九州支社×
鹿児島における
カーボンニュートラル
実現への貢献
2050年までに、市民や事業者等と一体となってCO2排出量実質ゼロの実現を目指す「ゼロカーボンシティかごしま」への挑戦を宣言した、鹿児島市。この動きに賛同し、「ゼロカーボンシティかごしまパートナー」として参画する鹿児島営業所の社会貢献活動を紹介するとともに、環境にやさしく、経済的なオフィスビルとして、鹿児島県で初のZEB Readyによる「BELS認証」を取得された「久永情報マネジメント株式会社」の久永 修平社長にお話を伺いながら、カーボンニュートラル実現に向けた三菱電機の多彩な取り組みとそこに込めた想いを紹介します。
2050年までに、市民や事業者等と一体となってCO2排出量実質ゼロの実現を目指す「ゼロカーボンシティかごしま」への挑戦を宣言した、鹿児島市。この動きに賛同し、「ゼロカーボンシティかごしまパートナー」として参画する鹿児島営業所の社会貢献活動を紹介するとともに、環境にやさしく、経済的なオフィスビルとして、鹿児島県で初のZEB Readyによる「BELS認証」を取得された「久永情報マネジメント株式会社」の久永 修平社長にお話を伺いながら、カーボンニュートラル実現に向けた三菱電機の多彩な取り組みとそこに込めた想いを紹介します。
REPORTER
三菱電機株式会社
鹿児島営業所
所長兵藤 文彦さん
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出身も世代も違うメンバーで構成されたダイバーシティな環境で活発に意見を交わしながら、さまざまな貢献活動に取り組む鹿児島営業所の様子をお届けしたいと思います。
三菱電機株式会社
鹿児島営業所山下 由美さん
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社会貢献活動を通じて環境意識に目覚めたことで、自宅でも照明をこまめに消すようになり、省エネを身近に考えるようになりました。自らの行動変容のきっかけともなった鹿児島の貢献活動をご紹介します。
三菱電機株式会社
鹿児島営業所井上 剛さん
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小さなことでも、一人ひとりが意識して行動するようになれば、省エネは少しずつ社会や生活に根づいていくはずです。そういう意識や行動の変化につながる多彩な社会貢献活動をお伝えします。
HIGHLIGHT
AREA
掲載されている情報は、2022年9月時点のものです
鹿児島の地に根ざし、小さくても光る活動を積み重ねながら、
カーボンニュートラルの実現に貢献していく。
鹿児島営業所では、カーボンニュートラル実現に向けた貢献活動として、鹿児島の地に根ざした多彩な取り組みを行っています。地域とのつながりの中で展開するさまざまな貢献活動を紹介しながら、活動を通じてもたらされた周囲の行動や意識の変革、また自身の変化について語っていただきました。
学生たちと考える、
カーボンニュートラルの未来
兵藤/2022年4月に鹿児島に赴任しましたが、私の着任以前から鹿児島市のカーボンニュートラル実現に向けた活動に賛同し、いろいろ取り組みを行ってきたと思います。当初の経緯は、どうだったのでしょう?
山下/鹿児島市の方から、活動に賛同いただける企業を募っているというお話があり、当社としてもゼロカーボンやSDGsの実現に向けた事業に動き出す時期に、担当の方とお会いしたのがきっかけです。
兵藤/私たちのビジネスでは顧客満足度が重要ですが、その背景には社会の満足が不可欠であり、社会貢献活動もその一環と位置づけ、取り組んでいます。
山下/2021年に鹿児島市と「ゼロカーボンシティかごしまパートナー」から4社が鹿児島大学法文学部の授業「アクティブ・ゼミ (2021)」に参加し、前期授業の中でワークショップを行いました。産学官連携の活動として行われたものですが、各企業が自社の取り組みを報告し、“行動変容を促すにはどうすればいいのか”というテーマで学生たちと意見交換しました。当社は、環境に関する取り組みを紹介するとともに見学会を開催し、最新の事例として、ZEB Readyで「BELS認証」を取得された「久永情報マネジメント(株)」様の新社屋に、学生15名及び指導教授、鹿児島市関係部署の方々の総勢24名で訪問しました。社長自らご案内いただき、これから社会に出る学生たちにZEBを知ってもらい、環境意識を高めてもらう良い機会になったと喜んでおられました。学生たちにとっても、企業の事例を知ることで環境意識の向上、行動変容のきっかけになったのではないでしょうか。
反響が大きかった、
「みつびしでんき科学教室」
