オンライン会議中についウトウトしてしまう。画面越しだと、初対面の人との会話がぎこちない。「対面式ならば、こんなことはなかったはずなのに…」。そんな経験がある人も少なくないはず。
物理的距離があると、心理的距離を縮めるのは簡単ではない。コロナ禍で多くの人が実感したはず。
その心の距離はテクノロジーが克服するかもしれない。画面越しの取引先の担当者や自分の上司がSF映画に見られる3Dのホログラムになって、目の前にあらわれる。そんな世界がすぐそこまできている。カギを握るのが「通信の高速化、大容量化」。
「5G(第5世代移動通信システム)」という言葉は皆さんもどこかで耳にしたことはあるでしょう。無線の国際標準の通信規格で2020年に実用化された。
通信規格は、ほぼ10年で世代交代が訪れる。世代が代わると何が起こるかというと、情報量が増え、通信速度が速くなる。例えば、5Gは4Gの100倍の速さで、情報量は1000倍になる。具体的な変化を挙げると、2時間の映画のダウンロードは、4Gで2時間ほどかかったのが、5Gでは数秒になる。
とはいえ、2022年現在、多くの人はまだ5Gの恩恵を受けていない。基地局が限定されていることもあり、普段4Gでつながり、時に5Gがつながるという状況。4Gという大海に5Gという島がいくつか浮いているイメージが近いだろう。
米半導体大手クアルコムの調査によれば、2035年までには5Gによる経済規模が12兆ドル以上に達すると試算されている。街中のあらゆる場所にカメラやセンサーが置かれ、モノには半導体が組み込まれる。常時ネットワークにつながり、データを吸い上げるインフラが街中で整うため、自動運転車も走行可能になる。これは、5Gにより通信が高速化するだけでなく、接続の確立や、通信時のデータの遅れが少なくなる「低遅延」も解消するからだ。
スマホの利用中に急に通信が不安定になる経験はだれもがあるはず。5Gになると、この確率が劇的に下がるため、スマホやパソコンだけでなく、「安定した通信」が絶対の条件となる産業向けの利用の可能性も広がる。あらゆる機器がネットにつながり、IoTがいよいよ本格普及する。
例えば、カメラとロボットを使った遠隔手術も実現するだろうし、地球の裏側と結んだ遠隔教育も日常の光景になるはず。クラウド経由でリアルタイム翻訳も可能になり、日本語しか話せなくても、オンライン会議で、遅延なく世界の人と会話ができるようになるでしょう。これらは夢物語ではなく、すでに実用化に向けて動き出している事例である。
通信の高速化と大容量化が、あらゆる産業を変える。2030年には5Gを超える6Gの実用化が見込まれている。これまで空想として描いていた世界が、手のすぐ届くところにある。