私たちが日々、当たり前のように利用しているエレベーター。毎日のように使うものだからこそ「より速く、より便利に、より快適に」といった要求は尽きない。そんな利用者の想いに応え、エレベーターがさらに進化したという。キーワードはスマートフォン。エレベーター同様、生活やビジネスで当たり前のように利用しているスマホの利用により、私たちの“縦の移動”はどのように変わるのか。さらには、三菱電機がエレベーターに込めた“おもてなし”の意味とは──。
INDEX
- おもてなし進化系エレベーターをいざ体験!
- 本当にスマホでエレベーターが呼べるのか?!
- 「待ち時間と乗車時間」両方のイライラを解消するエレベーターを体験!
- “エレベーターもスマホで何かができないか”が出発点
- 待ち時間、乗車時間の短縮に向けて
- 利用者の気持ちに寄り添ったエレベーターに
おもてなし進化系エレベーターを
いざ体験!
今は、スマホのアプリで、エアコンやテレビなど家の中の電気製品が操作できる時代になっている。とはいっても、それは家という空間での話。ひとたび玄関を出て、マンションや街中に建つビルへと足を進めれば、自分のスマホを使って何かを動かすことを体験した人はまだまだ少ないと思う。
ところが、今回「自分のスマホでエレベーターが呼び出せる」エレベーターを体験できるという。さらに「待ち時間/乗車時間が短くなった」エレベーターでもあるという。
おもてなしの進化系ともいえるエレベーターがどんなものなのか、三菱電機ビルテクノサービス本社にうかがった。
本当にスマホで
エレベーターが呼べるのか?!
まず体験したのはスマホでエレベーターを操作できるサービス※。
自分のスマホを取り出してとりあえず、指定された「スマートフォンサービス」対応のアプリインストール。準備したのはたったこれだけ。
本当にこれだけでエレベーターを呼び出せるのだろうか?
※三菱電機ビルテクノサービスが提供する保守サービス「ELE FIRST-i plus(エレファースト・アイ プラス)」にオプション設定された新機能「スマートフォンサービス」
最初にアプリを開き、行先階を設定した。1階から8階に行く場合はスマホの画面で[1−8]というように設定する。これで設定は完了!
「待ち時間と乗車時間」両方の
イライラを解消する
エレベーターを体験!
ハンズフリーで無事エレベーターに乗り込んだ後は、「待ち時間/乗車時間が短くなる」エレベータ―を体験。エレベーターが動き出すと、エレベーター内の操作盤に「高速運転モード」の表示が。しかし、乗っている本人は速さをほとんど感じない。聞けば「静かで揺れも少ないので、実感しづらいですが、条件によっては最大で通常時の運転から約1.7倍高速になります」とのこと。
急いでいるときに限ってエレベーターがなかなか来ないイライラは、誰しも体験しているに違いない。しかしストレスを感じることなくエレベーターが到着。
これは、「スマートフォンサービス」と、三菱電機のエレベーター「AXIEZ(アクシーズ)」の『スーパー可変速システム』なる機能のおかげ。1階ではハンズフリーで素早くエレベーターが到着、扉が空き、行先を自動で登録、他の階では、スマホでの遠隔操作でエレベーターが呼び出せ、しかも早く到着してお待たせしない。どちらも利用者への“おもてなし”をコンセプトにした機能だという。
この近未来を感じるスマートフォンサービスと、イライラを解消する快適なスーパー可変速システム。このすごさはどこから生まれてきたのか。そして、なぜいま「スマートフォンサービス」と「スーパー可変速システム」なのかを三菱電機ビルテクノサービスの高橋さん、三菱電機ビル事業部の網谷さんに聞いた。
“エレベーターもスマホで
何かができないか”が出発点
──いよいよエレベーターもスマホで呼べる時代になったのですね
高橋:世の中のさまざまなものがスマホと連携しているなかで“エレベーターもスマホで何かができないか”と考えたことが出発点でした。今回の保守サービスシステム全体の名称「ELE FIRST-i plus」の「plus」という言葉にも、利用者の方とエレベーターがつながるという意味合いも込められています。
──利用するために必要なシステムなどは?