山下/地域の子どもたちを対象にした「みつびしでんき科学教室」は、子どもたちに科学の面白さを知ってもらうというコンセプトで、鹿児島では2017年から始めた活動です。2022年6月に3年ぶりに開催しましたが、各回定員を5名に絞り、3回に分けて開催し、合計15名にご参加いただきました。今回のテーマは「熱伝導」でした。小学校高学年レベルの内容なので、低学年の子には難しいかなと思いましたが、ものによって熱の伝わり方が違うという話やヒートパイプの原理を学んでもらいました。実験では、ヒートパイプを使って体温で氷を切ったり、ペットボトルの中で気圧の変化を利用して雲を作ったりしましたが、所定の時間が過ぎても続けている子もいて(笑)。ご参加いただいた子どもたちを含め、保護者の方にも喜んでいただきました。商業施設内の会場だったので、買い物に来られていたご家族が実験を覗かれていたり、中には声をかけていただくような機会もありました。
兵藤/当日はマスコミの取材が多く、全国ネットのTVニュースの他、新聞などにも取り上げられ、予想以上の反響でした。
山下/今年10月に「かごしま環境未来館」で環境フェスタかごしま2022を開催しますが、次回はそこで環境をテーマとした「みつびしでんき科学教室」を開催する計画を進めています。
井上/鹿児島地区の当社グループ会社や代理店にも協力を要請し、地域の方々と一緒になって開催したいと思っています。
多彩な社会貢献活動
兵藤/鹿児島営業所として取り組んでいる社会貢献活動はいろいろありますが、九州支社の取り組みとして、私は里山の自然を守ろうという「里山保全活動」に2回ほど参加し、ゴミ拾いなどを行いました。
山下/鹿児島営業所の場合、単独での清掃活動は小規模なので、鹿児島中央駅周辺まちづくり推進協議会や中央駅振興会と連携し、年4回、鹿児島中央駅周辺の清掃活動に参加しています。コロナ禍の影響で、ここ2年ほどは開催できませんでしたが、いつも100名程が集まっており、今後も積極的に参加していこうと考えています。
井上/鹿児島市の「OKかごしまライフスタイルデザインプロジェクト」の一環で行っているものとして、「ライトダウン活動」があります。これは、6月21日の夏至の日に全国で開催される「100万人のキャンドルナイト(※)」にあわせた取り組みです。駅前の商業施設が観覧車のライトアップを消すなど、賛同した企業は電力削減に協力し、鹿児島営業所でも、この日は仕事を早めに切り上げて帰宅します。
兵藤/今年10月には、鹿児島を拠点とするプロサッカーチームのホームゲームに、児童養護施設・障がい者施設の子供たちを招待する予定です。社会貢献活動の一環として実施したいと考えています。
※ 「でんきを消して、スローな夜を」を合言葉に、夜8時から10時までの2時間電気を消して、ゆっくり考える時間を持つことを提唱する取り組み。
小さなことを、積み上げていく
井上/印象的だったのは、「みつびしでんき科学教室」ですね。子どもたちの生き生きとした笑顔や発見の驚きを目の当たりにし、こういう機会の意義を実感しました。保護者の方の生の声を聞くことができたのも、自分にとって大きかったと思います。次回も、子どもたちの笑顔に出会えるのが楽しみです。
山下/当社の省エネ製品をさまざまな人たちに勧めてきましたが、私自身はあまり省エネを強く意識せずに日々の生活を送ってきたように思います。自分一人が小さいことをしても、どうせ大した影響力はないだろうと考えがちでしたが、実はそうでなく、一人ひとりの小さな行動の積み重ねが大きな力・動きにつながります。大きな目標だとしても、自分事として受け止め、身近なことから小さな一歩を積み重ねることが大切で、それを貢献活動で実感できたのが、自分の行動変容につながっている気がします。
井上/大学生とのワークショップでも、我々大人よりも、若い人の方が真剣に自分事として捉えていて、そういう若者が増えて、みんなの意識が変わることで、社会全体の行動変容が加速していくと思います。
兵藤/鹿児島営業所は地域との関わりが強く、純粋に地域社会の一員として、貢献活動に参加するのが当たり前になりました。こうした地域のつながりを通じて、いろいろな話に耳を傾けることで、地域が抱える課題に対して行動を起こしていく。鹿児島という地域を理解し、その課題を知るためにも、こうした貢献活動は大きな一助になると思います。
小さくても、光る活動を続けていく
兵藤/今後も、一つ一つ中身を吟味しながら、小さくても光る活動をしていきたいと考えています。鹿児島市が掲げる「ゼロカーボンシティかごしま」実現に向けた活動も、民間企業がどう受け止め、事業化していくかで変わってくると思います。あくまで意識変革のきっかけであり、ビジネスチャンスにつなげることで、世の中を変えていく。まずは2050年というゴールに向けて、社会貢献と経済活動の両輪で進める中で、最終的なイメージが見えてくると考えています。
