このページの本文へ

ここから本文

エネルギー問題解決のために知っておきたい7つのキーワード

電力業界×カーボンニュートラル エネルギー問題解決のために知っておきたい7つのキーワード電力業界×カーボンニュートラル エネルギー問題解決のために知っておきたい7つのキーワード

「2050年カーボンニュートラル実現」宣言と、その前段階である「2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度に比べて46%削減」に向けての電力業界の最新動向を解説。また、課題解決に向けての電力関連事業者などの取り組みや三菱電機のソリューションから見えてきた、電力カーボンニュートラルを知るための7つのキーワードも紹介する。

※:環境省「地球温暖化対策計画」(2021年10月22日閣議決定)新しいウィンドウが開きます

国連は「エネルギーの適切な供給は、経済成長と貧困の撲滅にとって不可欠である」としながらも、「エネルギーは気候変動の主な原因で、全地球的温室効果ガス総排出量のおよそ60%を占める」と指摘している。私たちの暮らしもビジネスも電気なしでは成り立たず、また、昨今の電気料金の高騰によって「電気について考える」必要性はますます高まっている。そこで、電力カーボンニュートラル実現のために知っておきたい事柄を電力事業の専門家3人に解説してもらった。その7つのキーワードを押さえれば、日本のカーボンニュートラル実現に一歩近づくかもしれない。

電力カーボンニュートラル
7つのキーワード

  • 1FIP制度
  • 2VPP
  • 3DERMS
  • 4再エネ価値取引市場
  • 5自己託送
  • 6「マルチリージョンEMS」
  • 7三菱電機エネルギーソリューション
    体験サイト「PoC Lab.®

電力業界とカーボンニュートラル

「カーボンニュートラル」とは、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量を、植林などによる吸収量を差し引いて、実質的にゼロにする(=ニュートラルにする)ことを意味している。現在、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」の目標を掲げ、実現に向けての取り組みを始めている。

2021年の世界のCO2排出量は363億トン(国際エネルギー機関2022年3月8日発表)。日本は年間約10億トンを排出し、世界第5位となっている(総務省統計局「世界の統計2022」)。日本の排出量のうち4割弱は、電力業界を含むエネルギー転換部門が排出している(環境省「2020年度温室効果ガス排出量(確報値)」)。つまり、電力業界は率先してカーボンニュートラル実現に取り組む必要があるのだ。では、日本の電力業界はCO2排出削減に対してどのように向き合っているのだろうか。デジタルエナジーシステム開発部の水城優さんに解説してもらった。

―― 日本の最新の電力事情について教えてください。

水城:ここ数年で大きな2つの動きがありました。1つは2021年4月、菅義偉前首相が「2050年カーボンニュートラル実現」を宣言し、そのために2030年度には温室効果ガス排出量を2013年度に比べて46%削減を目指すとしたことです。首相の発言によって、日本のカーボンニュートラルへの取り組みが加速しました。もう1つは「ESG投資」拡大の動きです。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)要素を考慮した投資のこと。これらの要素を念頭においた長期的なリスクマネジメントをしている企業は高く評価され、資金が集まりやすくなっています。ESGの観点とカーボンニュートラルは親和性が高いため、カーボンニュートラルに積極的に取り組む事業者が増えているのです。

水城 優(みずしろ ゆう)さんの写真
三菱電機株式会社 電力システム製作所
電力ICTセンター 電力デジタルエナジーシステム開発部
水城 優(みずしろ ゆう)

カーボンニュートラル実現への
取り組み

―― 電力業界はカーボンニュートラル実現のためにどんな取り組みを始めていますか?

水城:1つ は2022年4月に始まった「FIP(Feed-in Premium)制度」です。カーボンニュートラル実現のためには石油、石炭、LNG(液化天然ガス)といった化石燃料の使用を減らし、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスなど、温室効果ガス排出量の少ない再生可能エネルギー(以下、再エネ)を主力電源にする必要があります。2012年に「FIT(固定価格買取)制度」が導入されて以降、再エネは急速に普及しました。それを一歩進め、再エネによって発電された電気を固定価格ではなく、一定のプレミアムを上乗せして買い取る仕組みが「FIP制度」です。

キーワード1
FIP制度

FIT制度

2012年に再エネ導入を促進するために設けられたのが「FIT」。
太陽光など、再エネは電源として不安定で発電量が見込みより少ないと、導入コストにより赤字になってしまい、再エネが普及しにくい。そこで再エネ電気を固定価格で買い取るFIT制度で、再エネの普及をはかった。
ただし再エネ買取コストは「賦課金」として国民が負担しており、今後再エネをさらに普及するには、国民負担を抑えることが課題となった。

