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伊能忠敬が測った「富士山の高さ」、その驚異の数字

社会の課題を素早く読み解くヒント集 3min column 伊能忠敬が測った「富士山の高さ」、その驚異の数字社会の課題を素早く読み解くヒント集 3min column 伊能忠敬が測った「富士山の高さ」、その驚異の数字

富士山の高さは一般的に3,776メートルとされている。
正確に記せば、3,775.51メートルだが、この高さが認められたのは実はここ10年ほど。かつては3,928メートルとされたこともある。もちろん、富士山の高さがが急に変わったわけではない。

1816年、伊能忠敬は17年かけた測量作業を終えた。測量の時に伊能が目印にしたのが富士山だ。遠くから誰もが認識できる富士山は地図をつくる上で欠かせなかった。もちろん、伊能は富士山の高さも測定した。その高さが3,928メートルだった。伊能は地上での距離と方位、見上げた角度から計算した。

現在の標高になっている約3,776メートルは1926年の日本軍による測量がベースになっている。計測の原理は伊能の頃とほぼ同じだが、三角形量を厳密に採用した。三角形量は三角形の辺の長さと角度の関係を用いる測定法だ。3,775.51メートルに修正されたのは2014年と最近のことであるが、測定法は同じだ。

3,928メートルと3,776メートル。誤差は約150メートル。1860年に英国人が富士山の高さを4,300メートル余りとしたことを考えると伊能の計測技術が光る。

実際、伊能の測量をもとに彼の死後に完成した「大日本沿海輿地全図」と現代の日本地図との距離の誤差はごくわずかであることは広く知られる。

伊能は誰が測っても同じになるように何度も同じ場所を測量し、補正する作業を根気強く繰り返した。歩いた距離はのべ約4万キロメートル。地球一周分に相当する。測量当初は歩数で距離を測った。当然、歩幅を一定にするのは簡単ではない。歩幅を常に69センチメートルになるように調整したという逸話も残っている。巻き尺のような道具をつかうようになったのは調査開始してから1年くらい経ってから。試行錯誤を重ねたことがわかる。

伊能の調査から約200年、測量技術の進化は日進月歩だが、そうした中でも注目されているのが「LiDAR(ライダー)※1」と呼ばれる目に見えないレーザー光を照射して、被写体との距離や形を測定できる技術だ。

最近、スマホを機種変更した人はカメラ性能の高さに驚いただろう。特に「iPhone」で撮影すると、人物と背景の境界が鮮明に映る。この技術を支えるのが「LiDAR」なのだ。

また単に対象物を把握し、距離を測定できるだけでなく、周囲の状況を高い精度の3次元データで把握できるのも特長だ。空間認識に優れており、例えば、花火を背景に記念撮影しても人に焦点が正しく合わせられる。

この「LiDAR」を使った測量技術への期待は大きく、例えば、近年多発する水害などの調査現場で、人手不足や時間のロスを解消する切り札として活用を検討する業界も出てきている。身近なスマホを用いた計測。その精度には、伊能も驚愕であろう。

※1「Light Detection and Ranging」の略語

記事内の「iPhone」は、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。「iPhone」の商標は、アイホン(株)のライセンスに基づき使用されています。

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