井上/営業所のリソースには限りがあるので、いろいろな方面からサポートを得ながら、できることを少しずつ進めて、その課題を一つ一つクリアした先に、ゴールイメージが見えてくると思います。
山下/2050年までにゼロカーボンを達成するという目標は、すごく先の未来に思えますが、あと20数年で実現するとなると、まず自分たちの世代が行動を起こし、次に引き継いでいく必要があります。そのためにも、しっかり成果を積み上げていかなければなりません。それには、自らの日々の小さな行動はもちろん、当社としてお客様の課題に耳を傾けながら、目標達成に向けた活動を継続することで、ゴールにつなげていく必要があると思います。
兵藤/鹿児島は真面目で誠実な気質の人が多く、カーボンニュートラル実現に向けた活動に真摯に取り組んでいる会社が多いという印象です。その意味では、本日、お話を伺う久永情報マネジメント(株)の久永社長も、そういう動きに敏感に反応された経営者の一人だと思います。いろいろなことを伺ってみたいと思います。
―ありがとうございました。
「ゼロカーボンシティかごしま」に向けた
鹿児島市の取り組みをご紹介!
クリーンな公用車を導入
2050年までに、CO2排出実質ゼロ都市を実現する「ゼロカーボンシティかごしま」への挑戦を宣言した鹿児島市では、市公用車として走行時にCO2を排出しない電気自動車や燃料電池自動車を導入しています。
電気自動車は、エコをイメージするグリーン基調の車体に、ブルーの電気コード、そのコードが鹿児島のシンボル桜島を表現し、オレンジの文字と“ECO”と書かれた葉などを配した、クリーンで爽やかなデザインが施されています。
バイオガス施設を備えた、南部清掃工場へ
鹿児島市南部地区の燃やせるごみを回収し、ごみ焼却施設220トン/日、バイオガス施設60トン/日の処理能力を備える南部清掃工場。ここは、ごみ焼却で生じる焼却廃熱を利用した高効率発電施設と、生ごみや紙ごみなどの発酵で発生するバイオガスを精製し、都市ガスの原料となるメタンガスとしてガス会社に供給するバイオガス施設の2つの施設を併設し、エネルギーの地産地消を推進しています。運び込まれたごみをクレーンで拡散するごみピットの様子や、850℃以上の高温でごみを燃やす焼却炉内部の様子を映すモニター、微生物を使ってバイオガスをつくる発酵槽、バイオガスからメタンガスを精製するバイオガス精製設備などを見学しました。
かごしま環境未来館で、環境を体験する
かごしま環境未来館は、鹿児島市の環境学習や環境保全活動の拠点で、環境問題を紹介する館内展示をはじめ、環境関連の講座やイベントも開催しています。4つのゾーンに分かれた展示スペースでは、映像だけではなく、手に取って動かしたり、見て触れて体感したりする体験型の展示など、誰もがわかりやすく気候変動や生物多様性を学べます。建物の屋上は、芝生によって緑化され、太陽光発電パネル、雨水を散水や清掃に利用する雨水貯水タンクを完備するなど、環境に配慮した建物となっています。電気自動車普及促進のための急速充電スタンドも設置、公用車として活躍する燃料電池自動車も待機しています。燃料電池自動車は、水素と酸素の化学反応で発生する電気で走り、排出されるのは水のみ。「ミライとイキル」がコンセプトの環境にやさしい乗り物として、ブルーの爽やかなデザインがペイントされた特徴的な一台です。
使い捨てから循環型社会へ向かうため、
私たちに価値観の変容が求められている。
鹿児島市のSDGs推進パートナーであり、SDGs経営を推進、2021年の新社屋建造に際して、鹿児島県で初の事例としてZEB Readyで「BELS認証」を取得された「久永情報マネジメント株式会社」の久永 修平社長に、SDGs経営に舵を切った理由、新社屋への想い、そして、カーボンニュートラル実現に向けた具体的な取り組みなどついて伺いました。
いち早く、SDGs経営へ
兵藤/御社は、50年以上の歴史をお持ちですが、久永グループには100周年を迎えた企業もあり、地域に根ざした事業を展開されています。
久永/創業58年目の久永情報マネジメント(株)は、電子ファイリングとGIS(Geographic Information System:地理情報システム)の2つの分野をビジネスの柱としています。電子ファイリングは、もともとマイクロフィルムのファイリングが電子ファイルに置き換わったもので、GISについては、地図印刷から発展した事業として、主に自治体向けに各種地理情報を提供しています。
兵藤/他に先駆けたSDGs経営は、何がきっかけだったのでしょう?