FIP制度

再エネ発電事業者が卸市場などで売電するとき、売電価格に一定のプレミアム(補助額)が上乗せされる制度。2022年4月にスタートした。FIT制度では固定価格で買い取られていたが、FIP制度で上乗せされるプレミアムは市場価格に連動するため、事業者は市場価格が高いときに売電する工夫をすることで、収益を拡大できる。

水城:「VPP」や「DERMS(ダームス)」という仕組みもあります。VPPはバーチャル・パワー・プラント、直訳すると「仮想発電所」です。世の中には、工場や家庭にある蓄電池、太陽光パネル、 電気自動車などさまざまな電源が分散しています。これを分散型電源と呼びます。その1つ1つは小さくても、高度なエネルギーマネジメント技術によって統合・制御できれば、あたかも1つの発電所のように扱うことができ、需給のコントロールや電源コストの削減に利用できます。これがVPPの概念です。

分散型電源を束ねてVPPとして様々な用途に活用する事業者をアグリゲーターと呼びます。

中規模分散型エネルギーシステムの説明図

分散型電源運用システムについて新しいウインドウが開きます

DERMSは配電事業者が系統混雑を回避するために利用するシステムです。
例えば、太陽光パネルが増えると、晴天の日には発電量が増えて送電線の容量を超えてしまう可能性があります。送電線の運用容量の制約によって電源の運用に制約が生じてしまうことを「系統混雑」といい、これに備えるには系統増強工事などが必要ですが、時間とコストがかかるため、電力会社や国民の負担となり、結果的に再エネが普及しにくくなります。
DERMSは系統を監視しながら、直接、もしくはアグリゲーターを介して、電力需要、再エネ出力変動に合わせた最適な制御を行うことができます。つまりVPPとDERMSは再エネの課題を克服し、安定した強力な電源として普及させるのに欠かせない仕組みなのです。

キーワード23
VPPとDERMS

VPP(Virtual Power Plant)=仮想発電所

家庭用燃料電池、蓄電池、電気自動車など、世の中に分散するさまざまな電源を電力システムの一部として活用する仕組み。

1つ1つの電源は小さくても、これらを束ね(アグリゲーション)、遠隔・統合することで電力の需給バランス調整に活用できる。

VPPを活用すれば、たとえば再エネで過剰に発電した電気を吸収したり、電力不足のときに電力供給したりできるため、再エネを安定した電源として、積極的に活用できる。

DERMS(Distributed Energy Resource Management Systems)

送配電事業者が送配電系統の系統混雑を管理することを目的に、系統の監視と分散型電源(DER)の直接的、もしくはアグリゲーターを介した監視制御を統合・管理するシステムの総称。

DERMSを活用することで、太陽光パネルなどの再エネ電源普及に伴う系統混雑を緩和し安定した電気の供給ができる。

水城:ほかにも電力の「地産地消」といった取り組みがあります。電力は、発電したところから遠くに送るほどロスが生じます。ですから、電力の大消費地である都市部であれば、その近郊に太陽光パネルなどを設置し、送電すると効率がよいのです。この取り組みは環境省がエネルギーの地産地消促進事業に補助金を出していることもあり、都市部に限らず全国で投資が進んでいます。また、地産地消が進むと小規模な地域で電力の自給自足が可能となり、電力レジリエンスの強化にもつながります。

―― こうした取り組みはすでに順調に進んでいるのですか?

水城:FIT制度によって再エネ導入率は向上しましたので、その後継であるFIP制度の効果にも期待が高まります。VPPとDERMSも、これから社会実装に向かっていくでしょう。

―― こうした取り組みが一歩ずつ進めば、カーボンニュートラル実現に向けて弾みがつきますね。

水城:はい、その通りです。カーボンニュートラルは不明確で難しい部分があるものの、今、非常にホットな分野で、私たちのようなメーカーが貢献できる可能性も大いにあります。私個人にとっても、地球環境に関わるダイナミックな事業に携われることは刺激的で、純粋に面白いです。実は私の母校は理科教育に力を入れていて、中学1年生から高校1年生まで野外実習に参加し、箱根や三浦半島、真鶴で地形や植物に触れる機会に恵まれました。この経験を通して、「自然林と人工林って全然違うんだな」「自然って綺麗だな、大きいな、すごいな」と感じられる、自然に対する感性を育ててもらったのです。とくに印象に残っているのは、当時の先生の「自然を守りたいなら、まず現状を『知る』ことから始めなければならない」という言葉です。私はこの言葉を、仕事でも普段のくらしの中でも大事にしています。大学では物理系を専攻し、三菱電機に入社したのですが、今こうして間接的にでも自然保護に関われていることがとてもうれしいです。

