サントリー株式会社 京都ビール工場様
自動搬送システム
(AMR+産業用ロボット)
"共創"で実現した新たなチャレンジ
~搬送工程の自動化への挑戦~
今回は三菱電機株式会社 関西支社、三菱電機システムサービス株式会社、三菱電機特機システム株式会社が一丸となり、
サントリー株式会社 京都ビール工場様に、自動搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)を用いた搬送作業の自動化システムを提案し、ご採用いただいた事例の紹介です。(2022年12月20日撮影)
1969年、サントリービール第2の生産拠点として、良質な天然水が汲み上がる京都府長岡京市に、サントリー京都ビール工場を開設。西日本の主力工場として、積極的に設備増強と新規技術の導入を行い、優れた材料と最新の設備を用いて、こだわりの製品を提供しています。
また当工場では、ダイナミックなものづくりの現場を抜群の臨場感で体感できる工場見学ツアーが大変好評です。
三菱電機FA製品のアフターサービスから培った技術・技能を活かし、生産現場のシステム提案から設計・施工・保守まで一気通貫のエンジニアリングサービスを提供しています。
自社開発する監視・制御システム(SA1-Ⅲ)とセンシング技術を駆使して、生産現場のあらゆる情報をリアルタイムに収集し、人・機械・材料などの動きや流れを解析。ボトルネック工程の改善活動やTCO削減に貢献するトータルIoTソリューションを提案しています。
感動を呼ぶSIで永続的にお客様に貢献する"Sustainable Supporting SIer"を目指す、総合エンジニアリング会社です。
マイクロ波ICの製造からシステムエンジニアリングまで、幅広い先端技術で、人工衛星に代表される宇宙システムや航空機搭載のエレクトロニクス機器、これらの地上ネットワーク、レーダシステム等の開発、製造、メンテナンスを行っているハイテク集団です。
また近年、自動搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)に代表されるロボットの開発や製造も行っており、製造業等における様々なソリューションを提案、支援しています。
導入事例一覧
CC-LINK-IE-Control Network に接続されたライン設備からの指令に基づき、産業用・協働用ロボットMELFAと自動搬送ロボットMELporter(AMR)がシステム連携。他社の設備ともシームレスに連携することで、各種ワークのスムーズな受け渡しを実現します。
導入事例詳細
「人手不足を埋める、生産性を高める、時間を縮める」
AMRによる自動搬送で生産性の向上、省人化を実現します。
・SLAM方式※による自律走行でガイドレス走行を実現。
・複数台のカメラとセンサーで障害物を検知、回避。
・使いやすいユーザーI/Fで簡単操作が可能。
・コンベア搭載など、カスタマイズにも対応。
※SLAM… Simultaneous Localization and Mapping
【詳細】
※通路幅として1,000mm以上、その他条件があります。
RV-13FRL-D
ビジョンセンサや力覚センサ等の知能化技術の活用により人の手でしかできなかった作業の高度な自動化に貢献します。
また立ち上げ~点検、修理部品の保証延長までのアフターサービスをパッケージ化することでトータルサポートを実現いたします
・位置・速度監視機能等の安全にかかわる機能搭載で、人との協働作業が可能。
・当社製PLC等の様々な製品と接続・連携することで生産状況に応じたフレキシブルなものづくりを実現。
【詳細】
監視・制御システム SA1-Ⅲは、製造現場における『人・機械・材料・作業・検査+環境(5M+1E)』などのあらゆる情報をシームレスに繋ぎ、生産活動全体を監視・管理することで様々な原因による生産停滞を防止できます。
・オペレーター室に管理PCを設置。AMRの稼働状況やフリート制御、バッテリー残量、搬送中のワーク種類などの情報をSA1-Ⅲでモニタリングすることで遠隔での管理・監視作業を実現。
・システムの異常履歴やAMRの搬送実績等の過去データをPC上に保存することで、原因分析・改善作業に貢献。
【詳細】
対談出演者のご紹介
-
サントリー株式会社
京都ビール工場
工場長
小銀 明様 -
サントリー株式会社
京都ビール工場
技師長
(エンジニアリング
担当)
高尾 修司様 -
サントリー株式会社
京都ビール工場
エンジニアリング部門
朝岡 大地様 -
三菱電機株式会社
関西支社
支社長
三条 寛和 -
三菱電機
システムサービス
株式会社
産業システムセンター
副センター長
直川 秀雄 -
三菱電機
特機システム株式会社
東部事業部