久永/グループ企業の(株)久永が3年前に創業100周年を迎えました。100年はあくまで通過点ですが、次の100年に向けて、どういうビジネスを展開していくのか、と考えた時に、持続可能な経営とSDGsには親和性があると考え、いろいろ勉強しました。2019年の経済産業省の資料の中に、SDGsを謳った経営はどうあるべきかという「SDGs経営」について書かれたものがあり、それを読んだ時にぴんと来るものがありました。そこでまず、SDGsの17項目を5つの目標として纏めて、「SDGs経営」として落とし込んで、全社に浸透させる取り組みをしました。これまでの経営は、まず、売上・利益など数値目標が重要でした。当たり前のことですが、持続可能な経営を突き詰めると、社員の成長や健康、環境配慮の重要性の認識なしに経営は成り立たないというところにたどり着きます。事業の強みを見据えながら、未来志向の会社を創っていくには、常にイノベーションを起こしていかなければなりません。社員にSDGs経営と事業計画の関連性を説明しながら、久永情報マネジメント(株)としてのSDGs経営を浸透させていきました。
兵藤/2019年を境に、それまでの流れや企業としてのあり方を大きく転換したわけですね。
久永/そうです。SDGsのスタートが2016年。当社は2018年頃にSDGsについて学び始め、2019年から事業計画に落とし込んでいきました。周りは、SDGsって何?という雰囲気だったので、まずSDGsの「バッジ」を胸につけるところから始めました。すると、必ずお客様から、「それは何ですか?」と聞かれるので、社員は応えなければなりません。そこで、SDGsの取り組みをパンフレットにまとめ、
①人財教育と社員の健康
②環境配慮の事業活動
③価値ある製品・サービス
④社会貢献とイノベーション
の4つの目標をSDGs達成に向けた取り組みとして掲載しました。このパンフレットは、お客様への説明資料であると同時に社員が会社のあるべき姿を理解するための資料でもあります。それぞれの目標に対する具体的な取り組みとして、人財育成のための階層別研修、資格取得の支援も充実させました。社員の健康はすべてに優先することを宣言し、ワークライフバランスと家族の幸せの実現に向けて環境整備をしています。
環境配慮については、DXを推進し、ペーパレス化とデジタル化による情報の共有化と活用、ZEBビルを活かした環境啓蒙活動や職場改善と5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を徹底実施しています。製品・サービスは、主なお客様である行政に向けて、GISでの農業振興・ドローン・3次元スキャナーを活用したスマート林業のDX対応、ファイリングでの歴史的公文書の保存など、当社の強みを生かして業務効率化に貢献できるよう努めています。最後に、常にイノベーションを意識し、お客様のご要望を先取り出来るようにコミュニケーションに努め活動しています。これに沿って事業計画が策定されていますので、結果として人財が成長し、環境に優しい事業で業績が達成され、次のイノベーションにチャレンジするという好循環を生みます。コロナ禍でも業績が上向いているのは、効果が徐々に出てきているからだと思います。
久永グループ100年目の危機意識
兵藤/3年という短期間で一気に浸透させ、好循環に結びつけるのは、なかなかできないことです。
久永/100年目の危機感です。100周年を迎え、もしすぐに潰れたら、「え?」って感じでしょう(笑)。節目を迎えたといっても、終着点ではない。通過点です。次の100年に向けて、何を目標に経営し事業を継続することが重要です。持続可能な社会を実現するためにSDGsをテーマに目標を掲げることにしました。当然、全員にいきなりSDGs経営と言われても社員は理解できないと思いましたので、まず、(株)久永で部長の皆さんとディスカッションを重ね、その後、課長クラスと話をし、社員との対話の場を設ける3段階でアプローチしました。次にグループ企業である久永情報マネジメント(株)にも段階的に浸透させていきました。
兵藤/人材教育と社員の健康を一番に掲げていらっしゃるのは、素晴らしいことだと思います。
久永/社員が健康でなければ良い仕事はできませんし、社員も一人では仕事ができない。そういう元気な社員のつながりで仕事は成り立っています。社員教育で社員の提案力、サポート力、技術力を育成していくことでお客様満足度も上がり、会社はお客様から信頼され、業績を達成し成長していくものだと思います。