電力事業者の取り組み

電力カーボンニュートラルに関わっているのは大手電力会社だけではない。2016年の電力自由化以来、電力ビジネスに参入してきている小売事業者はもとより、「需要家(電気を使う側)」である一般企業や国民もこの課題に無関係ではいられない。そこでここからは、電力事業者や需要家が電力カーボンニュートラルのためにできることを、電力デジタルエナジーシステム開発部の高田一輝さんに紹介してもらう。

―― まず、電力事業者がカーボンニュートラル実現のためにできることを教えてください。

高田:まずは、再エネ電源の設置があります。CO2を多く排出する火力発電から再エネ発電に切り替えるという考えは、ごく自然な考え方です。次に、火力発電所のカーボンフリー化です。今、火力発電所では化石燃料を使って発電していますが、それらを水素やアンモニアなど、燃焼しても二酸化炭素を排出しない燃料に切り替えるのです。あるいは排出したCO2を分離・回収したり、地下深くに貯留したりするなどの技術が検討されています。

高田一輝(たかだ いっき)さんの写真
三菱電機株式会社 電力システム製作所
電力ICTセンター 電力デジタルエナジーシステム開発部 専任
高田一輝(たかだ いっき)

―― どちらも、カーボンニュートラル実現に有効なように思えます。実際、どれくらい進んでいるのですか?

高田:いずれも優れた方法ですが、実行には課題があります。例えば再エネ電源に切り替えるにしても、太陽光や風力だけでは不安定ですから、予備的に火力発電を残さねばならず、100%再エネにするのは現実的ではありません。また、再エネ電源は電圧を維持する能力が低く、従来のように遠方の大規模火力発電所から特高圧で都市部に効率的に供給することができない点も課題です。水素やアンモニアを火力発電の燃料とすることや、CO2分離・回収・貯留については、発電の出力面、安定性、コスト面、貯留場所の問題などの面で課題が多く、2050年に向けてイノベーションが必要であり、今すぐ実用化可能な技術ではないです。ですから、至近では需要家サイドへの再エネ電源の設置と、電化、スマート化を促すことが重要です。

―― 「発電する」以外の部分で、電力事業者ができることはありますか?

高田:需要家に新しい電力運用を促進させるような仕組みづくりでしょうか。例えば従来は、「遠く離れた大規模火力発電所からの電力を都市部へ特高圧で送電する」という電力供給運用のみでしたが、IoT技術の普及によって、需要家の近くに設置された再エネ電源や、蓄電池、ヒートポンプ給湯器、EVなどの"電気や熱を貯蔵できる設備"による電力運用も実用可能になってきています。
需要家の近くにこういった分散型電源の設備設置を促進していくために、需要家の屋根を電力会社が借りて再エネ電源を設置する屋根貸しや、需要家が持つ分散型電源をVPPとして制御することで、得られたメリットをインセンティブとして需要家へ還元するような試みが重要になってくると考えます。

一般企業の取り組み

―― では、一般企業にできることはありますか?

高田:いくつかありますが、今とくに注目が集まっている方法「再エネ価値取引市場」と「自己託送」です。「再エネ価値取引市場」とは、再エネで発電された電気には「環境価値」というものがあり、それを取引することができる市場です。この市場には電力事業者以外の一般需要家も参加することができ、ここで環境価値を購入すれば、契約を変更することなく、消費電力の再エネ化を実現できます。

キーワード4
再エネ価値取引市場

CO2を排出しない方法で発電された電気には「環境価値」がある。

その環境価値から「非化石価値」を取り出し、証書の形にしたのが「非化石証書」。

非化石電源を使って発電する発電事業者は、この証書を再エネ価値取引市場でオークションにかける。

従来は、電気の小売事業者だけがこの証書を購入できた。しかし、2021年11月からは需要家も市場で証書を調達できるようになった。

2021年11月の第1回オークションの入札会員数は118。そのうち、小売電気事業を行わない需要家6、仲介事業者19だった。

同オークションでは、2020年の総約定量を上回る約19億kWhの取引が行われた。

高田:自己託送とは、自社発電所で発電した電力を遠隔地にある自社設備に送電する仕組みのことです。例えば、工場の広い敷地に太陽光パネルを設置して発電し、その電気を都市部にある本社に送って消費することで再エネの電気を直接調達することが可能です。再エネ価値取引市場の市場価格によっては、環境価値を購入するより経済的に再エネ率を高めることが出来ます。また、よりリアルに再エネ電源を調達していることで、先ほど話題に出たESG投資にもつながる話だと考えています。