電子システム部
専門部長
矢野 寛
対談
Q:今回、サントリー様の京都ビール工場において、新たにラインを増設されましたが、増設に至る背景と、新たなラインで取り組みたかったことなどについてお教えくださいますか。
- サントリー 小銀工場長(以下 小銀工場長):
- サントリーは創業者鳥井信治郎の信条にならって「やってみなはれ」の精神をもって新事業の創出や新商品の開発に積極果敢に取り組んでまいりました。
今回実施した缶ラインの増設においても、その精神を持って新たな取組みにチャレンジすることとなりました。
ライン増設の背景には、将来想定される人手不足や市場環境変化への対応、品質保証レベルの向上など、重要な経営課題を解決するための様々なミッションがありました。これらのミッションを達成するために、ロボットやIT活用による「搬送工程の自動化」という難しいテーマにチャレンジしました。
- 三菱電機株式会社 三条(以下 三条):
- はじめに、長年、良好な関係を結ばせていただいている
サントリー様から共創の機会をいただけたことは非常に喜ばしく、感謝の気持ちでいっぱいです。
また、商談を通じて、サントリー様の経営課題に対してチャレンジする姿勢、「やってみなはれ」の精神を間近で感じさせていただけたことは我々にとっても大変良い刺激となりました。
「搬送工程の自動化」に関して、三菱電機グループでは、高精度の自律搬送ロボット(以下 AMR:Autonomous Mobile Robot)を開発する三菱電機特機システムと、システムエンジニアリングから工事・メンテナンスまで幅広いサービスを手掛ける三菱電機システムサービスがタッグを組むことで包括的なソリューションをご提供できると自負しております。この度のお話をいただいた際も、そうした三菱電機グループの総力を結集することで、サントリー様のチャレンジを共に実現したいと考えました。
Q:「搬送工程の自動化」については、これまでにも京都工場でご検討されていたとお聞きしましたが、搬送の自動化に取り組む上での課題はどういったものがありましたか。
- サントリー 朝岡様(以下 朝岡様):
- 「安全面に対する配慮」が課題として挙がりました。私たち
サントリーは「安全」にこだわりを持っております。今回も人とAMRが同じエリアで作業することから「いかに人の安全を確保するか」が重要な課題となりました。
今回、三菱電機様からセンサーとカメラを使った安全性能に優れたAMRを軸とした搬送システムをご提案いただいた点は、私たちにとっては安心材料のひとつでした。
- 三菱電機特機システム株式会社 矢野(以下 矢野):
- AMRを活用した自動搬送においては、安全面を第一に優先して取り組みましたが、同時に目標の搬送量を満たすための走行速度の確保や、人だけでなく商品の安全面(ex.缶や包装ケースにも傷をつけない)への配慮も必要でした。
これらの難しい課題を解決するため、サントリー様とは導入前に綿密な打合せを重ね、優先して順守すべきことの整理や、AMRにできること・できないことを前広に共有、協議することで、
サントリー様のニーズを満たしたシステムをご提供することができたと考えております。
- 三条:
- 安全面については、弊社も全く妥協することなく、こだわりを持ってサントリー様のご要望にお応えできるよう開発に取り組みました。
その点を評価していただけたことは大変嬉しく思っております。
Q:「搬送工程の自動化」というチャレンジに向けて、AMRの導入をご検討されましたが、導入のプロジェクトを進めていく中で特に苦労した点をお聞かせくださいますか。
- 朝岡様:
- 他社の生産設備との連携やAMRの適切な台数試算には多くの時間を費やしました。また「搬送工程の自動化」の要となるAMRは工場内を自動で動き回るため、建屋や他社の生産設備との共存をどう実現させるかが課題でした。今回は既に稼働している工場に導入する計画でしたので、既存設備との連携はもちろん、床の段差や勾配といった「人」なら気にならない障害も自動搬送を実現する際には大きな障壁となり、困難を極めました。
- 三条:
- 「搬送作業」というのは作業の内容やタイミングが多岐に渡ります。また新しい建屋ではなく既設の建屋への導入となると、AMRの走行に影響を及ぼす様々な問題(限られたスペースへのマッチング等)にも配慮が必要でした。
今回の導入はかなり難易度の高いご要望であったことは間違いありません(笑)。
- 矢野:
- 「既存設備との共存」はとても難しい課題でした。この課題を打破すべく、コンベアを搭載しつつもAMRの背丈を低く抑え、コンパクトな製品に仕上げることで、設備の混み合う手狭な空間においてもご要望に適った搬送と走行ができるAMRをご提供できたものと考えております。またAMRは大型設備の隙間を縫うような走行が必要でしたので、AMRの走行特性を考慮したシミュレーションを行うなど、システムアップに向けて検討を重ねました。さらに机上での検討を確実なものとするために、三菱電機システムサービスに実際の生産エリアと同じサイズの試験場を準備いただき、デモ機を用いた走行試験を長期に渡って実施しました。これによりお互いに導入前の様々な問題や改善案を共有することができ、課題の解決に取り組むことができたと考えております。
- 三菱電機システムサービス 直川(以下 直川):
- 今回、サントリー様と密にコミュニケーションをとることができましたので、AMRや産業用ロボットを用いた当社の自動搬送システムと他社が納める生産設備とのシステム連携の作業に関しては、スムーズに着手することができました。また、三菱電機特機システムと共に行ったシミュレーション試験の情報をもとに、SIerとして培ってきた当社の高い技術力を活かして、最適なAMRの台数試算や走行ルートの検証にも前広に取り組むことができたと考えております。
Q:「自動搬送システム」の導入にあたって、検討期間や選考ポイントについて教えてください。また三菱電機のシステムの採用の決め手はどういった点でしょうか。
- 朝岡様:
- 検討開始から三菱電機様にお願いするまでの期間は約10ヵ月ほどでした。
導入にあたり重視したポイントはAMRの「作業性能」、「操作性能」、「停止性能」、そしてもちろん「安全性能」です。
これらを踏まえて、三菱電機様にお願いした理由は大きく2つあります。
1つは、三菱電機グループの皆様から総合的に大変レベルの高いソリューション提案をいただけたことです。特に人とAMRの共存については、他のメーカーにはない優れた提案をいただきました。
具体的には、通常であれば私たちサントリーから「こういうプランをやりたい」と要望を出すことが多いのですが、三菱電機様からは先回りした新たな気づきが得られるような魅力的なご提案をいただくことも数多くあり、そのお陰でプロジェクトが大変スムーズに進行しました。
- 三条:
- 弊社としてもお客様が望んでいることはできる限りお応えしたいと考えております。
「三菱電機の機器を購入していただくだけで、それ以外のことはやらない」といったことは絶対にしたくはありません。今回も三菱電機グループでお手伝いできることは全てやろうと思っていたため、AMR単体だけではなくシステム含めたソリューションのご提案を心掛けました。
また、最初にお話をいただいた際にはサントリー様も「搬送工程の自動化」に対して課題を感じられてはいたものの、漠然としたお悩みやご要望をお持ちであったと認識しております。弊社はそれらのお悩みやご要望を一つ一つ細かく整理し「一緒になって課題を解決していく」という姿勢で取り組ませていただきました。
- サントリー 高尾技師長(以下 高尾技師長):
- 採用の決め手となったもう1つの理由は、三菱電機システムサービス様がSIerとしてのノウハウを豊富にお持ちで、パートナーシップを結ぶのに十分な実績があることも大きかったです。他のサントリーグループの会社からも話を聞いていたのですが、とても信頼できると評判でした。
- 直川:
- SIerとして積み重ねてきた実績が評価されたことは大変嬉しく光栄です。
また、今回は三菱電機グループ内の連携もスムーズに進んだと思います。信頼できるサントリー様だからこそ、素晴らしいシステムを"共に創り上げる"ことができたと改めて強く実感しております。
- 三条:
- 今回のご計画においては、三菱電機グループとしても新しい領域へのチャレンジでしたので「できること・できないこと」をしっかりと分析し、その上でご要望にお応えするために最大限のチャレンジをいたしました。
グループ内でもお互いにかなり無理を言い合うこともありましたが、絶対に妥協せずに細部までこだわり抜くことができました。
- 朝岡様:
- 三菱電機様がこだわりを持って取り組んでいただける姿勢は私たちサントリーとしても、とても心強かったです。「そこまでやらなくても」というところまで絶対妥協せず、こだわる姿を実際に何度も拝見しました。難しい課題に対して、限界まで挑戦いただけたと実感しております。
Q:「自動搬送システム」導入によって実現した成果についてお教えくださいますか。
- 小銀工場長:
- 難易度の高い課題にチャレンジしたことで得られた成果としては、従来の生産ラインと比べて全体の作業工数が約3割削減となりました。品質チェックの精度や頻度も向上し、より高いレベルで品質保証ができる見込みとなっています。
また「運搬」などの単純作業でも労災のリスクはつきまといます。そのような作業を簡略化することで心身の負担を減らし、より創造性が必要な五感を使う仕事に時間を費やすことができるようになりました。
