今月のメインビジュアル
#04
日比谷公園
Information
江戸の遺構も明治の庭園も
楽しめる
憩いの空間
都会のオアシスとして身近な日比谷公園。1903年(明治36年)に誕生したこの公園は、日本で初めての洋風庭園としても知られています。設計は、日本の林学と造園学の始祖といわれる本多静六博士。博士の留学先であるドイツの公園を基本に造られました。開園面積約16万平方メートル、3000本以上の高木を擁する園内には、2つの洋風花壇と2つの池に、大噴水や草地広場、日比谷野外大音楽堂、小音楽堂、日比谷公会堂などさまざまな施設が点在しています。
今では「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」をはじめ、「日本の都市公園100選」や「日本の歴史公園100選」にも選出される日本屈指の都市公園ですが、江戸初頭までのこのエリアはのどかな海辺の漁村でした。日比谷という地名も、海苔づくりや魚獲りに使う道具や仕掛けのことを指す「ひび」が由来だそう。その後江戸時代には大名屋敷が立ち並び、伊達政宗が終焉を迎えた上屋敷も日比谷公園の一角にあったことから、園内にはその説明板が設置されています。
また、東京には江戸城警備のために設けられた「見附」という城門が36ありますが、そのうちの一カ所「日比谷見附」跡も園内にあり、野面積みで組まれた当時の石垣とともに残っています。この石垣周辺にあったお濠を生かして造られたのが、「心字池」です。上から眺めると「心」の字をくずした形をしているのが特長で、日本庭園の伝統的な手法のひとつです。
その心字池に隣接するのが、幾何学紋様の洋風花壇「第一花壇」。チューリップやパンジー、バラ、ダリアなど、当時は誰も見たことがない貴重な洋花が植えられ、今も開園時と同じデザインで統一されています。2対が並んだペリカン噴水からの眺めは、日比谷公園を象徴する風景として有名です。
一方、日比谷公園最大のシンボルといえるのが「大噴水」です。直径30mの噴水池は上中下段の三段構造になっており、主噴水の吹き上げ高さは約12m。毎日8:00~21:00まで、28分間隔で24パターンの水の動きを見ることができます。この大噴水のある「噴水広場」から「第二花壇」の一帯はかつては運動場となっていて、天皇杯サッカーの第1回大会(大正10年)もここで開催されました。憩いの広場となった現在もさまざまな催しが行われ、四季折々の花々と躍動感ある噴水とともに人々を楽しませてくれています。
さて、四季折々の楽しみといえば、これからは紅葉の季節。日比谷公園は紅葉スポットとしても人気ですが、なかでもおすすめは黄金色のイチョウと真っ赤なイロハモミジが折り重なる「雲形池」の周辺です。この池は、公園等の装飾噴水としては日本で3番目に古い「鶴の噴水」でもよく知られています。また、雲形池近くのレストラン「松本楼」の前には、園内最大のイチョウがあります。これは道路拡幅工事で伐採寸前にあった木を、本多博士が「私の首を賭ける」とまでいって移植させたことから「首掛けイチョウ」と呼ばれる巨木。もとは日比谷見附にあったものだそうです。
他にも、ユリカモメの噴水があるかもめの広場や郷土の森、都の指定有形文化財であるドイツ・バンガロー風の旧日比谷公園事務所など見どころの尽きない日比谷公園。広大な敷地や日比谷野外音楽堂、公会堂などを活用したイベントやフェスティバルなども多数開催されているので、秋の週末、紅葉を愛でながら園内を散策してみてはいかがでしょうか。
2019.10.01