兵藤/成功の秘訣ですね。
エネルギーをすべて”見える化”に
兵藤/御社は、2021年3月に新社屋を建設され、ZEB Readyによる「BELS認証」を取得されていますが、きっかけを教えてください。
久永/2018年に鹿児島で行われた三菱電機さんのセミナーでZEBについて聴講し、興味を持ったのが、そもそものきっかけです。久永情報マネジメント(株)の新社屋を建設するのであれば、このタイミングでZEBにしておかないと、将来は、大きく価値が低下することになってしまう。今、最新の環境配慮ビル、社員が働きやすい空間には価値があると考え、長期にその価値を維持するためには、絶対にZEBにしたいと。それで踏み切りました。また、(株)久永の宮崎支店も昨年4月にZEBで建設し、再来年に建設予定の川内営業所もZEBで設計を進めています。
兵藤/この社屋は、鹿児島県で初めてのZEBの認証事例ですね。
久永/県内のオフィスとしては最初の事例で、設計会社、建築会社もすべてZEBが初めての経験だったので、皆さん、勉強になりましたとおっしゃって頂き、私も嬉しかったです。三菱電機さんをはじめ皆様のご協力があったからこそ、自慢できる職場が完成しました。
兵藤/新しいものをどんどん取り入れていく、久永社長の姿勢には感服します。今年6月に当社本社で開催した展示会にお越しいただいた際にも、すべてのブースを2時間以上かけて回りながら、精力的に情報を吸収される姿勢は、見習わなければ、と思いました。
久永/せっかく足を運んだからには、いろいろ見たいし、知りたいですからね(笑)。
兵藤/社屋完成後の社内の変化は、いかがですか?
久永/社員のモチベーションもあがり、生産性も上がっていると思います。テレワーク・WEB会議の活用など働き方改革も進みました。
兵藤/当社製の空調、照明、換気が使われていますが、どうでしょう?
久永/社員も快適な環境に満足しています。夏の時期はエアコンを稼働しますが、4〜6月は、「ロスナイ」で効率的に熱交換し、換気だけで十分快適に過ごせました。外壁を高断熱化しているので、保温性がいいのでしょうね。照明もトイレや階段は人感センサーで電気の無駄を省き、エレベーターでは電力回生装置で、高い省エネレベルを実現出来ていると思います。また、これら設備を「BEMS(Building Energy Management System)」によってエネルギーをすべて“見える化”し、管理しているので一目瞭然です。電気代は昨年の半分で済みました。社員の省エネルギーへの意識も高まっています。お客様にも、当社の省エネルギーの仕組みや地球温暖化対策への貢献について、紹介しています。
最先端を走り続けていく
兵藤/綺麗なオフィスで、フリーアドレス。ここまで徹底しているオフィスというのは、鹿児島ではあまり例がないように思いますが、社員の方の反応はいかがですか?
久永/部屋にアートや置物を飾るなど、明るく楽しい職場環境になったので喜んでいます。アイデアを出し合い、コミュニケーションの取りやすい、働きやすい環境づくりに取り組んでいます。沖縄のオフィスとも、モニターで常時接続していますので、隣で仕事をしているような親近感を感じます。打ち合わせもモバイルで繋ぎ、どこにいても参加できるようにしています。技術者の在宅勤務も増えていますし、営業での移動先からでも参加できます。いつでもどこでも、社員の都合のいい時に仕事ができるよう、常に他に先駆けて出来ることにチャレンジ、それが大切だと思います。
兵藤/お客様や取引先の反応は、いかがですか?
久永/今、ビジネスが「モノからコト」へシフトし、単にシステムを売るのではなく、効率的で生産性が上がるソリューションが求められています。そのためには、お客様である行政の方々のお仕事の内容・目的を理解し、コミュニケーションを密にし、新たなシステムを開発するなど、行政のイノベーションを支援しています。昨年は、鹿児島大学との連携で農業振興ビジョンを策定するなど、新たなテーマのビジネスも手がけました。
また、(株)久永では、働き方改革をテーマに、オフィスの空間づくりをお手伝いしていますが、この社屋を紹介し、ZEBによる快適な職場環境づくり、フリーアドレス化によるコミュニケーションの向上、DXによる仕事の生産性向上などを実際に見て体験いただき、提案しています。
兵藤/一つの先進的な事例としてご活用いただいているということですね。
桜島が育む、鹿児島人気質
―鹿児島には、最先端のものを受け入れ、育む土壌みたいなものがあるのでしょうか?
