職場にロボットが入ってきたり、地震などの災害時に対応するシステムが導入されたりと、働く環境=オフィスビルはどんどん変わってきている。そして、そこに欠かせないエレベーターも、実はいま大きく進化しているらしい。コロナ禍のこの時代にどうしても気になる衛生面も含め、今回はエレベーターの最新事情を探ってみた。
INDEX
- エレベーターのボタンにさわりたくない
- コロナ時代がエレベーターに求めるものとは
- 「つながる」とはどういうこと?
- 「AXIEZ-LINKs」の「つながる」
- IoTプラットフォームとの連携にも注目
エレベーターのボタンにさわりたくない
エレベーターに乗ったら、まず行き先階を指定するためボタンを押す。新型コロナウイルスの感染が広がって以降、この何でもない行為にためらいを感じる人も増えているはずだ。衛生対策が施されていないエレベーターには乗りたくない、そう考える人も今後出てくるだろう。
その視点から見たとき、国内で多くの納入台数を誇る三菱電機のエレベーターはどうなのか。設計会社や建設会社に昇降機の技術提案及びビルシステム関連のソリューション提案を行っているビル事業部の二條孝博さんが教えてくれた。
二條:三菱電機では、さわらずに行き先階を指定できるタッチレスボタンを実現しました。
指をボタンに近づけると、触れることなくボタンが点灯、つまり行きたい階が「非接触で」インプットされた。
二條:三菱電機のエレベーターは、利用する方の「安心」「安全」「快適」への期待に応えたいという思いのもとでつくられています。このコロナ禍だけでなく、最近は「さわる」ことに敏感になっている方も多く、こうした非接触仕様が求められると思います。ちなみに、従来の押すタイプのボタンは<抗菌・抗ウイルス仕様>を標準仕様として採用しています。オプション仕様では、同じく抗菌・抗ウイルス手すりを用意しており、「さわる」ことについても安心してお使いいただけると思います。
コロナ時代がエレベーターに求めるものとは
コロナ禍のいま、エレベーターで注目されるのは「さわらないこと」だけではない。安心・安全・快適の観点では、閉じられた密な空間となるエレベーター内の「キレイな空気」も重要な関心事といえる。ビル事業部でマーケティングを担当する須永現太さんに、この点での対応を説明してもらった。
これらの衛生や快適性を追求した機能を搭載したのが、2020年10月に新発売された、機械室レスエレベーター「AXIEZ-LINKs(アクシーズリンクス)」である。これらの機能から垣間見えるのは、三菱電機の「人」に寄り添うとする開発姿勢だ。「人」が様々なシーンで、安心、安全、快適に暮らせる事を目指した、新しいエレベーター開発の出発点はどこにあるのか?さらに聞いてみた。
二條:2017年の夏、この新しいエレベーターの製品仕様を検討するチームが発足し、従来とは異なるまったく新しいエレベーターのコンセプトを考えました。そこで生まれたキーワードが「つながる」だったのです。
三菱電機は、なぜ、その言葉を画期的な新製品のコンセプトとして採用することにしたのだろうか。
「つながる」とはどういうこと?
