澄み切った冬の星空こそ、観測のチャンス星空散歩をはじめよう!澄み切った冬の星空こそ、観測のチャンス星空散歩をはじめよう!

凜と澄み渡った冬の夜空。
夕暮れの空を見上げながら、童心に帰って一番星を探してみませんか。
今回は、2017年に楽しめる天文現象を中心に星空散歩へご案内いたします。

スターウォッチングは、宵の明星を探すことから始めてみましょう スターウォッチングは、宵の明星を探すことから始めてみましょう

冬空の一番星…宵の明星

宵の明星は、夕暮れの西の空に見える金星の呼び名で、明け方の東の空に見えるときは明けの明星と呼ばれています。
金星は地球のすぐ内側を回る惑星で、太陽の光を反射して光っています。明るさはおよそ1等星の100倍もあるため、夕暮れの西の空に見えるときは一番星になります。これほど輝くのは、太陽に近く地球からの距離が近いうえ、太陽の光をよく反射するからです。
2017年の金星は年明け早々から夕暮れの西の空に輝きます。とくに1月中旬から2月中旬にかけて日没時の高度が40度を超えるため、西の空を見上げれば簡単に見つけられます。3月23日に内合*になり、以降は明けの明星として夜明け前の東の空に輝くようになります。
金星の呼び名は各地に残っていて、鹿児島では子守をするときに見えるので「もんりーぼし(守り星)」、沖縄では「ゆーばなぶし(夕飯星)」などと呼ばれています。

*内合…地球からみて内惑星が太陽と地球の間にあって3者が一直線に並ぶこと。

冬の代表的な星座といえば…? 冬の代表的な星座といえば…?

オリオン大星雲を探してみる

冬の夜空は1等星をもつ6つの星座で飾られます。その中でひときわ目を引くのがベテルギウスとリゲルの2つの1等星をもつオリオン座です。
オリオン座が南の空に見えるのは1月中旬22時、1月下旬21時、2月初旬20時、2月下旬19時で、最大の見どころは、狩人オリオンのベルトにあたる三つ星の下(南)にあるオリオン大星雲です。この星雲は地球から1300光年の距離にあり、肉眼でも淡く見ることができます。
星雲の中心部にはトラペジウムと呼ばれる四重星があり、これらの若い星の群れの周りで星が活発に生まれつつあります。星雲はこれらの星の強い紫外線を受けて発光したものです。
双眼鏡や小型の望遠鏡を向けると、鳥が翼を広げたような姿が視野の中に広がり、その美しさに思わずため息が出るほどです。

夏休みには部分月食を見よう 夏休みには部分月食を見よう

未明の部分月食

8月8日、夏休みの最中に部分月食が起きます。日本全国で見ることができる楽しみな天文ショーです。
月食は太陽、地球、月が一直線に並んだ時に起こります。地球の影にすっぽり隠れるのが皆既月食ですが、今回は月の一部が地球の影に隠れる部分月食です。食の最大時の月の欠け方は、概ね写真のようになります。
部分月食は未明の2時23分に始まり、3時21分に食の最大、4時19分に部分月食が終了します。
部分月食が終わるころには月は西に大きく傾くため、部分月食は夜明けとともに終わることになります。

北アメリカで見られる皆既日食 北アメリカで見られる皆既日食

黒い太陽に広がるコロナ

8月22日、北アメリカ大陸を横断する皆既日食が起こります。皆既日食は太陽、月、地球が一直線に並び、地球から見て月が太陽をすっぽり覆い隠してしまう現象です。
皆既になるとそれまで見られなかったコロナが黒い太陽の周りに広がり、神秘的な光景を楽しむことができます。
今回、皆既日食が見られるのは北アメリカ西海岸のオレゴン州から東海岸のサウスカロライナ州までの帯状の地域。主な都市はオレゴン州セイラム、アイダホ州アイダホフォールズ、ワイオミング州キャスパー、ネブラスカ州リンカーン、ミズーリ州セントルイス、サウスカロライナ州コロンビアなど。
皆既中のコロナが最も長く見られるのはケンタッキー州のプリンストンとホプキンズビルの中間付近で、皆既継続時間は2分40秒になります。

星座こぼれ話 星座こぼれ話

ねこ座を作った天文学者

夜空には88の星座があります。その中で犬、鳥、熊、蛇、ライオンなど多くの動物が星座になっていますが、ねこ座はありません。ちょっとした猫ブームの現在、ねこ座がないのは寂しいですね。
18世紀から19世紀にかけて活躍したフランスの天文学者ラランドは、無類の猫好き。我慢できずに、うみへび座とポンプ座の間にねこ座を作ってしまいました。そのときラランドは、「私は猫が大好き。それなのにねこ座がないなんて。だからその姿を星座にすることにした。長いこと星空と取り組んできたのだから、これ位いいだろう」と、いったとか。
ラランドは他にもいくつか星座を作りましたが、現在ではいずれもボツになってしまいました。冴えない話ですが、ラランドは優れた天文学者でパリ天文台の台長を務め、1771年に出版した『天文学概論』は、当時の代表的な天文書として知られています。
江戸時代末期、『天文学概論』はオランダ語に訳されて日本に伝わり、幕府で天文観測や暦の計算を行っていた天文方の高橋至時(たかはしよしとき)が入手し、その後の日本の天文学に大きな影響を与えました。

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