意外と知らない。「海の温暖化」が生物に与える影響を学ぼう
おすすめ本の抜粋「トコトンやさしい地球学の本」
世界中で海に異変が起きています。日本では日本海などで、過去100年の間に0.7℃~1.7℃水温が上昇しています。本州からその南でよく獲れるブリは、北海道の海で大量に水揚げされ、2011年頃から増大しています。ブリは水温23℃が限界といわれており、魚は生息に適した水温があり、水温の変化で、生息域が変わってきました。水温が1℃上昇すれば魚に大きな影響を与えます。温暖化の影響で水温が上昇しています。
海の無酸素化拡大―海の生物の消失
大気の二酸化炭素の濃度を調節するため、海はその約3割を吸収しています。ところが人間活動から排出されている二酸化炭素は、海洋が吸収する限界を超えてきており、二酸化炭素の増大で海は酸性化が進んでいます。海は熱も吸収しています。海洋自身の温暖化です。二酸化炭素(CO2)は水に溶けると酸性となり生物の殻や骨格になっている炭酸カルシウムの生成を妨害します。
海水に溶けたCO2は炭酸水素イオン(HCO3-)や炭酸イオン(CO32-)のようなイオンになり、大半が炭酸水素イオンとして存在しています。CO2濃度が増えると、イオンが海水に溶けきれなくなって過飽和の状況となり、固体の炭酸カルシウム(CaCO3)を形成しやすい状態にします。二酸化炭素は海水中の炭化カルシウム(CaC2)を分解させるとともに、酸素を吸収して炭酸を生成し、酸素欠乏でプランクトンが生きられなくなります。ニシクロカジキは淀んだ深海には潜りません。巨大な低酸素海域があるからです。
海洋無酸素事変は海水中の酸素欠乏状態が広範囲に拡大し、海洋環境を一変させ、生物の大量絶滅につながります。
海底付近は無酸素(または極度の低酸素)状態となり、酸素不足の海は、生命が住めない環境となり、酸欠海域(死海)となっていきます。温暖化で酸素欠乏の海が拡大しています。海の生物が消えていきます。
(「トコトンやさしい地球学の本」p.110ー111より一部抜粋)
<書籍紹介>
地球は、時速1500キロという超高速で自転し、巨大で、46億年という長い歴史を通して形作られてきた。今、様々な要因で地球の環境は変わりつつあり、危機に瀕している。そこで本書は、地球の基礎からその将来、そして新たな地球の見方までを解説する。