- 矢野:
- AMRのご提供により、安全・省力化・品質向上等に貢献することが我々の使命ですので、作業者の負担減に繋がっていることは、誠にうれしい限りです。
Q:導入後の三菱電機グループのサポートについて、特に印象に残っていることがありましたらお教えくださいますか。
- 朝岡様:
- 今回、導入に際しては様々なことにチャレンジしましたので当然トラブルや不具合というのは起こるものです。しかしトラブルが起きた際は、即日、遅くとも翌日には現場に駆けつけ、迅速にご対応いただけました。
また導入時に、こちらの設備都合で仕様変更が発生した際も、嫌な顔ひとつせず、逆に改善案をご提案いただけたのも印象的でした。
今回のような新しい取組みは仕様の変更が多いため、変更があった際にいかに早く対応してもらうかが重要であり、大変なことでもあります。ですので、様々なことに関して相談しやすい三菱電機グループの皆様の存在は、本当に助かります。
- 三条:
- サントリー様の「チャレンジしていく」姿勢を間近で拝見し、弊社グループ内でもモチベーションが高まり、社員一人ひとりがサントリー様の力になりたいと考え、それが素早い対応や提案に結びついたものと感じております。
相乗効果による業務への好影響をお互いに感じられる大変良い関係性だと思っています。
Q:三菱電機の「自動搬送システム」や「サービス」に、今後どの様な期待や要望を持っているかお教えくださいますか。
- 朝岡様:
- 今回の自動搬送システムは他のサントリーの主要工場でも導入を検討しております。
今後もチャンスがあれば三菱電機グループの皆様とさらに難易度の高いチャレンジに取り組みたいですね。また製造エリア以外(原料処理、物流、研究所など)についても自動搬送システムを活用できるエリアがあるのではないかと考えています。
- 小銀工場長:
- 弊社の中で、自動化が進んでいない工場や作業がまだまだありますので、積極的に自動化を推進していきたいと考えております。ぜひまた三菱電機グループの皆様とディスカッションをしながら、より良いものづくりを目指していければと思っています。
- 直川:
- まずは今回納めたシステムの安定稼働を最優先にしつつ、他の工場の同様の工程でも活躍できるよう、アップデートを図ってまいります。
また、3Dシミュレータを活用し、平面的な動きだけではなく、立体的な階層移動もシステム提案に盛り込むことで、様々な作業環境や用途で弊社のAMRとロボットを組合せて活用いただけるようなシステムをご提供したいと考えております。
- 三条:
- 私たちは、三菱電機グループの技術を活用して、企業の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進したいと考えております。「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」を目指す三菱電機は、引き続き「DX×ロボット」の連携による、スマートファクトリーの実現に向けて新しい自動化提案も推進してまいります。
Q:今回を機にさらにより良いパートナー関係を結んだと思いますが、今後、サントリーと三菱電機グループはどのような関係に発展させていきたいですか?
- 高尾技師長:
- 三菱電機グループはグループとしての間口が大変広く、総合力も高いことから、これから先も様々な領域でご相談・お付き合いいただけると感じています。
これまでは導入した機器をどう使うか私たちで考えていましたが、三菱電機グループの皆様はそれを一緒に考えてくれますので、本当に助かっています。
今後もビール工場だけではなく、食品工場などそれぞれの工場で自動化を進めていくため、自動化に関するシステムを導入する際には真っ先に相談させていただこうと考えています。これからもよろしくお願いいたします。
- 三条:
- サントリー様には弊社グループの製品を多数ご使用いただいております。これまでも長いお付き合いがありましたが、今回のような「搬送工程の自動化」という大きな課題に関して一緒に取り組めたことによって、新たな関係性を築くことができたと感じています。
これからも日常業務では「困った時の三菱電機」ということで気軽にご相談いただき、新たなチャレンジにトライする時は、三菱電機グループに「やってみなはれ」のお声掛けをいただけるような関係でありたいと思っています。今後も末永いお付き合いをよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。
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