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エアコンの歴史は社会の課題に答えてきた歴史だった!

社会の課題を素早く読み解くヒント集 3min column エアコンの歴史は社会の課題に答えてきた歴史だった!社会の課題を素早く読み解くヒント集 3min column エアコンの歴史は社会の課題に答えてきた歴史だった!

春の開放感も手伝い、薄着で外出してしまい、帰宅時に後悔する。
ちょっと肌寒い。誰もが一度は経験があるはず。

空調機器をつけても部屋がなかなか暖まらない。デジタル機器に明るい人は、スマートフォンを使って遠隔で空調機器を操作するかもしれない。だが、設定温度が低すぎたのか、室内に入ると寒かったりする。

だが、現代のテクノロジー水準を考えると、その悩みは近い将来に解決するかもしれない。スマホを操作するだけで、天気をふまえ、あなたが好ましいと感じている温度に自動で調整してくれる日は、遅かれ早かれ訪れるでしょう。

もしかすると、スマホを操作する必要もなくなるかもしれない。マンションのエントランスをあなたが通過する時に、設置されたカメラが目の瞳孔の虹彩パターンから個人を識別・特定し、あなたが何も考えなくても心地よい室温にAI(人工知能)が設定してくれる世界。まるでSF映画のワンシーンだが、そもそも空調機器(エアコン)は誕生以来、新しいテクノロジーの象徴であった。

エアコンは1903年にニューヨークの印刷会社で産声を上げたというのが通説で、当時の印刷業界では、色を重ねる多色刷りの際に温度や湿度の変化で紙が伸縮して、印刷にズレが生じることが課題だった。そこで冷却や除湿の機能を備えて、ズレを防ぐ空調機が開発された。暑さや寒さではなく、「印刷のズレ」というテクノロジーの課題がエアコンを生んだというのは何とも意外で興味深い。

ただ、この頃は、エアコンが温度を下げる働きをする「冷媒」に漏れると危険なアンモニアを使っていた。「安全」な冷媒の開発が焦点になり、1930年に毒性がほとんどない上に燃えないフロンの合成に成功し、これが普及のきっかけになる。「安全」が保障されたことで、ホテルや百貨店、工場、そして、家庭に広がっていった。日本で国産の家庭用クーラーの登場は戦後で、1950年代初めに当社などが発売した。

その後の技術開発は「安全」だけでなく「環境」「省エネ」がキーワードになった。フロンの中にオゾン層を破壊する成分があることがわかり、国際的な規制によって、オゾン層に影響しないフロンやフロン以外の代替品への転換が進んだ。エアコンは家庭の電力消費で最も大きいこともあり、省エネ設計も迫られた。

そして、「安全」「省エネ」「環境」に並び今世紀からキーワードになっているのが「デジタル」。社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)はモノづくりの工程も大きく変えたが、製品そのものの利便性も変えた。スマホのアプリでのエアコン操作やAIを使った空調操作はすでに実用化されている。デジタル認証技術などをうまく組み合わせれば、冒頭の映画のようなワンシーンが現実の光景となる日も遠くない。

エアコンは高度経済成長期の1960年代半ばにカラーテレビ、自家用車(カー)と並び、クーラーの頭文字をとって「3C」と呼ばれた。多くの国民の憧れの的だったが、2021年の普及率は92.2%。それも、一家に一台ではなく、1世帯当たりの保有台数も3.07台まで増えている。多くの人が近未来の家電の利便性を享受している。

エアコンの歴史は社会の課題に答えてきた歴史でもあり、「安全、安心」という社会のニーズが高性能化を促したといっても過言ではない。現代の日本では多くの人にとってエアコンは「豊かさの象徴」から「あって当たり前の存在」になったが、社会が変わり続ける限り、エアコンもまた進化し続けるだろう。

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