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製造業の人手不足を減らす現実的な解とは?

社会の課題を素早く読み解くヒント集 3min column 製造業の人手不足を減らす現実的な解とは?社会の課題を素早く読み解くヒント集 3min column 製造業の人手不足を減らす現実的な解とは?

生産現場での労働力不足が深刻になっている。少子高齢化の影響もあり、2050年の労働力人口(働く意思のある15歳以上)は2016年に比べ約2000万人少ない4600万人規模まで落ち込むと想定される。遠い未来の話でピンとこない人も多いかもしれないが、すでに足下でも企業は人材不足にあえいでおり、早急の対策が求められている格好だ。

2019年4月、東京商工リサーチがまとめた1本のレポートが金融業界の耳目を集めた。2018年度の人手不足関連の倒産件数が過去最高になったのだ。

倒産件数は400件で2017年度の331件から28・6%増となり、調査を開始した2013年以降で最も多かった2015年(345件)を上回った。

人手不足関連といっても、いくつかのタイプに分かれる。代表者や幹部役員の死亡などによる「後継者難」型は以前から全体の大半を占めるが数値はほぼ横ばいだ。一方、今回の調査で顕著になったのは生産現場での人手確保が困難なことによる「求人難」型の倒産の増加だ。76件で17年度の29件から約2・5倍となり、これは過去の調査で最も多い件数となった。また、人件費増から収益が悪化した倒産による「人件費高騰」型も30件で17年度の14件から約2倍に膨れ上がっている。文字通り、人材を確保できていない企業が事業継続が困難になっていることが浮き彫りになり、「融資先の人手不足のヒアリングは不可欠」(地銀関係者)との声もある。

労働力人口の減少の根本は、当然だが人口減少にある。人口減少の危機が広く共有されたのは2014年にまとめられた「増田レポート」だろう。2040年までに全国約1800市町村のうち約半数(896市町村)が消滅する恐れがあるとの発表に衝撃を覚えた人も多いはずだ。

もちろん、人口動態の変化は以前から把握できていたが、平成の時代は少子化対策に手が回らなかったというのが国の偽らざる本音だ。バブル崩壊は日本経済に深い爪痕を残し、それまで「絶対に潰れない」と思われていた金融機関が次々と破綻した。2000年代初頭まで金融危機を回避するのが国の最優先課題だった。結果的に、日本の出生数は2016年に100万人を割り込み、19年は90万人を下回る公算が大きい。

人口が減少している国は、当然だが、一人あたりの生産性を上げないと国内総生産(GDP)は伸びない。国は労働力確保のために、女性の活躍推進や高齢者、一部の外国人の雇用などで歯止めをかけようとしたが、対策は出尽くした感もある。

人口は一朝一夕で増えるものではない。現実的な「解」として期待できるのは工場現場の自動化や最新のテクノロジーを搭載した産業用機械の普及だろう。中小企業などでは熟練者に依存していて、代替が不可能になっている作業も少なくない。テクノロジーの発達で、機械が担う業務が拡大していけば、ニワトリと卵の関係で低コスト化が進む。そうなれば、大企業以外での活用も進むだろう。

工場現場の自動化は労働力人口の減少の切り札になると同時に、企業の姿が大きく変わる可能性も秘めている。

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