キーワード5
自己託送(じこたくそう)

自己託送とは、遠隔地に設置された自社が保有する発電所で発電した電気を遠隔地にある自社施設で消費する仕組み。

送配電ネットワークの利用料金の支払いは必要だが、電力会社からの電気の購入量を削減することで電力コストを削減可能。

太陽光パネルなどの再エネを利用して自己託送すれば、電力コスト削減だけでなく、自社の環境意識の高さを社会にアピールすることができる。

2013年に制度化され、昨今のカーボンニュートラル促進の流れを受けて、採用する事業者が増えている。

課題は、電力会社の送配電ネットワークを使用するにあたり、電力会社と同レベルの複雑な業務が発生すること。

電力カーボンニュートラル実現のために
三菱電機ができること

―― 三菱電機は電力事業にさまざまな形で関わっています。電力カーボンニュートラル実現に向けてどのように貢献するのですか。

高田:当社は発電領域、電力流通領域、販売(小売)領域、需要家領域と、電力に関わるすべての領域でビジネスを行っています。そのなかで、電力カーボンニュートラル推進において強みを発揮できる分野が主に3つあると考えています。

1つは、「分散型電源の運用」です。先ほどお話ししたように、それぞれの需要家が設置している分散型電源を大きな電源として活用するには、それぞれの電源の情報をリアルタイムで収集し、必要なところに必要なだけの電気を瞬時に送るなどの制御をしなければなりません。三菱電機は、「スマートメータ―」を製造していることに加え、多数の分散型電源、負荷機器のデータを収集、管理するデジタルエナジープラットフォームBLEnDer®DEP(Digital Energy Platform)や、それらの分散型電源を制御し運用する「分散型電源運用システム」を構築しています。これらを活用することで、小規模な太陽光発電やEVが普及しやすくなり、需要家側の電力カーボンニュートラルが促進されるでしょう。

スマートメーターシステムの説明図
分散型電源運用システムの説明図

スマートメーターシステムについて新しいウインドウが開きます

分散型電源運用システムについて新しいウインドウが開きます

高田:2つ目は「大容量蓄電池制御システム」です。大規模な再エネ電源設備を設置する場合、電力系統を安定的に運用するために、大容量蓄電池を設置して再エネ電源の出力のブレをミリ秒単位で調整します。これにより、再エネ電源を安定的に運用することが可能となります。実際に島根県の隠岐諸島で「隠岐ハイブリッドプロジェクト」として採用され、再エネ導入を従来の約2300kWhから約8000kWhに拡大することに成功しました。

大容量蓄電池制御システムの説明図

大容量蓄電池制御システムについて新しいウインドウが開きます

令和元年度新エネ大賞で2件を共同受賞(PDF)新しいウインドウが開きます

高田:3つ目は「電力需給管理システム」です。電力事業には「電力の需要と供給の量を30分単位で一致させなければならない」というルールがあり、電力事業者は30分ごとに需要予測や発電計画、どの発電所からどう送電するかなどを報告しなければなりません。そうした複雑な作業を一手に取りまとめて行うのが「電力需給管理システム」です。企業が自己託送を行う場合は、電力事業者と同じレベルの非常に複雑な需給運用をしなければなりませんが、本システムはその運用を一括してサポートします。

電力需給管理システムの説明図

カーボンニュートラルを志向する企業向けの
新ソリューション「マルチリージョンEMS」

電力カーボンニュートラル実現に向けての課題の一つは、電力業界特有のルールや、事業そのものの複雑さにありそうだ。しかし、電力事情にくわしくない一般企業も電力カーボンニュートラルを実現するためのソリューションが登場している。それについて、高田さんと同開発部の山下満さんに聞いた。

高田:電力事業者以外の企業様に向けて開発したのが、2023年4月から提供開始予定の「マルチリージョンEMS」です。例えば、再エネを導入したくても全拠点に太陽光パネルなどを設置できないという場合、自己託送システムを使って別の拠点から再エネによる電気を調達する、再エネ価値取引市場で証書を買うなどの方法がありますが、その際には電力業界特有の複雑な業務が必要となります。そうした業務を一括して代行し、コストを抑えつつ拠点ごとのカーボンニュートラルを実現するのが「マルチリージョンEMS」です。このソリューションを利用すると、企業単位でのカーボンニュートラルだけでなく、各拠点単位でのカーボンニュートラルや時間単位での達成率を見える化できます。
また、グローバルの先進企業が牽引するEnergyTag(※)をはじめとするイニシアチブはより多くの再エネ導入に繋げるために、再エネの発電量が多い時間と需要をより短い時間単位、具体的には従来の年間単位ではなく1時間または30分単位での再エネ調達量と電力消費量を一致させる運用を推進しており、マルチリージョンEMSはそういったニーズにも対応しています。

