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- 手づくりグラスで夏を涼やかに
本取材の際には、入念な感染対策を行いました。
外出の際は、くれぐれも感染予防を心がけましょう。
夏のティータイムを彩る、目にも涼やかなグラスを自分の手で作ってみませんか?
今回は、編集部員が初めてのグラスづくりにチャレンジ。
都内にあるガラス工房を訪れました。
編集部員が訪れたのは、京王井の頭線「浜田山」駅から徒歩5分の「ブルー・グラス・アーツ」。室内は約30坪で、4人同時に作業できるガラス工房です。今回チャレンジする「吹きガラス体験」の所要時間は約30分。年齢制限はなく、3歳前後の子どもでもチャレンジしているそうです。繁忙期の夏には1ヵ月で100組もの申し込みがある人気のアクティビティとなっています。マンツーマンで指導してくださるのは、プロのガラス作家でもある代表の金山義信さんです。
体験講座では花瓶かグラスを作ることができ、大きさや形状を自由にアレンジできます。サンプルを見比べた結果、今回は背の低いしずく型のグラスを作ることにしました。
次に模様を考えます。ガラスに重曹を混ぜて泡模様にしたり、色ガラスを入れて自由に着色ができます。色ガラスは米粒ほどの大きさで、この日は白、赤、黄色、オレンジ、黄緑、水色、コバルトブルーの7色がありました。どんな配色にするか悩んだ編集部員は、夏にぴったりの白・水色・コバルトブルーの3色をセレクト。「等間隔に並べると、グラスが膨らみやすくなりますよ」というアドバイスを参考に、指先で一つずつつかみながら、色ガラス同士が触れ合わないようバランス良く金属のテーブルに並べました。この後はお待ちかね、吹きガラスの工程です。
最初に、金山さんが工房で最も大きな熔解炉の説明をしてくれました。熔解炉は熱したガラスが入っている専用窯で、1200℃の高熱で約100kgものガラスを一年中溶かしています。小さな扉が開くと、広がる熱気で室温が一気に高まりました。その中に金山さんが吹き竿を入れて、先端に溶けたガラスを巻きつけていきます。巻き取った後は、ガラスが垂れ落ちないよう、常に竿を回し続けなければなりません。金山さんが作業している間に、息の吹き込み方についてのアドバイスをもらいます。
吹き竿は地面と平行に置き、トランペットを吹くように口をつけるのがポイント。吹き竿の中は常温のため、空気を吸ってもやけどの心配はありません。最も大切なのは、息の強さよりもタイミング。躊躇していると、ガラスはどんどん硬くなってしまうからです。「ガラスの吹き方を見ただけで、その人がせっかちなのか、慎重なのかがわかります」と金山さん。実際、人生経験豊かな大人よりも、子どものほうが思い切りよく吹くそうです。
いよいよ吹き竿が手渡され、編集部員の出番がやってきました。大きく息を吸い込んだら、吐き切る覚悟で思いきり吹き込みます。すると、数10秒間でガラスが膨れ上がり、電球のような形になりました。「上手に吹けましたね」と金山さんからも合格点をいただき、ほっと一安心です。
続けて、色ガラスをつけるためにもう一層ガラスを重ねます。金山さんが再び熔解炉からガラスを巻き取り、熱々になった吹き竿の持ち手を冷却。ここで再び編集部員の出番です。テーブルに並べた色ガラスを取りつけるため、ゆっくり吹き竿を回していきます。すると、色ガラスが一つ残らず、無事グラスに接着しました。その後は、グローリーホールと呼ばれる焼き戻し専用の窯に入れ、色ガラスをなじませます。金山さんによると「ガラスは500℃以下になると歪みができて割れてしまうため、大きな作品を作る際は何度もグローリーホールを行き来するんです」とのこと。グローリーホールから吹き竿を取り出した後は、2度目の吹き入れです。1度目の感覚を思い出しながら息を吹き込むと、カラフルで大きな電球型になりました。3度目は形を整えるため、吹き竿を斜め下に向けて息を吹き込みます。すると、思い描いていた通りのしずく型ができあがりました。これで息を吹き込む作業は一段落。次はグラスの形状を仕上げていきます。
はじめに、グラスの底面を作っていきます。ここで使うのが、木ごてと呼ばれる板状のこてです。熱したばかりのガラスに、木ごてを直角に当てると平らな底ができあがります。これまでで最もガラスに近づくため、額にも汗がにじみます。左手で吹き竿を回しながら、右手で木ごてを垂直に押し当てると、徐々に底ができてきました。
次は、グラスの飲み口を作る工程です。グラスの底にポンテ竿と呼ばれる竿を取り付けたあと、大きなピンセットの形をしたジャックと呼ばれる道具でグラスにくびれを作ります。その部分を冷やすと、吹き竿が切り離されてガラスに小さな穴があきました。この穴にジャックを当てながらポンテ竿を回していくと、穴がどんどん広がって飲み口になります。金山さんのやり方に倣い、ジャックを寝かせて持ちながら慎重に穴にあてていくと、穴が広がり、立派な飲み口が完成しました。
この後は、金山さんによる仕上げです。ガラスの底からポンテ竿を外し、底をバーナーであぶって凹凸を滑らかにします。「ポンテ竿の跡があるグラスは、手作りの証」なんだそう。その後、グラスを徐冷炉でゆっくり冷ましていきます。グラスはそこから約1日で完成しますが、分厚いガラスの作品になると、冷却に1週間もかかるそうです。
後日、完成品が到着しました。初めて手に持ったグラスは、ちょうど手の中に収まるサイズで、凹凸のある質感も手に心地良くフィットします。手に取るたびに愛着が湧くグラスを作ることができ、大満足でした。みなさんも機会があれば、ぜひチャレンジしてみてください。
金山義信さん
ブルー・グラス・アーツ代表。ガラス工芸歴25年。「宙吹き」と呼ばれる高度な技法で数多くの展覧会に参加し、2004年「現代ガラスの美展IN薩摩」では審査員賞を受賞。オーダーメードによる作品も多数制作。「ブルー・グラス・アーツ」では教室を開き、50人ほどの生徒を指導している。今回紹介した吹きガラス体験も、随時開催中。
2020.08.12