久永/桜島のエネルギッシュな存在は大きいかもしれませんね。間近に見ながら育つので、精神面で影響を受けているかもしれません。目から入る、あの雄大さ。美しく堂々とした存在感とすべてを包み込むような優しさ。その表情が、日や季節によって変化する面白さがあります。
兵藤/今後の展望については、どのようにお考えでしょうか?
久永/SDGs経営を地道に継続していくことだと思います。自社だけでなくお客様やパートナー、行政、大学、金融機関といった方々と連携しながら、SDGsを共通言語とし、新たなビジネスを創っていく。そこから新たな価値が生まれていくような気がします。
環境面で言うと、SDGs先進地として知られる鹿児島の大崎町は、ゴミのリサイクルの日本一を12年連続で達成している自治体ですが、サーキュラービレッジ構想を掲げ、サーキュラーエコノミーの実践、つまりゴミの分別だけではなくて、モノづくりを素材(原料)・製造・流通・販売・消費者、廃棄業者(リサイクル業者:原料へ)までの、循環型社会のあるべき姿を模索しています。日本はそもそも資源のない国なので、資源を輸入することなく国内で回すことができれば、環境に優しく資源リスクは軽減できます。これは早急にやるべきで、リサイクルからサーキュラーエコノミーへ、ということを考えています。そうした商品を適正な価格で販売し、大切に長く使っていただく。安く作って、使い捨てる時代は終わりです。高くても長く使えば、結局得になる、そういう価値観の変容が必要です。
兵藤/当社に対して期待することがありましたら、ぜひお聞かせください。
久永/東京(三菱電機本社)の展示会では、ロボット技術、高速の転送システムなど、先進技術を拝見したので、そういう新しいものをビジネスに取り入れながら、何か一緒に世の中の役に立てる、新しい価値を生み出すことができればと期待しています。
兵藤/お客様の満足の先にある、社会の満足、社会貢献が、私たちの使命ですので、久永社長との連携は大きな力になると思います。いろいろヒントもいただいているので、パートナーとして連携させていただきながら、社会的にインパクトのあることを実現できたらと思います。
―本日は、ありがとうございました。
名勝・仙巌園で、カーボンニュートラルな未来に思いを馳せる
雄大な桜島を望む、名勝「仙巌園」。かつて島津家19代当主の光久によって築かれた別邸で、鹿児島のシンボルでもある桜島を築山に、錦江湾を池に見立てるという壮大な大名庭園。そのスケールの大きさと比類なき美しさには目を見張ります。「南の玄関口」として、海外とのつながりも深かった薩摩。その島津家28代当主の斉彬は、近代化・工業化の道へ踏み出すことで、近代日本の礎を築き、技術立国としての原点ともなりました。その歴史とカーボンニュートラル実現に向けた活動を展開する鹿児島の動きは、どこかで通底しているようにも思えます。
桜島との共存の道を選び、その移ろいを眺めながら生きる鹿児島人にとって、この活火山の存在が精神的土壌に与える影響は、決して小さいものではないはずです。雄大で美しく、魅力と恐ろしさを兼ね備えた存在として、人々の心に、その姿を深く刻み込んでいる桜島は、鹿児島の過去を今につなぎ、さらに未来への架け橋にもなる、そんな大きな存在でもあるのかもしれません。
まとめ
今日1日、改めて鹿児島の地について考える良い機会となりました。鹿児島営業所を、地場とのつながりやネットワーク、様々なアイデアや情報が行き交う、そんな活発な人的交流と情報交流の場、新しい価値が生まれる場にしていきたいと思います。
地域の方のご協力をいただきながら、リポートできたのは、これまでの長い関係性や信頼に根ざしたつながりがあるからだと思います。今後もこの関わりを未来に向けてつないでいけるよう、小さなことから積み上げていきたいと思います。
もともと鹿児島人ですが、客観的な視点から地元をリポートする機会は初めてで、新鮮な経験でした。改めて鹿児島の地から、新しい未来を創る貢献活動について発信できたことは、現状と未来を考える貴重な機会になったと思います。