※:当社も2022年3月にEnergyTagの支援団体に加盟しています。

「マルチリージョン型デジタル電力最適化技術」を開発新しいウインドウが開きます

キーワード6
マルチリージョンEMS

再エネで発電した電力(再エネ電力)を複数の拠点間で融通したり、蓄電池を活用して拠点とのカーボンニュートラル目標達成を支援する技術。

拠点単位の再エネ導入にあたり、再エネ電源の設置スペース不足、天候・時間帯によって再エネの発電量が変動するなどの課題がある。

マルチリージョンEMSは、自己託送制度を活用して拠点間での再エネ電力の融通、各拠点の分散型電源・蓄電池の運用および環境価値証書購入などの方法で、カーボンニュートラル実現を支援。

電力および環境価値の調達コストを最小化。

2023年4月にサービス提供開始。

三菱電機エネルギーソリューション体験サイト 「PoC Lab.®

―― 目に見えない電気を「見える化」することで、一般企業は電力を理解しやすくなりますし、自社の強みとしてアピールできるようになるのですね。

山下:その通りです。そこで私たちは、エネルギー分野で将来必要とされる技術やサービスを検証できるオンラインサービス「PoC Lab.® (ポックラボ)」を2021年10月に立ち上げました。このサービスに無料登録していただくと、お客様の課題や事業に応じたエネルギーソリューションをデモ動画などで体験でき、それぞれの環境に合わせたシミュレーションをしていただくことができます。

山下 満(やました みつる)さんの写真
三菱電機株式会社 電力システム製作所
電力ICTセンター 電力デジタルエナジーシステム開発部 専任
山下 満(やました みつる)

―― たしかに、電力会社以外の企業が、いきなり自社に合った電力ソリューションを選ぶのは難しそうです。採用する前にお試しできたら安心ですね。

山下:電力関係の業務は非常に複雑ですし、そのうえ、企業の所在地や規模、保有設備、電源構成などがまちまちなので、選択すべきソリューションや導入プロセスを即決するのは難しいのです。それでも、どの企業も2030年までにはカーボンニュートラルに関して一定の成果を出さなければなりません。そこで「PoC Lab.®」をご利用いただき、どのソリューションが自社に適しているか、どれくらいの効果が出るかなどをシミュレーションしていただければと考えたのです。

PoC Lab.®紹介ページ新しいウィンドウが開きます

キーワード7
PoC Lab.®(ポックラボ)

エネルギー分野での将来技術・サービスをお客様とともに検証・共創するためのウェブサイト。

これからのエネルギーインフラで必要とされるであろう様々なソリューションをご用意し、サイト登録いただいたお客様に自由にご覧いただく。

ソリューションの内容はデモ動画などでも視聴可能。システム導入時の経済性シミュレータも用意し、オンラインでいつでも・どこでもソリューションを体感可能。

―― どんな企業が利用しているのですか?

山下:電力会社が多いですが、ほかにも複数のビルや工場をお持ちで「カーボンニュートラルを実現したくても、どこから手をつけたらよいかわからない」といったお悩みをもつ企業にもご利用いただいています。コロナ禍でリモートワークが進み、カーボンニュートラルに向けた方策を社内で議論したくてもなかなか進まないという企業もあります。PoC Lab.®に登録していただけば、パソコンやスマートフォンなどの端末でカーボンニュートラルに対応したエネルギーソリューションをいつでも確認できますから、そういった話し合いの場でも役に立つと思います。

電力を確保しつつ、カーボンニュートラルを実現するには多くの課題がある。それらを解決し、持続可能な世界をつくっていくには電力業界だけでなく、産業界や電力の需要家がそれぞれの立場で、できることを模索していく必要があるだろう。そのなかで、今までにないソリューションや新たなビジネスチャンスも見つかる可能性があるかもしれない。

ポックラボ紹介ページのイメージ画像

PoC Lab.®紹介ページ新しいウィンドウが開きます

市原淳子の写真
取材・文/市原淳子
雑誌の編集者・記者を経て独立。食やヘルスケア、医療・介護から最前線のビジネスフィールドまで幅広いジャンルにわたり、Webメディア、雑誌、新聞、また単行本の企画・構成などを手がける。企業人や職人、アーティストへのインタビュー多数。発信者と読者をつなぐ、わかりやすくて面白いメディア作りの達人。
ページトップへ戻る