いま、ビル自体が大きく進化し、いわゆる最先端のスマートビルが次々と建設されている。
ビルが変わるとともに、人々の働き方も変わり始めている。たとえば今後は多くのビルでロボットの導入が進み、通路やオフィス内を動き回る姿が見られるようになるかもしれない。三菱電機は、そうしたこれからの社会にふさわしいエレベーター像をどう描いているのか。
実は、それを考えるうえで出てきたコンセプトこそが「つながる」なのである。
二條:2020年9月に開業した大規模複合施設「東京ポートシティ竹芝」はまさに最新のスマートビル。そこには三菱電機のエレベーターが納入されており、顔認証によって乗るエレベーターを自動で指定するシステムや、AIで人の流れを予測してエレベーターを適正に配備する仕組みなどが導入されています。
東京の未来を創造するスマートシティの一部として2020年9月14日に開業した超高層ビル 東京ポートシティ竹芝オフィスタワー。都市再生へ貢献するものとして官民合築・連携による産業振興とにぎわい創出など、さまざまな役割を担っている。
この例では、ビルとエレベーターがつながり、そこから人の快適さや安心感とつながる便利な機能を実現している。東京ポートシティ竹芝の例を出した直後だと、こうした「つながる」賢いエレベーターは大規模なスマートビルでなければ意味がないと思われるかもしれない。しかし三菱電機が目指すところは違うという。
須永:「AXIEZ-LINKs」は、新規設置であればどのようなビルにも導入できます。中小規模の事務所ビルやマンション・病院・工場など、より広く多くの方に使っていただけるのが特徴といえます。多彩な周辺設備や機能を用意してあるので、必要なものを適宜選び、カスタマイズしていただくことで、さまざまな「つながる」が実現されます。
「AXIEZ-LINKs」の「つながる」
「AXIEZ-LINKs」の「つながる」のコンセプトは、「街とつながる」「建物とつながる」「人とつながる」の3つに分けて考えることができる。その点についてさらに詳しく伺ってみた。
須永:インターネットでクラウドに「つながる」ことで、建物のさまざまな設備とつながりますし、エレベーターの自動呼び出しや行き先階自動登録ができるスマートフォンサービスなどで「人」とつながります。
「建物」に関しては、災害時にバッテリーや太陽光発電、電気自動車から電気を供給するマルチ電源を提供します。これはインターネットにつながるものではありませんが、建物と人の暮らしや業務を継続させるという意味で、やはり大切な「つながる」要素だと考えています。
また、別のエリアにある複数ビルのエレベーターにクラウド経由で簡易にアクセスできる仕組みを導入し、スマートフォンやタブレット端末・PC等のWebブラウザからエレベーターの状態監視や設定を変えたりできる機能も備えていますが、これは「街」とつながるためのものです。
IoTプラットフォームとの連携にも注目
建物とのつながりの部分でもう一点注目したいのが、IoTとクラウドでビルのさまざまな設備とつながり、自動制御する三菱電機のプラットフォーム「Ville-feuille™(ヴィルフィーユ)」だ。
先ほど話が出た東京ポートシティ竹芝では、「Ville-feuille™」がエレベーターと自走式ロボットを連携させることで建物へのロボット導入の課題であった縦移動を解決し、警備ロボットがフロア間を自動で移動しながら巡回している。それほど遠くない未来、このようにサービスロボットが一気に浸透し、オフィスやビル内で稼働する社会となる可能性は高いだろう。そのとき「Ville-feuille™」は、エレベーターとロボットの連携ニーズを即座にキャッチできるという点で、きわめて現実的で有用なソリューションといえる。
「AXIEZ-LINKs」はこの「Ville-feuille™」との連携が可能となっており、中小規模のビルにおけるロボット活用の可能性を広げている。
こちらの動画では、どのようにロボットの移動を支援するのか、その仕組みをわかりやすく説明している。最先端の技術をぜひご覧頂きたい。
二條:三菱電機としては、単に物理的なつながりだけでなく、いろいろな人々の思いとつながることを大切にして、「AXIEZ-LINKs」を製品化しました。そして、その先に見ているのが、「未来とのつながり」です。
最後に「AXIEZ-LINKs」の取り組みについて、須永さんが「始まりの一歩」、二條さんが「まだ、第一章」と強調していたのが印象的だった。
エレベーターとロボットの連携が広範に実現することで、街や建物がさらに便利になり、人はそこから安心・安全・快適を享受できるようになる。ウィズコロナを体験し、アフターコロナも経ることで、社会はこれからも大きく変わっていくだろう。三菱電機のエレベーターはその変化の時代に向けて、そして未来に「つながる」さらなる進化を続けていく。