高橋:ビルやマンションオーナー様は「ELE FIRST-i plus」のオプション「スマートフォンサービス」に加入いただくと、エレベーターにスマホ対応の発信機端末を私どもで設置します。入居者はスマホにアプリをインストールするだけです。大掛かりな設備工事も不要で、利用される方もICタグなどを携えることなく“自分のスマホでエレベーターを呼べる”ことが大きなメリットと考えています。
──想定されている利用シーンは?
高橋:ハンズフリーで呼び出すことができますので、例えば、マンションであれば買い物帰りで両手が塞がっている場合や車椅子を利用される介護施設や病院などでも便利にご活用いただけるでしょう。また、呼び出し等のタイミングにもよりますが、乗場に行く前にエレベーターを呼んでおくことで、待ち時間の削減も期待できます。さらに、エレベーター乗場のインジケーターを非表示にする機能もありますので、行先階を知られたくないといったニーズに対しても「安心」を提供することができます。
待ち時間、乗車時間の短縮に向けて
──エレベーターにとって“速さ”とは、どれだけ大切なものなのでしょう?
網谷:利用者にアンケートを採ると「待ち時間が長い」「運行速度が遅い」といった不満が常に上位を占め、よりスムーズな運行がエレベーターには求められていることがわかっていました。そこで、当社では以前から乗車率に応じて速度を段階的に上げる可変速システムを実現しておりました。簡単に説明すると、エレベーターは人が乗る「かご室」と「釣り合いオモリ」をロープでつなぎ、巻上機を介して運行しています。つまり、2つの重さのバランスが重要であり、「かご室」の重さと「釣り合いオモリ」のバランスが取れている時はモーターにかかる力が少なくなります。そのためモーターの余力をスピードにまわすことができる。可変速システムはその状況を利用して定格速度より早いスピードで走行することができる仕組みです。
それをさらに進化させ、さらなる上限速度のアップと運行速度を連続的に上げるよう改良したのが「スーパー可変速システム」です。
──三菱電機独自の優位性はどこに?
網谷:人が乗っていない状態(「空かご」と呼ぶ)でも通常運行より高速化ができること、そして乗車時の最高速度のアップです。
スーパー可変速システムでは「かご室」に誰も乗っておらず、「釣り合いオモリ」の方が重い場合も、スピードアップされる様に設計されています。これは今のところ当社だけの技術と考えています。
エレベーターの全運行時間のうち、空かごの状態と人が乗っている状態は同じくらいの割合と言われています。目的階まで人を運んだエレベーターが、人の乗っていない状態=空かごで、次の呼び出し階まで戻ってくる運行時間。全体の半分を占める、この空かごの状態でのスピードアップ効果が、とても大きいのです。
また、乗車時においても、定格速度毎分60mの場合、毎分105mまで達する可変速の幅も当社の特長となっています。空かごの状態と乗車時の双方において運行速度を上げることは、運行効率の向上はもちろん、利用者のイライラをさらに低減することにつながっています。
──スーパー可変速システムの実際の効果は?
網谷:エレベーターのスピードをアップさせるには、通常巻上機などの機器類を大きくすることが必要ですが、巻上機のサイズは一般的なものから変更することなく、速度を上げるところがこのシステムのポイントです。ぜひ、ホームページの動画をご覧になってください。「こんなに違うの!?」と驚かれるはずです。
利用者の気持ちに寄り添った
エレベーターに
よりスムーズな乗車の実現に向けて利用者目線で取り組んだ「スマートフォンサービス」。利用者のイライラ解消、満足度をとことん追求した「スーパー可変速システム」。それぞれのセクションのもつ知見と技術が見事に融合したエレベーターは、“使う人の心に寄り添ったエレベーターを実現したい”という想いに集約されている。これこそが、三菱電機のエレベーターに込められた“おもてなし”なのではないかと感じた。最後に、それを確かめてみた。
──お二人にとって理想のエレベーターとは?
高橋:エレベーターは常に動いていることが前提であり、いつでも使えることが当たり前のものです。これからも“止めないためできること”、そして“止まってしまったときにできること”を強化しながら、その先にある利便性や快適性を追求していきたいと考えています。
網谷:AIやロボットが発達し、超高齢社会が進むなかで、エレベーターが人とコミュニケーションできるようになれたらなと。センサーが表情を感知して「元気?」と声をかけてくれたり、気分に合わせた音楽や照明を演出してくれたり──そんなエレベーターが実現したら面白いなと個人的に思っています。