないところは他の人がカバーしてくれることもあります。それに先輩たちから学ぶこともまだまだたくさんあります。仕事のことだけではありません。周りと談笑して息抜きすることも、楽しんで仕事をするためには重要なことです」

最後に「マイパーパス」を伺うと、チームの中で、周りから信頼されるようになることが自分の向かうべき道だと教えてくれた。

チームや会社にとって必要な存在になりたいですね。この技術のことであればジャノに聞けとか、周りの人から信頼され、色々な仕事を任されたいなと。足りない部分はたくさんあると自覚しているので、色々なことに貪欲に取り組みつつ、今ある業務以外にも必要なスキルを、少しずつでも学んでいきたいです」

ジャノ・クレアアメリ

INTERVIEWEE

三菱電機先端技術総合研究所ジャノ・クレアアメリ

2020年入社。フランス出身。フランスで中学時代に日本語に親しみ、日本のエンタメをきっかけに日本文化に興味を持つ。フランスの大学から日本の大学へ留学し、そのまま日本の大学院に進学。卒業後に三菱電機に入社し、現在は、工作機械向けCNC(数値制御装置)に関する研究開発を行う。

掲載されている情報は、2023年12月時点のものです。

制作: Our Stories編集チーム

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