イスラエルの2人の心理学者、ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーが確立してから、およそ50年の歴史を重ねた行動経済学。これまで多くの理論が発見され、いろいろな用途で活用されるようになってきた。その一方で、理論の数が膨大になってきたがために、どの場面でどの理論を使用すべきか、悩む向きも少なくない。
行動経済学を多くの用途で活用しやすいよう体系化に取り組んだのが、行動経済学コンサルタント、Behavioral Science Group, LLCの代表の相良奈美香氏だ。体系化のポイントと、それを元にしてどのように行動経済学を活かすべきなのかについて解説してもらう。
どうして行動経済学が最強の学問なのか
――著書のタイトルにもありますが、「行動経済学が最強の学問である」と思われる理由を教えてください。
行動経済学は「人の意思決定を理解する学問」です。マーケティングはもちろんのこと、アプリやプロダクトの開発、コミュニケーションなど、人がかかわるすべてのことに応用できます。これが、私が最強の学問だと思う理由です。
著書では、行動経済学を体系化することに挑戦しました。例えば経営学なら、経営戦略、マーケティング、会計などに分かれるように、おおよその学問は体系化がされています。ただ行動経済学は歴史が浅いため、体系化されていませんでした。ダニエル・カーネマンが1979年に打ち出した「プロスペクト理論」(※1)は、今日に至るまで行動経済学の核を成す理論です。それから約半世紀の間に、やはりカーネマンが提唱した「システム1 vs システム2」(※2)や、「アンカリング効果」(※3)など、さまざまな理論が生まれました。今では約500以上の理論があるといわれています。
(※1)不確実な状況下において意思決定を行う際には、事実と異なる認識のゆがみが作用するという、一見不合理とも思える人間の意思決定を説明するための理論。例えば、損失回避的な選択肢を過大に評価する傾向があるなど、最終決定に至るまでの価値は心理でゆがむとする考え方。
(※2)人間の脳は情報を判断する際、直感的、瞬間的に判断する「システム1」と、注意深く考え、分析する「システム2」を使い分けているとする考え方。
(※3)最初に提示された情報や数値などが基準になり、その後に続くものに対する判断が非合理的になるという考え方。最初の情報や数値が、海に錨(アンカー)をおろした船のようであることから名づけられた。
これらの理論のどれをどのシーンで使えば良いのか分からない、多すぎて覚えられないという声をビジネスの現場で聞くようになりました。また、プロダクト開発、マーケティングなど1つのエリアに特化して行動経済学を応用するのなら個々の理論で対応することも可能ですが、総合的なアプローチを必要とするクライアントもいる。そこで、体系化に取り組んだのです。
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